政府・与党が高校生の扶養控除の縮小に踏み切る方針だと報じられました。
2024年から児童手当が高校生まで拡大され、さらに2026年度からは私立を含む高校無償化に所得制限がなくなる──その結果「高所得者への優遇だ!」との批判が政府内で高まった、という説明です。
控除額は所得税で現行38万円→25万円、住民税で33万円→12万円に縮小する方向。
つまり、教育費軽減とセットで「静かなる増税」が行われようとしています。
補正予算20兆円以上も組んでおいて、なぜ実質増税?
今回の議論には非常に強い違和感を覚えます。
この秋、政府は補正予算として20兆円以上を計上しました。物価高対策や所得支援を掲げながら、その一方で子育て世帯が実感できる増税を仕込む。
「あなたの教育費を支援します!」と言いながら、「その分は控除でじわっと取り返しますね」と。
これは政策のメッセージが完全に矛盾しています。
高所得者優遇論は一見もっともらしいが…
扶養控除は所得税構造上、所得が高い人ほど節税額が大きい。そのため「富裕層優遇」という批判が出ているとのこと。
高額納税者ならば控除が大きくなるのは当たり前の上に、しかも今回の対象は子育て世帯です。
教育政策を所得再分配の議論にすり替えて、「支援した分は、別の形で回収」では、政策の趣旨がねじ曲がります。
結局、負担が重くのしかかるのは、中間層〜高所得扱いされる子育て世帯。少子化対策の本丸は「子育て世代の可処分所得を増やすこと」だったはずです。
教育費支援が増税で相殺されたら、誰が子どもを産み育てたいと思うのか
私は再三、子どもが増える国になるには、子育て世代の生活に“余裕”をつくるしかないと申し上げてきました。
児童手当の拡充、教育費負担の軽減──
しかし、その裏で控除縮小という実質増税を仕込むならば、効果は目減りし、心理的にも逆効果です。
補正予算で20兆円を「ばらまき」、教育支援を充実させたとアピールしつつ、財源確保は子育て世代の懐から。
これでは政策が国民の信頼を得られるはずがありません。
必要なのは“帳尻合わせ”ではなく、構造改革
本当に見直すべきは“子育て控除”ではなく、歳出全体の構造です。
- 高齢者給付の偏重
- 非効率な補助金・基金
- 既得権益化した社会保障支出の整理
ここにこそメスを入れるべきであって、子育て世代の控除を削るのは順序が逆です。
政府・与党は財務省の言うままに、「増やしたら減らす」を繰り返し、結果として国民負担率は上がる一方。
これでは「少子化の流れを変える」と言いながら、本気で子どもを増やす気があるのか疑われても仕方ありません。
今回の実質増税には強く反対します。与党内から維新が押し返して欲しい。維新がんばれ!
総合経済対策等について会見する高市首相 首相官邸HPより
編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2025年12月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。