私は20年間ゼネコンで務め、現地法人の社長にまでなったのですが、その間、ローカル採用の方を別とすればいわゆる部下と称する人は4人しかいません。20年で4人って異常に少ないのですが、いろいろな事情が重なった偶然もあったと思います。そのためにどの部署でどの仕事に就こうとも全部自分で片づける癖をつけさせられたことがその後、私を強くしたと思います。
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今でも社長ながらプレーイングマネージャーどころか、雑用から床掃除や落ち葉の掃除まで普通にやっています。先日は退去者が出た部屋のじゅうたんクリーニングに初挑戦。。機械の使い方に苦戦したけれどまずまずの出来でした。
家のクローゼットの中の白いワイシャツをみて「そういえば、最近着ていないな」と思います。人と会う時もよほどの方でない限り普段着ですし、ウェストコーストでは白いワイシャツそのものが着こなしをしない限り、あまりイケていないというのもあります。私が白ワイシャツにネクタイでもすれば「馬子にも衣装、ひろにもスーツ」という笑い話にすらなります。
りそなHDが本部の人員8000人のうち2000人を現場に異動させると報じられています。全体の25%ですから大規模です。そしてそれが本部である点がもっと意味があります。準管理職はいらないよ、ということでしょう。報道にはAIの導入とそれに対して人にしかできない仕事をすみわけさせ、顧客の対面対応などに重点を置くというものでした。
余談ですが、先日、ある方のお願いでカナダで日本向けに多額の海外送金のお手伝いをしました。送金するのも手間暇がかかったのですが、問題はそれが着金したか確認しようと某メガバンクの某支店に電話するも通じないのです。いろいろな番号を試したのですが、全部だめでその方には日本に帰国した際に銀行に電話をもう一度掛けてみて、だめなら支店窓口に行ってとお願いしました。
あとで聞いたのは海外からの同銀行への電話は通じない、と。(担当者の直通なら大丈夫なのですが、いわゆる代表電話はダメのようです。)それを知って私はこれは酷いサービスだと思いました。なぜなら国際送金、つまりSWIFTを通じての送金の信用度は100%ではなく、着金しないこともあるのです。私も2度苦い経験しており、一回は違う人の口座に入金していて取り返したこともあるのです。故に輸出入業務がある今、国際送金では日本の銀行とは入金の確認は必ず行っているのです。にもかかわらず、そのメガバンクはこういうサービスを削減してよいのか、このあたりが問題だろうと思います。
さて、日本にいわゆるホワイトカラーが多いのは歴史的な背景があると思います。良い大学、良い就職先の意味するところはホワイトカラーになり、悠々自適で定年退職までの切符をゲットするという教えであります。植木等の歌に代表されるサラリーマンのイメージづくりが成熟し、1970年代あたりには一種の社会現象化したとも言えないでしょうか?親は良い大学、良い就職先と同じことを繰り返し、子は自営業を継がず、サラリーマンを目指したのです。
私がゼネコン本社にいた頃も人だらけで、ハンコを押すだけの次長役ポジションの人は結構多く、私は「これで自分より多く給与をもらっているのか?」と言いたくなったこともしばしばでした。その後も人が多い日本企業という印象はずっと抜けません。日本の生産性が世界に比べて極めて低いのは周知のとおりで、24年度のOECD調査では39か国中29位。その理由の一つとしてホワイトカラーが多すぎるのは自明であります。
その点からも生産性を上げるという意味ではりそなHDの英断は正しく、もしも私が日本で投資をするなら同行の株を買ってみたいと思うぐらいです。
少し前の日経に「余るホワイトカラー、地域のエッセンシャル職に転換を 冨山和彦氏 労働臨界」という記事がありました。これはオカルト本を読むよりゾッとする記事で、「…生成AIの普及でホワイトカラーが消滅するのは歴史的な必然だ」「会社組織には経営判断を下すボスの仕事しか残らなくなる。ボスを補助する部下や中間管理職は不要になり、ホワイトカラーの8~9割はいなくなる」と言い切っています。思うにこの冨山氏もりそなHDと同じ発想展開をしており、氏は余るホワイトカラーはエッセンシャルワーカーに転換すべし、と述べています。そうすれば給与が下がるのではないか、という懸念があると思いますが、氏は『アドバンスト(高度な)・エッセンシャルワーカー』となり、生産性と賃金を高めることが重要」と述べています。ここは私はよくわからず、具体的にどうするのか、聞いてみたいところです。
日本という国の特性の一つに皆が分かっているけど躊躇していることをあるところがやり始めると突然、雪崩を打ったように皆がまねをする傾向があります。例えばコロナ前は「値上げ忍耐」だったのに豹変したような企業の値上げラッシュなどはその好例でしょう。労働界のタブーに踏み込むならば労働構造が歴史的大転換をする可能性があり、有無を言わさず、デスクにしがみついている人を引きはがすことになるでしょう。
日本の雇用契約は見方を転じれば、悪魔だと思います。理由は企業は正当な理由なしにクビは切れないけれどどんなポジションにでも無理やり配置することができるのです。海外は会社がクビをすぐに切ることは最低の仕打ちだとお考えの方も多いと思いますが、やりたくない仕事に無理やり就かせることはクビを切られるより苦痛な場合もあるでしょう。私から見ればどっこいどっこいだと思います。そもそも海外の場合は人権問題があり、更にその人のジョブディスクリプションが雇用契約の前提になっており、いわゆるゼネラリストとしての採用ではない点で根本的な雇用思想が違う点は挙げておきたいと思います。
いずれにせよ、大学生は手に職を、あるいは人に負けない能力を身に着けるべきです。就職したら社内である業務で100人の中で1位を取る、そしてもう一つ能力を身に着け、そちらでも100人中1位を取る努力をすれば2つの能力を掛け合わせて1万人の1位ですから企業内では生き残れるでしょう。我々自営業の世界では更に100人で1位を取る必要があり、これで100万人の中で1位を取ることになり、どうにか生き残れるというぐらいの世界なのであります。本当に厳しい社会を必死に泳いでいる感じです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年12月8日の記事より転載させていただきました。