GPIFやESG投資機関の皆さん、NGFSに基づく投資は撤回すべきでは

wenjin chen/iStock

以下2本のアゴラ記事を読んで驚愕しました。これ、日本のESG投資界隈や産業界にとって大ニュースなのですが、国内のオールドメディアで報じられないため筆者の周囲でもまったく知られていません。

気候科学の嘘が大きすぎてネイチャーは潰せない

気候科学の嘘が大きすぎてネイチャーは潰せない
経済危機になると、巨大企業は「大きすぎて潰せない」とされて、政府による救済の対象になるのはよくある話だ。 だが、科学の世界では話は別かと思いきや、似非気候科学に金が絡むと、明白に誤った論文ですら撤回されない、すなわち「大きすぎ...

ネイチャーは気候科学の嘘を撤回したが金融機関は大きすぎて潰せない

ネイチャーは気候科学の嘘を撤回したが金融機関は大きすぎて潰せない
9月5日付の本コラムで、私はポツダム研究所の研究者がネイチャーに掲載した論文の欠陥騒ぎについて書いた。 気候科学の嘘が大きすぎてネイチャーは潰せない 気温だけで経済成長を説明しようとする無理筋のモデルで、「気候変...

気温だけで経済成長を説明しようとする無理筋のモデルで、「気候変動影響により2100年までに世界のGDPが6割減る」と騒ぎ立てていたのである。ちなみにこの論文は気候分野において2024年に世界で2番目に頻繁にメディアで取り上げられたものだいう。

その論文がついにネイチャーから正式に撤回された。著者自身が「単なる訂正では済まないほど誤りが重大だった」と認めざるを得なくなったからだ。それでも一部の報道や専門家のコメントは「数字はやや大げさだったが、気候変動が経済に深刻な損害を与えるという結論自体は変わらない」と、軽い“修正”で片付けようとするものだ。

しかし、ロジャー・ピールキ Jr.が強調するように、この論文は、単なる学術成果に留まらず、世界銀行やOECD、各国財政当局、そして何より世界の中央銀行からなるグリーン化ネットワーク(NGFS)がネットゼロ(CO2排出ゼロ)を推奨するにあたって科学的な基礎として使用されてきた。その論文が「致命的欠陥」で撤回された以上、本来ならNGFSのネットゼロ目標も、いったん白紙撤回して作り直すのが筋というものだ。

この「NGFSシナリオ」、もちろん日本のほとんどのESG投資で参照されています。

2025 GPIF ポートフォリオにおける気候関連リスクおよび ESG 不祥事の財務的影響分析

GPIFの2024年度国債ポートフォリオの分析は、株式・社債の分析と同様、フェーズ4の気候シナリオ(NGFS Phase 4 Scenarios)に基づいている。昨年の報告書に含まれていた2023年度 GPIFポートフォリオにおけるフェーズ3シナリオによる分析結果と比較すると、フェーズ4では、特に Net Zero 2050シナリオにおいて、損益(PnL)がマイナス方向に推移した。これは、フェーズ4シナリオがより深刻で無秩序な将来像を反映していることに起因する。

MUFG Climate Report 気候変動レポート2025

移行リスクの分析にはNGFSが公表している各シナリオを参照しており、そのうちNet Zero 2050、Delayed Transition、Current Policiesを代表的なシナリオとして採用しています。

日本生命保険相互会社TCFD・TNFDレポート 2024

気候変動に伴う資産運用ポートフォリオのリスクと機会を測定する手法として、NGFSシナリオを元に、MSCI社が提供する「Climate Value-at-Risk (CVaR)」を用いて分析しました。

気温上昇シナリオ別の分析では、「政策リスク」や「技術機会」において、気温上昇を抑制するシナリオほど、資産価値に与える影響が大きい結果となりました。また、「物理的リスク」については、気温が上昇するシナリオほどリスクは増大する傾向にありました。

SOMPOホールディングス サステナビリティレポート2024

脱炭素社会への移行が短期・中期・長期それぞれにおいて、当社グループに及ぼすインパクトを把握するため、下表のNGFSシナリオを前提に、脱炭素社会への転換に向けた法規制の強化や世界経済の変化が企業に及ぼす「政策リスク」と気候変動の緩和や適応に向けた取組みによる「技術機会」についてMSCI社が提供するClimate Value-at-Risk(CVaR)を用いて、当社グループの保有資産に及ぼす影響を分析しています。

日本国内のESG投資機関の皆さん、早急にポートフォリオを見直すべきです。

特にGPIFさん、規模が大きくすべての日本国民に影響を及ぼすのでESG投資なんてやめてください。私の年金を左翼活動やカルテルに使ってほしくありませんし、将来の年金がなくなるなんてまっぴらごめんです。

GPIFさん、日本人の年金を左翼活動につかわないでください

GPIFさん、日本人の年金を左翼活動につかわないでください
GPIFがサステナ投資方針を月末公表へ、ESGの姿勢明確化―関係者 ブルームバーグ 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、サステナビリティー(持続可能性)投資に関する方針を初めて策定し、次期基本ポートフォリオ(資産...

GPIFさん、ESGは昨年米国下院司法委員会が出した報告書において左翼活動家と金融機関による共謀、気候カルテルだと指摘されたことをご存じないのでしょうか。

(中略)

GPIFさん、年金加入者の利益を第一に考えてください。そして日本人の大切な年金を左翼活動やカルテルなんかにつかわないでください。

筆者はESG投資の市場規模が半減していることを繰り返し指摘してきましたが、ついにESG投資による年金基金の莫大な損失が明るみになりました。スウェーデンでは国家年金積立金が脱炭素技術ベンチャーやグリーン産業に投入されてきましたが、投資先が相次いで破綻し、年金基金の深刻な損失が報じられています。つい先月出てきた話です。

Rachel Reeves hit with urgent warning as Sweden’s pension disaster exposes huge ‘danger’ in her plans

Sweden's pension disaster sparks urgent warning over 'danger' in Rachel Reeves's plans
Retirement savings are now at risk after being tied to high-risk green investment schemes

スウェーデンのグリーンエネルギーへの大規模な推進は崩れ始めており、投資している年金貯蓄者にとって深刻な問題を引き起こしている。

(中略)

現在議会の権力均衡を握るポピュリスト系スウェーデン民主党の経済スポークスマン、オスカー・シェーステットは基金の関与に激怒を表明した。「彼らは年金受給者の将来を顧みず、自分たちの党の政策を広めるために年金基金を弄びたかっただけだ」とし、以前の左派連合を批判した。

Sweden’s pension disaster rings alarm bells for Reeves

Access Denied

スウェーデンの国営年金基金の一つであるアンドラ・AP・フォンデン(通称AP2)は、破綻前にノースボルトに約14億6000万スウェーデンクローナ(1億1770万ポンド)を投資していた。

同年金基金はステグラに5億8000万クローナを投資していたことを、広報担当者がテレグラフ紙に確認した。また、同年金基金は、元米国副大統領アル・ゴア氏のジャスト・クライメート・ファンドへの1億9300万クローナの投資を通じて、このスタートアップ企業へのエクスポージャーも抱えている。

他の基金もリスクにさらされている。例えば、スウェーデン企業連合(CSE)とスウェーデン労働組合連合(WTO)が所有する職業年金会社AMFペンションは、ブルームバーグによると19億クローナのリスクにさらされている。

(中略)

スウェーデンのウメオ大学の経済地理学教授、リカルド・エリクソン氏は、「スウェーデン国債庁も相当額の保証をしています。そのため、年金基金へのエクスポージャーに加えて、企業が破綻した場合には、国または納税者がその補償を行うことになります。」と付け加えた。

気候変動金融の根拠となる論文が撤回され、市場規模が半減しており、年金基金で莫大な損失も出始めました。ESG投資はゼロベースで見直すべきです。