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この記事は政府の稼ぐ付加価値について、国際比較をご紹介します。
1. 日本政府の付加価値
今回は政府の稼ぎについて共有していきたいと思います。
GDPは稼いだ付加価値の合計で、企業(非金融法人企業)による付加価値の生産が主に寄与しています。
ただし、家計や金融機関、政府も付加価値を生み出している事はあまり知られていないようです。
家計による付加価値とは、持ち家の不動産業としての稼ぎと、個人事業主としての稼ぎです。
金融機関による付加価値とは、金融取引の手数料などが該当します。
政府(一般政府)による付加価値とは、公務員の仕事などが該当しますね。
経済統計(SNA)において、一般政府は、中央政府、地方政府、社会保障基金の3つの総称となります。
今回は政府の生み出す付加価値に着目してみたいと思います。
図1 付加価値・固定資本減耗 一般政府 日本
OECD Data Explorerより
図1は日本の一般政府の付加価値と固定資本減耗の推移です。
付加価値(総)は、日本の政府が稼いだ付加価値の合計です。
2000年あたりから停滞傾向が続いていますが、2023年で51.5兆円となっています。
GDPの1割弱は政府が稼いでいる事になります。
固定資本減耗は、固定資産の年間の減価分です。企業会計における減価償却費に相当します。
この固定資本減耗を付加価値(総)から差し引いたものが付加価値(純)となります。
政府の固定資本減耗は拡大傾向が続いているので、その分付加価値(純)が目減りしていて、減少傾向が続いています。
付加価値(総)に対する固定資本減耗の割合は拡大傾向です。
2. 1人あたりの推移
日本政府の稼ぐ付加価値は、国際的に見てどの程度の水準なのでしょうか。
今回は、付加価値(総)について、人口1人あたりのドル換算値と、対GDP比で国際比較してみたいと思います。
まずは、人口1人あたりの水準です。
図2 付加価値(総) 1人あたり 一般政府
OECD Data Explorerより
図2は政府の付加価値(総)について、人口1人あたりのドル換算値を計算したものです。
日本(青)は1990年代~2000年代初頭までは、他の主要先進国と同程度でしたが、その後は相対的に低い水準となっています。
2022年には韓国に抜かれていて、2023年ではアメリカの3分の1程度となっています。
日本は公務員(一般政府の雇用者)が少ない事でも知られていますが、その仕事の価値である付加価値も少ない方となっています。
3. 1人あたりの国際比較
続いて、人口1人あたりの為替レート換算値の国際比較をしてみましょう。
図2 付加価値(総) 1人あたり 一般政府 2023年
OECD Data Explorerより
図2は政府の人口1人あたり付加価値(総)について、2023年の国際比較をしたグラフです。
日本は2,949ドルで、OECD34か国中30位と非常に低い水準となっています。
既に他のG7諸国やギリシャやハンガリーを含めた東南欧諸国よりも低い状況です。
4. 対GDP比の推移
次に、もう1つの見方として付加価値(総)の対GDP比を見てみましょう。
GDPのうち、政府の稼いだ付加価値の構成比と言えます。
図4 付加価値(総) 対GDP比 一般政府
OECD Data Explorerより
図3は政府の付加価値(総)について、対GDP比を計算したものです。
韓国以外は横ばい傾向となっていますが、日本は殊更低い水準が続いているようです。
特にフランスとカナダの水準が高い事が特徴的です。
アメリカは近年やや低下傾向ですが、日本よりも高い水準が継続していますね。
日本は8~9%程度で、OECDの平均値と比べても低い水準が継続しています。
5. 対GDP比の国際比較
最後に、対GDP比の国際比較です。
図5 付加価値(総) 対GDP比 一般政府 2023年
OECD Data Explorerより
図5は一般政府の付加価値(総)対GDP比についての、2023年の国際比較です。
日本は8.7%で、OECD34か国中31番目の水準となります。
日本は、政府による付加価値の寄与が先進国の中で非常に小さい事が示されています。
6. 政府の付加価値(総)の特徴
この記事では、政府のGDPへの寄与分となる付加価値(総)の国際比較についてご紹介しました。
人口1人あたりの金額で見ても、GDPに対する構成比で見ても、日本の政府が稼ぐ付加価値は非常に少ない事になります。
「公務員は付加価値を生み出さない」と誤解されがちですが、政府に雇用される公務員は付加価値を生み出していて、先進国では概ねGDPの1割に相当します。
一般政府の仕事は、一般公共サービス、防衛、公共の秩序・安全、経済業務、環境保護、保健などに別れます。
日本は政府に雇用される労働者が少ない事も知られていますが、それだけ相対的に政府の生み出す付加価値も少ない事になります。
先進国の中では生産活動において「政府の役割が小さな国」と言えそうですね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2025年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。