お勉強しかできないコンサルに防衛産業の問題は理解できない。

お勉強しかできないコンサルに防衛産業の問題は理解できない。

世界の軍需企業大手100社の防衛売上は「98兆円」…日本人だけ認識がズレている巨大市場の正体  日本工業大学大学院技術経営研究科教授、戦略コンサルタント田中道昭

世界の軍需企業大手100社の防衛売上は「98兆円」…日本人だけ認識がズレている巨大市場の正体
高市早苗政権は、2026年前半に防衛装備品の輸出を全面解禁する方針だ。日本の防衛産業はどうなるのか。日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授は「防衛産業は軍事だけでなく、エネルギー、海運、通信、宇宙、半導体といった国家機能と生活基盤を支える産業群へと拡張している。この前提を踏まえたうえで、いまの世界構造を正確に読...

いや、そのずれている日本人に著者もはいっているんですが。

本稿は、政治的立場を取らない。
本稿は、日本はどうすべきかを語らない。
本稿は、賛成・反対の議論を目的としない。
本稿は、意図的に「答え」を提示しない。
この“徹底した中立性”こそ、防衛産業というテーマを社会が冷静に扱うための前提になる。

このセンスは評価しますが、防衛産業の実態をご存じない。

“防衛産業=輸出産業”という新常識
韓国やイスラエルの急速な台頭が示すように、防衛産業はもはや国内で完結する特殊産業ではなく、「輸出によって成長する産業」へと明確に転換した。

いや、既にソ連崩壊後そうなっていますが。

だからこそ日本では、防衛産業を「軍事の言葉」で語るのではなく、“産業構造のひとつ”として冷静に捉え直す必要がある。

この着眼点はいいのですよ。ぼくが普段から言っていることです。逆に産業という認識が官の方にも民間にも安全保障業界の人たちにも欠如している。

技術水準・信頼性が極めて高い

ここは完全に誤解ばかりです。

日本の防衛産業は、世界市場から見ても明確な強みを持っている。技術水準は高く、信頼性も極めて高い。もっとも、その力が十分に発揮される場は限定されてきたという構造的制約がある。

① 技術の深さ(潜水艦・レーダー・電子戦・複合材料)
潜水艦、レーダー、電子戦、複合材料といった領域には、世界でも最高水準の技術を有する分野が複数存在する。

少ない国内需要を複数で請け負っており、事業規模が小さいし、開発の頻度も少ない。市場原理にもされていないので、実は技術力は高くない。

② 民生技術との重層的シナジー
重工・電機・ITといった民生領域で培われた技術が、防衛分野に“横流し”される構造が組み込まれている。

これはないとは言えないが、単に民間で使えるものを流用しているだけ。にもかかわらずコストはものすごく高い場合も多い。逆に防衛で入れた設備を民間用に流用していることも多い。

③ 品質と信頼性
高い品質と供給の安定性により、「信頼できる供給者」としての国際的評価が定着している。
品質は低いですよ。住友重機の機銃みてもわかるでしょう。これも市場に出してクレームが入らないから。対して初めは箸にも棒にもだった韓国の製品が伸びたのは市場でのダメ出しと果敢で頻繁な開発頻度があるからです。輸出実績もないのに世界で評価が定着しているわけがないでしょう。

④ 日米同盟を軸にした国際連携のポジション
日米の共同開発・共同運用の枠組みに参加しやすい地位を有しており、国際的な協調の中に組み込まれやすい。

これは我が国だけの話じゃないですよ。英国その他多くの国が持っているポジションです。むしろ英国やイタリア、ドイツなど米国に現地法人をもって米軍に納品している国の方がはるかに優位な立場にあります。それに共同開発はどこの国とでもできますよ。むしろ小さな国内市場しかない北欧とかと協力した方が、そこそこの国内市場をもつ我が国がアドバンテージがある。

それに防衛省や自衛隊には装備開発の能力が低く、国内産業も彼らが文句を言わなければいいという認識です。だから世界の開発事情にも疎いし、見本市での情報収集ですら商社が旗振るノウキョー旅行です。自分たちで情報収集ができない。

結論をいえば、著者は世界の軍需産業のマーケットを理解していない、それはたぶん取材をしていない。せいぜい国内メーカーのヒアリング程度で、あとは論文を「お勉強」して考えをまとめた程度です。ぼくに言わせれば畳の水練です。

弱小メーカーの乱立、世界類を見ないまとめて契約しいない怪しげな調達システム、当局、防衛企業の当事者能力のなさ。このような事実を全く理解していません。誤った前提からは誤った結論しか導きだせません。

防衛省 Wikipediaより

■本日の市ヶ谷の噂■
2023年の陸上自衛隊の日野基本射撃場で自衛官候補生が自衛官3人に向けて自動小銃を発砲し、2人が死亡した事件があったが、実は生き残った一人は個人的に止血帯を携行しており、被弾後すぐにその止血帯を使って、止血したことによって一命をとりとめた。これが自衛隊で止血帯で生命を救ったケース、との噂。

大人の事情で商業媒体に掲載されなかった記事を、Noteで有料公開します。

馬鹿が戦艦でやってくる!

Kindleで有料記事の公開を始めました。

いずも級、22DDHは駆逐艦に非ず。 (清谷防衛経済研究所) – 清谷信一
暴力装置 (清谷防衛経済研究所) – 清谷信一

東洋経済オンラインに寄稿しました。

拡大する防衛費を防衛省・自衛隊が適切に使えていない可能性。陸上自衛隊による、銃の調達や取り扱いから垣間見える「知識不足」の疑い
https://toyokeizai.net/articles/-/911653
ソニーグループが「隠れた防衛関連企業」といわれる理由、実は同社製のある汎用品がミサイルやドローンなどに欠かせないパーツになっていた
https://toyokeizai.net/articles/-/907817

過去の著作の電子版が発売になりました。
『ル・オタク フランスおたく物語』
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『弱者のための喧嘩術』
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防衛破綻 – 清谷 信一


専守防衛 – 清谷 信一


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年12月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。