政府・自民党が、2027年度からメガソーラー(大規模太陽光発電)への新規支援を廃止する方針を固めました。
これは、「再エネ推進=太陽光に手厚い補助金」というこれまでの一方向の方針から、大きく舵を切るものです。私は妥当かつ評価できる判断だと考えます。
釧路湿原に広がるメガソーラー
メガソーラーは普及したが、その影で問題が噴出してきた
東日本大震災後、民主党政権が導入したFIT制度により、太陽光発電は全国で一気に拡大しました。技術革新によってコストも急低下し、「再エネの柱」として一定の役割を果たしたことは間違いありません。
しかしその裏では、
- 山林の大規模伐採
- 生態系破壊・土砂災害リスクの増大
- 景観の毀損
- 地元住民とのトラブル多発
といった、深刻な副作用も積み上がってきました。
釧路湿原周辺、千葉県鴨川市などで起きているトラブルは氷山の一角です。
本来、環境負荷を減らすための再エネが、環境破壊のきっかけになってしまうという、本末転倒が各地で発生しているのです。
環境アセスメント対象の拡大方針も示されましたが、「そもそもの新規支援を止める」ことは、これらの問題への現実的な回答だと言えるでしょう。
太陽光パネルは中国が圧倒的シェア
補助金を出しても海外企業が潤う構造
太陽光パネルの世界市場で、中国企業のシェアは8~9割とも言われています。
日本がいくら買い取り制度で補助金を上乗せしても、その多くは海外製パネルの調達費となり、国内産業への波及効果は限定的です。
つまり、「国民が支払う再エネ賦課金 → 海外大手企業が潤う」という構造が長年続いてきました。
これは経済合理性の観点からも持続不可能であり、今回の見直しはその意味でも健全です。
技術進歩の速い分野では、補助金ブーストは必ずしも最適解ではない
経済学者の中には以前から、
「技術進歩が激しい分野では、税金で無理にブーストするより、ある程度コストが下がってから参入した方が効率が良い」
と指摘する人もいました。
太陽光パネルはまさにその典型例で、10年前と比べれば発電コストは劇的に低下しています。
“必要な支援をやって普及を後押しした段階”はすでに終わっており、ここからは市場メカニズムに委ねるフェーズに移行するのが自然です。
再エネを否定するわけではない。だからこそ「バランス」が必要だ
誤解してほしくないのは、今回の支援廃止が“再生可能エネルギーを止める”という話ではないことです。
屋根置き型の太陽光や、風力・地熱など環境負荷の低い分野への支援は今後も続きますし、再エネ自体の潜在力は依然として大きい。
日本の電源構成において再エネが果たす役割は、今後も間違いなく拡大していくべきです。
しかし現実には、再エネだけで安定供給を成立させるのは困難。
原発再稼働・新増設も含め、エネルギーミックスを多様化し、国家としての供給力と経済合理性を取り戻すことが必要です。
再エネ「か」原発、ではなく
再エネ「も」原発「も」――。
これがようやく現実味を帯びて語られるようになったと実感します。
■ 終わりに
メガソーラー支援の廃止は、一見すると「後退」のように見えるかもしれません。しかし実際には、再エネ政策を次のステージに進めるための“整理整頓”です。
無理な拡大による歪みを正し、
技術進歩や市場原理を適切に活かし、
日本全体として持続可能なエネルギーミックスへ移行する。
そのための一歩として、今回の判断を評価したいと思います。
編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2025年12月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。