生成AIの普及により就職活動の前提が変わる中、ロート製薬が新卒採用の選考方法を大きく転換する。書類選考をやめ、最初から人と向き合う方式を採用する判断は、今後の採用の在り方を考える上で象徴的な動きである。
- ロート製薬は2027年新卒採用から、エントリーシートによる書類選考を廃止し、人事担当者との15分間の対話を初期選考に導入する。原則対面で実施し、その後に複数回の面接やグループワークを経て内定を出す。
- 新方式「Entry Meet採用」では、全国8カ所の会場で対話を行う。応募者は基本情報アンケート、就活写真ではない顔写真、人生グラフ、指定職種では研究概要を事前に提出する。
- 背景には、生成AIの普及で志望動機や自己PRが似通い、書類から学生の個性や価値観を見極めにくくなっている現状がある。文章は努力量や思考力を測る指標になりにくくなった。
- 企業側は大量の書類を読む負担が大きく、学生側も同じ内容の文章を多数提出する消耗戦になっていた。短時間でも直接話す方が本質的な情報を得られると判断した。
- 応募は先着順とし、人数が超過した場合は枠の追加も検討する。海外大学在籍者など、対面参加が難しい場合にはオンライン対応も視野に入れる。
- 対話中心の選考は面接官の質や評価基準がますます重要となってくるという指摘もされる。
ロート製薬の取り組みは、AIの時代に従来の採用手法が限界に来ていることを示す問題提起である。効率化一辺倒ではなく、あえて人が向き合う設計に立ち返った点は評価できる。この方式が他社に広がるのか、今後の運用と結果が注目される。
ロート製薬2025年卒業予定新卒採用ページより