S&P 500はカナリアを見ながら右往左往

S&P 500は大きく下落してから反発した。先週の記事では「ナスダックからのセクターローテーション」に注目しながら「S&P 500に限定すれば6750 -6900の狭いレンジ」と予想していたが、実働域は6720 -6860と30ポイントほど低いレンジとなった。

週前半は連日寄付きから売られた。火曜12/16はそれが一段落したと思われたものの、AMZNによるOpenAI追加出資検討のヘッドラインに対しても一時期ほどはポンツィ的な反応にならず、地合いの転換を確認することになった。水曜12/17はオラクルとブルーアウルのデータセンターディールブレイクのヘッドラインで過剰調達懸念が何度目かの再燃となった

S&P 500は大陰線ながらも下げ幅は2%に届かず決定的な下げ方とならなかったが、半導体を中心にナスダックは大幅に下落した。もっとも水曜12/17引け後のマイクロン決算が堅調だったことで翌木曜12/18は反発となり、木曜12/18引け後に渦中のオラクルがTiktok米国事業を買わせてもらえたとのヘッドラインが一層のショートカバーのきっかけとなった。

このようにORCLが完全にAI投資のバロメーター、要するに炭鉱のカナリアになってしまった

年初来でS&P 500は+17%程度、ナスダックは+20%のリターンとなっている。年末は休日が続くので次の更新は1/3か1/4とする。一年間お疲れ様でした。

GS CTAは1月半ばまで緩やかな売りが続く。

ディーラーガンマは6900台のコールウォールが急速に成長している。元々スポットを挟み込むように左右二つの山が出来ていたのが、右の山が完全に左の山より高くなってしまっている。これはレジスタンスがサポートより強いことを意味し、年末までとても右のコールウォールを超えられなそうということで余ったコールの投げが激しかったようである。

その結果、VIXが上がらないまま指数だけが淡々と売り込まれた。逆に下値は左の高原の左端に極めて近い6720までトライした。もっとも週末にかけてスポットが反発したことで、ネガティブガンマ転落は間一髪で回避された。

もしネガティブガンマ域でOp Exを迎えたならOp Exのタイミングで反発しやすいのが教科書的であるが、今回はネガティブガンマ転落の手前で折り返しているので本来当てはまらないはずであった。しかしとにかく重すぎたコールがOp Exで一部消滅したようにも見え、金曜12/19の朝の寄り付きから一気に上値が軽くなった。

BofAは12/8の週では個人投資家とHFが投げ、機関投資家がやや胃もたれ気味ながらも買い足している。

BofAのFMサーベイで現金比率が前代未聞の3.3%に低下したのは全世界の株式投資家にとって非常に大きな悲報である。所詮買えば下がる、売れば上がるようなサラリーマンが集まっていると言っているのではない。そうでなかったとしても、相場が下落した際に買い増す余力がないということである。

NAAIMも上げに敏感に反応しており100を超えている。所詮買えば下がる、売れば上がるようなサラリーマンが集まっていると言っているのではない、決して言っているわけではないが、これも「上がりづらそう」という印象を与えてしまう。

年末はこれと言ったイベントがないが、1月の決算期に向けて徐々に自社株買いブラックアウトが始まる。裁量勢はお腹いっぱい、自社株買いはブラックアウト、機械勢もある程度削減済とはいえポジションが軽くない、となると需給はかなり弱めで、過去最高値回復は下を売った参加者のショートカバーとAIバブル継続を信じる個人投資家の力に頼ることになる。

テクニカル。ガンマプロファイルではS&P 500、チャートではナスダックの方が分かりやすい。S&P 500の6900台前半のコールウォールは、Op Ex通過で幾分か弱まった可能性があっても引続きレジスタンスであり続ける。下値は6700割れが見られた場合ネガティブガンマに転落するので加速しそうであるが、Op Ex通過でそれは少し遠ざかっただろう。

ナスダックは右肩をブレイクされたヘッドアンドショルダーのネックラインまで調整した形となる。ネックラインを更に下に割るとかなり面倒であるが、ネックラインを意識した上でそこで反発したとすれば「ヘッドアンドショルダーの右肩ブレイク」パターンは生きていると解釈される。25SMA~50SMAが集まる6700台後半は下落でも反発でも平地にしかならなかったが、今後は一応のサポートなり得るか。年末年始は引続き6750 -6900レンジに留まりやすいのではないか。


編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年12月22日の記事を転載させていただきました。