中国嫌いな人がパンダについて言っている知識は、幼稚で算盤勘定も無茶苦茶である。別にパンダが居なくても誰か死ぬとかいうわけではないから高市首相に詫びを入れて懇願しろとはいわないが、文化的にもそうだが、経済にとっても不在は大損失である。
上野動物園HPより
それも含めて、パンダの雑学をFacebookで書いたら、アンチ大熊猫派が興奮して炎上してしまった。中国嫌いの人たちにとってパンダは憎悪の対象ナンバーワンのようだ。
さて、パンダはチベットの動物だと間違っている人が多いのだが、それはレッサーパンダである。ジャイアントパンダは四川省成都市の西側から陝西省、甘粛省の山の中に住んでいる。たしかに、チベット系の人も住んではいるが、秦漢帝国のころから中国の領土で、吐蕃の全盛期(奈良時代)の一時期に数十年だけ吐蕃が進出していたことがあるだけである。それに、山奥で人を避けるように住んでいたのでほとんど接触がなく、チベット系の民芸品などに登場するわけでないから、チベット民族から漢民族が盗んだとかいうのは言いがかりだ。
ところが1869年になってフランス人の宣教使が毛皮を発見して話題となり、1936年には米国の動物園に登場した。しかし、本格ブームは戦後のことで、北京動物園やロンドン動物園の名物として注目され、とくに、1972年のニクソン、田中角栄の訪中に際してお土産としてプレゼントされ大ブームとなった。最初は贈与されていたが、近年では繁殖研究と国際共同プロジェクトの一環として貸与して飼育されている。
これには、中国が国家的なシンボルとして打ち出したこともある。一時は皇帝のシンボルである龍の代わりにパンダが使われたりもした。いわば、日本といえば、桜とか富士山といったかわりにパンダがアイコン化したのである。可愛いく愛らしいし、竹を食料にしているくらいで大人しいので、平和とか希少生物保護のシンボルにもふさわしい。
しばしば、莫大な費用がかかるとかいう人がいるが、それほどでもない。パンダの貸与料は年間約1億円前後(100万ドル)で、飼育費・施設維持費などで 年間数千万円〜1億円規模とされ、年間コストは一頭あたりにすると約1.5〜2.5億円程度である。
一方、経済効果ということでは、この手のイベントなどの経済効果を推計していつも話題になる関西大学・宮本名誉教授の試算では、上野動物園(シャオシャオ・レイレイ公開後1年)では約308億円だったというし、 白浜アドベンチャーワールドは、31年間で1,256億円だが、近年はその平均値より高かったとみられるから、年間100億円程度はあったのではないかと思う。
なにしろ、上野でも地域を代表するシンボルがパンダになっていたし、白浜では県全体のシンボルとして高野山と並ぶくらいだった。
同じ宮本先生は、阪神タイガースの経済効果で良くニュースに登場されるのだが、阪神タイガースの経済効果を優勝したときは800~1000億円、平年度だと300~500億円くらいとされている(計算が正しいかは知らないが、同じ人が計算しているのだから比較には都合がいい)。
しかも、阪神タイガースの経費は年間で200~300億円くらいというから、一頭2億円くらいのパンダはまことに偉大なのだ。
つまり中国にとっては、外交の切り札として使っているし、お金もそれなりにとっているが、貸してもらうほうにとっては、これ以上もない贈り物になっているのである。
先日は、フランスのマクロン大統領は、いまいるパンダの返還が迫っているので、代わりをもらうべく、わざわざ成都まで習近平主席と一緒に訪れて貸してもらうのに成功した。
おそらく春には、トランプ大統領が訪中するのでもらって帰るのだろう。パンダなんか要らない、パンダがごときを交渉材料にという人もいるが、大人げない。たしかに田中角栄訪中のときは、もらえなかったら許さないといわんばかりの圧力が世論からかかって異常だったが、それ以降はそれほどでもない。
自然体で、しかし、相当に重要な案件の一つとして正当に評価し、貸してもらえるようにその値打ちに見合う努力すればいいことだ。1949年にインドのネルー首相から象をもらったのは戦後の日本人にとってとても大きな慶びだった。まさに平和な時代が来たことのシンボルだったからだ。パンダの再来日を新型コロナ上陸のように嫌う大人たちの精神の貧しさはうんざりだ。
まあ私としては、東京一極集中を回避するために、是非、東京以外に迎えるべきだと思う。白浜がいちばん条件はいいが、台湾が好きな町長が、成都の区との姉妹提携を拒否したり、アンチ・パンダ言動を繰り返しているので止めた方がいいだろうと思う。
高市さん周辺はアンチ中国派ばかりだが、安倍晋三元首相は第一次内閣では最初の訪中先に中国を選んだし、再登板の最後には習近平主席に国賓としての招待をして宿題になっている。安倍路線継承というならこの約束こそ果たすべきだ。国賓ならお迎えするのは陛下だから好都合だ。そのときのお土産にもってきてくれたらそれでもいい。
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