【インタビュー】共同親権への法改正で連れ去られた子に会えるようになる?

離婚時の子どもの連れ去りや親子の引き離しの温床ともされていた単独親権制度だが、来年4月にはいよいよ共同親権への法改正が実現する。

離婚後の親子のあり方はどのように変わるのか? 法改正で引き離されていた親子は会えるようになるのか? その法改正の立役者でもある共同養育支援議員連盟(以下、議連)会長の自民党・柴山昌彦衆議院議員に聞いた。

自民党・柴山昌彦衆議院議員

——離婚後、別居親と子どもとの親子交流は、現在月1回3~4時間程度が当たり前になってしまっていますが、親子交流の形は法改正によって変わっていくでしょうか?

今回の法改正では、子を養育する親御さんの双方の責務が明確化されました。父母が離婚時に子供の視点に立って、子の養育をともに考え、双方が適切な形で関わることが期待されます。そうなると、それぞれの親がともに子どもと交流することの促進には確実につながってくると考えています。

——実際にそれを判断する裁判所の実務の中では、そういった研修などはされていますか?

議連でも、改正法に向けた研修が行われているかどうかを確認していますし、法務省は関係省庁との連携によって、自治体の相談窓口に法改正の趣旨を周知していくなど行っています。

実際の運用にあたる裁判所も、研修活動を全国規模で行っています。全国の家裁から裁判官を集めた研修を行っており、裁判官はリモートも含めて63名が参加をし、書記官や調査官は数百名の方が研修に参加をしています。そこからまた、それぞれの現場に周知していっているという取り組みをしていると聞いています。

——親子交流もできない、子どもがどこにいるかもわからない、断絶状態の親子もいますが、法改正によって会えるようになりますか?

すでに生じている単独親権が、親権者の変更という手続で共同親権になるという想定はされています。既存の法律関係についても、裁判所の判断によって、改正法によって生じる恩恵がもたらされると言うのも十分に考えられます。父母間の人格尊重努力義務も明確化されました。単独親権で、親権争いを優位に進めるために連れ去られたなどの話がありますが、すでに発生している連れ去り等の問題にも資する効果が間接的にもあるだろうと思っています。

単独親権であっても、親権が子供のために行使をされなければいけないということになるので、例えば一方親が何の理由もなく他方親に知らせず転居させて転居先を知らせないということが子の利益に反するという判断が十分にあり得ます。

また、人格尊重義務に反するという判断がされた場合は、親権者の指定変更によって、共同親権を認定されるということを越えて単独親権者の変更につながるというケースも出てくるのではないかと思います。

——別居親の悪口を子供に吹き込んで会いたくないと言わせるなどの「片親疎外」について、片親疎外を行う同居親の側が、裁判所が親権者の決定において不利になると判断することも増えてくるでしょうか?

そこは重要なテーマだと思っています。これからは、離婚後の養育には子どもの意向を反映させることもあり得ます。これまでは、「子どもの意向を反映させよう」という主張があっても、連れ去った同居親が子どもの気持ちを誘導する、洗脳するということがあるのではないかということで、そこは明文化を避けていたところでもあります。

ただ、制度では子どもの最善の利益が最優先と言っているわけで、子どもの意向を無視するわけにはいかないと思います。ですので、家庭裁判所や支援団体の方々もこれからどうやって弊害がないような形で子どもの意思を取り入れていくか、法学者や心理学者を含めて研究をされています。そういった研究も、例えば子ども家庭庁なども巻き込んだ形で調査していくということになるのではないでしょうか。

連れ去り親が、一方親の悪口を吹き込んでいるような事例も、なるべく早く子どもにとって望ましい環境を作るにどうすればいいかを、外部の専門家が含む形で、「あまり相手親の悪口をいうのは子どもにとってはマイナスだよ」とか、そういうアドバイスができるような仕組みも作っていけるようにしないといけないのではないかなと思います。

どのような形で離婚後養育計画書や合意書の作成を促進していくかがテーマになっていますが、すでに離婚した方々に対しても、子どもの意思をどうやって望ましい形で反映、実現していくか、ということを関係者みんなが知恵を持ち寄っていく必要があると思います。

——養育計画作成の促進は法改正を実効的に運用していく上で重要になっていくと思いますが、それを促進するために取り組んでいることはありますか?

日本では協議離婚が9割を占めているが、他国では離婚は裁判しなくてはできないところもあります。第三者が関与することによって、ふさわしい養育計画ができるという担保が日本ではなかなか取られづらい。緑の紙を一枚提出したら離婚ができてしまいます。

法改正では、親子交流や養育費について取り決めがなされているか、親権者は2人で行使できるといったチェック欄が新たにできますが、それが離婚の要件にはなっていません。

今回、いわゆる民間法制審の中には、養育計画がなければ離婚を認めないという風にすべきではないかと案もありました。ですが、それではあまりにも日本の現状とかけ離れすぎているし、そこまでやるのはあまりにもラジカルだというので今回は見送りました。

現在法務省にて諸外国も含めた共同養育計画の研究が行われており、そのための予算も計上されました。法務省としては、公的な機関などが、養育計画書のひな形を作ったり、作成の手引きを提供したり、これから離婚する際にそれをセットで進めていくというのを考えているようです。

まだ共同養育計画のところにチェックはしていないけれど、離婚届けはいったん受理する。その上で、共同養育計画作成のためのマニュアルをしっかり手渡しして、こういうことをやってよねと促す。いずれにせよ、当事者になかなかできないこともあるわけですから、離婚届けを出す公的機関の窓口でパンフレットを配るだけではなく、関係機関で連携してNPOや弁護士たちの支援等も促進していきたいと考えています。

——EUやアメリカ、オーストラリアなど海外の当事者が母国で議会に持ち込んだりして、外交問題にもなっているが、それについてはどのような状況でしょうか?

EUでは「子どもの拉致」ということで非難決議が出たり、オーストラリアやフランスの大使館が、改正法のないように非常に関心を持っていたりします。12月10日の議連には、オーストラリアやフランスの大使館からも出席をしていただいて、各省庁の説明を聞いていただき、質疑応答もしていただきました。

「判決が出た場合の具体的な執行にどういった工夫があるのか」という具体的な運用のことについても質問として聞かれていた。国際的な理解を深めていくことも非常に重要ですし、英語やフランス語のパンフレットも作成しています。法務省で作っているパンフレットを大使館の皆さまに周知していくということも伺っています。そういうことを通じて、それぞれの母国の家族法の専門家に情報共有をしていただくことを期待しています。

法改正は、まずは第一歩かなと思っています。これからまだまだ議連として、不足があればそれに対する対応も行っていきたいと考えています。

——ありがとうございました。