(前回:佐倉市観光事業になぜマーケティングは組み込まれなかったのか①)
ふるさと広場拡張整備事業の前提
佐倉市が進めるふるさと広場拡張整備事業は、総額30億円規模の観光地開発として位置づけられている。現在の佐倉ふるさと広場は、本格的なオランダ風車をシンボルとする公園であり、春のチューリップ、夏のひまわり、秋のコスモスなど、四季折々の花を楽しめる場として知られてきた。周辺には県内最大の湖沼である印旛沼や田園風景が広がり、自然景観を活かした風致公園としての性格を持っている。
工事前のふるさと広場の様子
筆者提供
一方で、季節やイベントに応じた一定の集客を果たしてきた反面、施設規模や周辺環境、交通アクセスをめぐる課題が指摘されてきたことも事実である。拡張整備事業は、こうした状況を踏まえ、観光拠点としての機能強化と周辺環境の整備を図るものとして構想されたものである。
市はこの構想を具体化するため、「佐倉ふるさと広場拡張基本計画」を策定した。同計画では、フラワーツーリズム、グリーンツーリズム、サイクルツーリズム、市民の憩い・活躍の場の四つを整備コンセプトとして掲げている。また、「花」「農業」「環境」をテーマに、「見る」「体験する」「食べる」機能を備えた施設整備を進めることとされている。
さらに、市の財政負担を軽減しつつ集客力を高めていくため、民間事業者の活力を活用した施設整備を進める方針も示されている。観光振興や来訪者の増加、地域活性化といった目的は、多くの自治体観光事業に共通するものであり、それ自体が特異なものではない。
計画と議会との接点としての一般質問
こうした計画については、市議会の一般質問において、繰り返し取り上げられてきた。一般質問は、新たな政策提案の場であると同時に、既存事業の前提や考え方を確認する機能を持つ。とりわけ、計画文書では抽象的に示されがちな目的や効果、事業の進め方が、具体的な言葉として引き出される点に特徴がある。
ふるさと広場拡張整備事業をめぐる一般質問でも、切り口は議員ごとに異なりながら、事業の前提や位置づけを確認しようとする問いが重ねられてきた。来訪者像の想定、事業の効果、周辺への影響、計画策定のあり方など、問われた内容は多岐にわたる。
これに対する答弁では、事業の方向性や意義が示される一方で、具体的な数値や検証方法、運用の詳細については、今後の検討事項として整理される場面も少なくなかった。こうしたやり取り自体は、地方議会では決して珍しいものではないが、後から振り返ることで、計画がどの水準で説明されてきたのかを確認する手がかりとなる。
次に確認すべき視点
本稿では、評価や結論を急がず、ふるさと広場拡張整備事業の前提と計画内容、そしてそれが一般質問という形でどのように議会と接点を持ってきたのかを整理してきた。
次回は、これらの一般質問を、単なる個別のやり取りとしてではなく、どのような水準の問いが投げかけられていたのかという観点から整理する。計画策定のプロセス、事業効果、そして事業が成立するための具体的条件という三つの問いが、どのように現れていたのかを確認することで、ふるさと広場拡張整備事業をめぐる議論の構造を明らかにしていきたい。