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いきなり数字を出す。6組に1組。日本のカップルで、何らかの不妊治療を経験している割合だ(国立社会保障・人口問題研究所)。
多いと思うか、少ないと思うか。私は多いと思った。というか、もっと多い気もする。言わないだけで。
「癒やしのカウンセラーが見た 赤ちゃんを迎えた人がしている10のこと」(金丸綾花 著)健康ライフ選書
「健康な自然妊娠、出産は、もはや当たり前ではない時代になっている」
ある専門家の言葉だ。大げさじゃない。体外受精の実施数は増え続けているが、国際生殖補助医療監視委員会のデータによれば、日本の妊娠実績は国際的に見て下位レベル。技術はあるのに結果が出ない。なぜか。
晩婚化・晩産化。よく言われる。確かにそうだろう。でも、それだけじゃない。
専門家はこう指摘する。「そもそも妊娠するための母体が弱くなっている」。医療技術の進化で新生児の生存率は上がった。でも、妊娠・出産を支える母体の力が落ちている。
ここで話を変える(いや、変えない)。
自然妊娠が叶わなければ、人工授精や体外受精に進む。当然の流れだ。で、ここで立ちはだかるのが金だ。
不妊治療は高い。高すぎる。東京都には「特定不妊治療に係る医療費助成」制度がある。体外受精・顕微授精の費用の一部を補助してくれる。ありがたい話だ。
でも、共働き夫婦で世帯収入が一定以上あると、対象外になる。
ちょっと待ってくれ。
共働きで頑張って稼いでいるから、助成が受けられない? 治療費は数十万から、場合によっては数百万。それを全額自己負担しろと?
これ、おかしくないか。おかしいだろう。
(話を戻す)
こうした状況のなか、体質改善によるアプローチが注目されている。とくに「オメガ3オイル」。妊娠率・出産率に好影響を及ぼすという研究結果がある。食生活の見直し、サプリメントの活用。医療機関での治療と並行して、自分でできることもある。
不妊治療の現実を正しく理解する。費用面、制度面の情報を把握する。心身両面から準備を進める。
それが「妊活成功への近道」だと言いたいところだが、正直、この国の制度設計には腹が立つ。6組に1組が経験する問題を、いつまで「個人の努力」で片付けるつもりなのか。
まあ、言っても変わらないのだろうが。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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