日本人の時代遅れの欧州中心主義はいつ改善されるのか

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日本は19世紀欧州列強の帝国主義的拡張の時代に近代化を始めて、運よく植民地化を逃れた。その歴史は、欧州人が優秀であると同時に、日本が同じように優秀であるという優越感を作り出した。

それから1世紀以上もたつのだが、高齢化が進んでいるせいだろうか、この優越感に浸るぬるま湯から脱け出したくないという願望が、日本人には強すぎるような気がする。

世界のほとんどの諸国は、植民地化を経験して、欧州人の振る舞いよく知るようになり、欧州人の独善性を警戒しつつ、現在の欧州の没落を冷静に受け止めている。

拙著で論じたが、世界の「多極化」が進む中、アメリカの国力の相対的低下ばかりが取り上げられる傾向があるが、アメリカは、欧州諸国や日本と比べれば、相当に頑張っている。

1970年頃、アメリカのGDPの世界経済におけるシェアは、29%だった。2025年現在でも、26%程度ある。これに対して、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアという欧州の主要経済大国のGDPの総計は、1970年頃に16.3%あったが、2024年では12.5%程度と約4分の1の縮減になっている。EU全体という単位でみると、約13%程度のシェアであるとされる。欧州諸国が束になっても、アメリカには勝てない。いわゆる「欧米諸国」の中で、アメリカがほぼ孤軍奮闘している状態である。

もちろん輪をかけて存在感を低下させているのは、日本だ。1970年当時5.7%だった日本のGDPの世界経済におけるシェアは、1995年には17.5%にまで拡大した。その後低落し、現在では3.5%程度であるとされる。

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この国力低下の代表国である日本が、次に国力を低下させている欧州諸国に対して、100年前に味わった優越感を共に味わおうと働きかけている姿は、他の地域の諸国から見ると、あまり颯爽としたものではない。しかし日本人は、欧州中心主義の精神風土を拭い去ることができず、100年前の世界を現代に投影しようとばかりしているように感じる。

ロシア・ウクライナ戦争をめぐり、「国際社会」が対ロシア制裁を実施して、ウクライナへの強力な支援を行った、と言われる。しかしその「国際社会」を構成していたのは、単にアメリカとアメリカの欧州とアジアの同盟諸国だけであった。

第二期トランプ政権が誕生して、アメリカがこの「国際社会」から離脱し始めると、日本の「専門家」層に動揺が広がった。「日本と欧州が同盟を組んで、ウクライナを助けて、ロシアを撃退しよう」といった威勢のいい掛け声が、日本の「専門家」から聞こえてきたときもあった。しかし厳しい現実に直面し、その声も今はかき消されてしまっているように感じる。日本と欧州だけでは、力が足りないのである。

トランプ恨み節が、日々、日本の「専門家」たちの間から聞こえてくる。しかしトランプ政権のアメリカにしてみれば、国力を疲弊させている欧州や日本のために、アメリカを犠牲にして奉仕活動をするつもりはない。世界の超大国の一つとして生き残っていくためには、同盟諸国との協力関係はメリットになるのであれば維持するだろうが、そうでなければ容赦なく厳しい対応を迫っていく。

過去4年弱の間で、日本の「専門家」層の間では、ロシア・ウクライナ戦争だけが世界の大問題であり、あとは中国の台湾侵攻の可能性が懸念されるだけだ、という発想があまりに強く行き渡ってしまった。外交安全保障の政策資源の全てを対ロシア・対中国に振り向けるとしても、それは当然のことである、という固定観念がいっそう強固になっている。

その結果、欧州こそが「国際社会」であり、欧州と連携することが日本外交の中心であるべきだ、という精神風土が、かえって以前よりも強まってしまっているような気がする。

果たしてそのような時代錯誤の精神風土に根差した外交姿勢で、これからの未来を、いやあるいは2026年の新年だけでも、安泰でやっていけるのだろうか。私個人は、非常に心配している。

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