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最近、YouTubeを開くと「フリーランスで月収100万円」みたいな動画がやたら流れてくる。キラキラした若者が、カフェでMacBookを開いて「自由な働き方」を語る。
「フリーランスビジネス大全」(大坪拓摩 著)KADOKAWA
正直、見てられない。
いや、嘘は言ってないんだろう。月収100万円の人も、いる。でも、それはごく一部だ。大半は、そうじゃない。そして、その「そうじゃない」現実を、誰も教えない。
フリーランスになって最初に気づくのは、「誰も助けてくれない」ということだ。
会社員時代は気づかなかった。経理がいて、法務がいて、総務がいて。自分の知らないところで、誰かが会社を回してくれていた。請求書のフォーマットなんて考えたこともなかったし、契約書のリーガルチェックなんて、そんな仕事があることすら知らなかった。
フリーランスになったら、全部自分でやる。営業、制作、事務、経理、雑務。できないことも、やらなきゃいけない。で、できなくて失敗する。
「知りませんでした」は通用しない。
これ、本当に怖い。クライアントにとって、こっちが駆け出しかどうかなんて関係ない。納品できなければ、「ごめんなさい」じゃ済まない。報酬がもらえないのは当然として、下手したら訴訟だ。違約金だ。そして、業界に悪評が広まる。フリーランスの世界は狭い。一度やらかしたら、どこからも仕事が来なくなる。
健康管理も自己責任。
会社員なら、体調崩しても有給がある。大きな病気やケガなら傷病手当が出る。フリーランスには、何もない。休んだら、その日の収入はゼロ。シンプルな話だ。風邪を引いても、熱があっても、納期は待ってくれない。
母親がよく言っていた。「体が資本」と。フリーランスになって、その意味がやっと分かった。
あと、これは声を大にして言いたいんだけど。
「自由」を履き違えてる人が多すぎる。
自由ってのは、「好き勝手にできる」って意味じゃない。「自分らしく生きる」とか、そういうふわっとした話でもない。自由には、必ず責任がついてくる。フリーランスはすべてが自由だから、すべてが自己責任。毎日ダラダラしてもいい。でも、その結果、収入がなくなっても、誰のせいにもできない。
15年前、私がフリーランスになった頃は、「フリーランス」って言葉自体がなかった。みんな「個人事業主」と名乗っていた。個人の事業主。つまり、一人で会社をやってるようなもんだ。株式会社と対等に戦う覚悟があった。
今は違う。フリーランスとフリーターを混同してるような連中が増えた。「会社に縛られたくない」「自分らしく働きたい」——そんな甘い動機で独立して、半年で消えていく。
冷静に書こうと思ったけど、やっぱり腹が立つ。
メリットだけ見せて、デメリットを隠すセミナー。キラキラした成功談だけ流すYouTube。あれ、罪深いと思う。真に受けた若者が、準備もなく独立して、借金抱えて、社会復帰もできなくなる。そういう人を、何人も見てきた。
フリーランスは、個人の傭兵だ。戦場で一人で戦う覚悟がないなら、やめておいた方がいい。会社員の方が、よっぽど楽だ。それは断言できる。
……まあ、それでも私はフリーランスを続けてるわけだけど。結局、向き不向きなんだろう。向いてる人には天国、向いてない人には地獄。そういうことだ。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムの形で編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
■ 採点結果
【基礎点】 41点/50点(テーマ、論理構造、完成度、訴求力)
【技術点】 20点/25点(文章技術、構成技術)
【内容点】 20点/25点(独創性、説得性)
■ 最終スコア 【81点/100点】
■ 評価ランク ★★★☆ 水準以上の良書
■ 評価の根拠
【高評価ポイント】
✓ 両面提示の誠実さ:「利益総取り」の魅力と「誰も助けてくれない」現実を対置し、キラキラ起業論への批判を通じて読者に冷静な判断材料を提供している
✓ 具体性のある説得力:バリ島移住デザイナーの「ゼロ営業日納品」、農家兼Webデザイナーなど実例が豊富で、15年の経験に裏打ちされた信頼性がある
【課題・改善点】
✓ 独創性の限界:「自由と自己責任」「向き不向き」という結論は類書でも頻出するテーマであり、ジャンル内での差別化要素が弱い
✓ 実務ノウハウの深度:契約書、請求書、確定申告など「全部自分でやる」と触れつつも、具体的な解決策や手順の提示は限定的
■ 総評
フリーランスの光と影を経験者視点で誠実に描いた一冊である。「月収100万円」を謳うキラキラコンテンツへの批判は痛快であり、「個人の傭兵」という比喩が本書の姿勢を端的に表している。会社員には見えにくいメリットを具体例で示しつつ、「履き違えると痛い目を見る」と自戒を込めて警鐘を鳴らす。独立を検討する読者に「覚悟の棚卸し」を促す価値があり、甘い幻想を抱く前に読むべき良書である。
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22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)