(前回:佐倉ふるさと広場拡張整備計画を問う③:マーケティング不在の来場者予測)
公共投資として佐倉ふるさと広場拡張整備事業を評価するうえで、最も重要な視点は「その経済効果が市民にどのように還元されるのか」である。市が総額30億円という財政負担を行う以上、その投資がどの程度の便益を生み、市民生活や市財政にどのような好影響をもたらすのかが明確に示されなければならない。
公共投資の基本原則は、「公費を投じる以上、その便益が公に帰属すること」である。しかし本事業では、市内経済への波及経路が設計段階で明示されておらず、投資と便益の関係が不透明なまま進められている。これは公共投資として極めて異例であり、事業目的と財政投入の整合性が根本から問われる構造となっている。
年間売上4億4,000万円という数字の“正体”
令和7年9月4日の木崎俊行議員の質問に対し、都市部長はこう答弁した。
「拡張整備後の売上予測は年間4億4,000万円」
一見すると大きな数字に見える。しかし、ここで最も重要なのは、この売上が誰の収入になるのかという点である。
木崎議員が「その消費見込額は市内事業者の活性化につながるのか」と問うたのに対し、都市部長は、
「市内・市外の区分による予測はしていない」
と答弁した。
つまり、4.4億円の経済効果が市内に残る保証は何ひとつない。
市の歳入は「試算すらされていない」
さらに木崎議員は、市の歳入がどれだけ増えるのか、その積算根拠を求めた。
これに対し、魅力推進部長は次のように答弁した。
「具体的な歳入増の想定はしていない。積算も行っていない」
つまり、
- 市は20億円以上の市税支出(総額30億円)を予定しているが
- 市の歳入がいくら増えるかは一切試算していない
という事実が、議会で公式に確認されたことになる。
公共投資としては異様な事態といわざるをえない。
指定管理者制度とのねじれ
本事業では、主要施設の運営はPark-PFI事業者が担う。
Park-PFIは民間の創意工夫を活かす制度として期待される一方で、事業者の収益性が優先され、市内経済への波及や公共性が後景に退くリスクを常に抱えている。
とりわけ本事業のように、市が巨額の初期投資を行いながら、収益の帰属や市内還元の仕組みが設計段階で明示されていない場合、民間の利益だけが確保され、市民への便益が置き去りにされる危険性が高まる。
本来であれば、
- 市内農産物の販売拡大による農家所得の増加
- 雇用創出による従業員所得の増加
- 市内事業者との取引拡大
といった波及効果がどの程度見込めるのか、定量的に示されるべきである。
しかし、現時点ではそのいずれも示されていない。
結論:費用対効果は評価不能である
現時点で分かっている事実を整理すると、次の通りである。
| 項目 | 状況 |
| 市負担 | 約20.5億円 |
| 年間売上予測 | 4.4億円 |
| 市内還元の保証 | なし |
| 市の歳入増試算 | なし |
| 経済波及効果 | 未算定 |
この状態では、この事業が市民にとって得なのか損なのか、評価そのものができない。
費用対効果の検証が行われていない以上、公共投資としての正当性は成立しない。
さらに問題なのは、このような「経済波及効果を検証しないまま進められる巨額観光投資」が、過去に全国各地で深刻な失敗を生んできたという歴史的事実である。
夕張市のリゾート開発、和歌山マリーナシティなど、いずれも集客数や売上の見通しだけが先行し、地域経済への循環構造が設計されないまま巨額の公費が投入された結果、運営破綻や深刻な財政負担を残してきた。
本事業が現在示している構造は、それらの失敗事例と驚くほど酷似している。
売上は想定されているが、その利益が誰に帰属し、市内経済にどのように循環し、市の財政にどのように還元されるのかは何ひとつ設計されていない。
このままでは、本事業もまた「巨額の公費を投じながら、地域に実質的な富を残さない公共投資」となりかねない。
次章では、本広場が拡張性された後のランニングコストについて検証する。
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