政府の「下請け」になった日銀はいらない

ECBなどの中央銀行総裁とBIS(国際決済銀行)が、トランプ大統領のパウエルFRB議長に対する刑事捜査に抗議する共同声明を出したが、16人の署名の中に日銀の植田総裁は含まれていない。

政府の許可を得ないと利上げできない日銀

当然、日銀にも事前に連絡があったと思われるが、日銀広報は「他国の中央銀行などの対応についてコメントすることは差し控える」と述べただけだ。これは共同声明を出すまでの時間が短く、政府との調整が間に合わなかったためといわれる。

しかし日銀は日銀法で独立性が保障されているのだから、政府が「署名するな」と言ったとしても、植田総裁の判断で署名できるはずだ。これは植田氏が高市首相に(あるいはトランプ大統領に)忖度して署名しなかったと考えるしかない。

これまでも日銀の金融政策については”behind the curve”だという批判が多かったが、それは政府の許可を得ないと利上げできないからだ。これは日銀関係者はだれでも知っている公然の秘密である。今でも日銀に独立性はないのだ。

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インフレ制御には「財政と金融の協調」が必要

本質的な問題は、中央銀行に独立性は必要なのかということだ。政府機関の中の特定の部門に独立性を与えるのは統治機構としては異例であり、自明のルールではない。かつてはどこの国でも中央銀行は政府の「子会社」であり、選挙の前には政策金利を下げることが求められた。

日本では、1980年代に政府が公定歩合の引き上げをいやがったため、利上げが遅れたことがバブル膨張の原因になったとされ、日銀法が1998年に改正されて独立性を与えた。しかし現代の経済では、通貨より国債のほうが重要である。日本でも日銀券の残高は約120兆円だが、国債は1100兆円。政府の負債としては同じで、金利がつく分だけ国債のほうが重要だ。

日銀が利上げしても、高市政権がバラマキ財政を続けたらインフレは悪化する。政府と日銀が協調しないと物価はコントロールできないのだ。これは日銀が国債を直接引き受けるマネタイゼーションを意味するので、日本ではタブーとされているが、借り換え国債の多くは直接引き受けであり、大した問題ではない。

巨額の政府債務を減らすには、むしろ政府が放漫財政を続け、財政赤字が大きくなると投資家が予想すると物価が上がり、実質債務が減る。これがインフレ税である。

物価を決めるのが財政だとすると、中銀の独立性どころか、日銀が必要かどうかもわからない。最後に残る日銀の機能は、金融危機のときの最後の貸し手だが、これも財務省の予算措置がないとできないので、金融庁と合併して「金融省」として政府に入れてもいい。

その場合、高市政権のようにインフレを促進する内閣を牽制する機関がなくなるが、今の日銀も植田総裁のように内閣の下請けなので大して変わらない。国会が「独立財政委員会」をつくって監視するしかない。