羽田 vs. 成田:政府の浮気心と利用者から見る目線

1986年頃だったと思います。私が成田で自社開発するゴルフ場開発の現場勤務となり、家を冨里に借り、通勤は成田空港反対派の拠点の家や鉄塔がある誰も通らない裏道を車で通っていました。会社の飲み会は反対派で有名な三里塚に行くこともしばしばありました。その後、今の第二滑走路の建設工事は私が勤めていたゼネコンも請けたのですが、社名は一切伏せ、隠密行動で同じ社内なのに誰が働いているのかわからない厳戒態勢だった時期もあります。

正直、成田は田舎です。あれから40年経ち、カナダから成田に着くと「昔、これを新東京国際空港と言ったんだよな」と思い出します。その名称は空港の民営化と共に消え、成田国際空港となり、「東京」の名前は消えましたが国際線の多くは成田が発着地であります。私は日暮里まで36分がうたい文句のスカイライナーを利用しますが、それでも道中の半分は田舎の中を疾走します。トンネルを抜け、森を抜け、湖の横を抜け、新興住宅地を過ぎるとようやく下町のごちゃごちゃした風景が目に入り、「東京に着いた」となるのですが、初めてくる外国人からすれば「これ、トウキョー?建物、低くて古いねえ」と言われそうです。

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羽田VS成田に関して、なぜ、成田の開発は遅れたのか、という議論があります。ずばり政治的な理由だったと考えています。東京が国際都市化する中で成田拡張には反対派が多く、空港利便性の早急なる改善が期待できない成田より海を埋めれば滑走路が簡単にできる羽田が便利という声が出ます。

もともと成田開港は国際線を成田にするのでよろしくと千葉県に頭を下げたのがいきさつ。だからあの反対派もどうにか抑えられたのは千葉県の協力があってのことでした。ところが政府は都合よく、「国際線は羽田と共生しましょう」に変えていきます。それも徐々に、ずるがしこく初めは短距離国際線だけだったのが、主要路線も入り、今では実に海外だけで42社も乗り入れています。

つまり政府の浮気心というか「やっぱり羽田が便利だよね。だから羽田に移せるだけ移そう」という短絡的な思想もあり成田が置いてきぼりになったのが実態でしょう。それでも2029年には成田で3本目の滑走路ができるので発着回数は47%も増え、50万回になります。

これ、成田がカオスにならないか、という懸念があります。そこでターミナルビルは今の第1から第3を集約して1つにまとめるプランになっているようです。成田は飛行機が何処のスポットに入るか次第ですが、カナダなんて一番端っこなので到着後、入国審査までとにかく歩かされるのです。足が悪い人には苦痛だろうな、と思います。

でも私の最大の懸念は空港ではなく、都心までの交通機関。これは頭に来るほど混んでいます。京成の切符売り場は長蛇の列、おまけに客を裁くのに時間がかかります。そこで裏ワザとしてSUICAで入りホームに設置されている指定券だけの自販機で買うのが早いのですが、自販機が2台しかなくてこれまた外国人が並んでもたついているのであります。この前も並んでいる間に電車は行ってしまいました。思わず、京成の社員に自販機が少なすぎると苦言を呈してしまいました。

スカイライナーならまだ指定席なのでよいのですが、無料のアクセス特急を私は貨物車両と申し上げます。デカいスーツケースに囲まれて人が乗っているという感じで時間帯により超込み合います。電車のデザインそのものが成田スーツケース族の需要に見合っていないのであります。

では羽田はそこまで便利かと言わると東京に住んでいる人にとって一概に便利で早いわけではないのです。ちなみに私は山手線の目白が下車駅ですが、羽田と成田、どちらが早いかと言えばほぼ同じか若干成田が早いのです。信じられないでしょう。羽田から京急品川までの時間、品川のつらい乗り換え、そして最後、混みあう山手線に30分近く乗らねばならないことを考えると「成田、悪くないよね」になるのです。

個人的には茨城空港の利便性を高めてLCCなどコストセンシティブな航空会社により魅力的なオファーをすればよかったのにと思っています。航空会社が払う空港使用料は空港により違います。インフラが最低限の茨城空港は安いのですが、いかんせん足が悪いし、便も少ないからバスも少ないという悪循環に陥っています。鳴り物入りの茨城空港でしたが、神戸空港の様には育たなかったと言えそうです。

日本は空港政策のポリシーが中途半端で、かつては各都道府県は各々の空港が欲しいという時代もありました。空港の数だけ見ると日本全国に97もあり、47都道府県の2倍以上もあるのです。空港がないのは全国8県なのですが、うち5県は関東というのもまた皮肉ですよね。偏り過ぎているというのが答えなのでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年1月20日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。