ドイツのローマ・カトリック教会の司教会議(DBK)議長、リンブルク教区のゲオルク・ベッツィング司教(64)は19日、来月予定されている司教会議議長選挙に出馬せず、1期で退任することを明らかにした。バチカンニュース(独語版)が19日、速報した。このニュースは驚きをもって伝えられた。これは単なる人事上の決定ではないと受け取られている。後任は、2月23日から26日までヴュルツブルクで開催される春季総会で、今後6年間の任期で選出される。
ドイツのカトリック教会司教会議議長のべッツィング司教、2026年1月19日、バチカンニュースから
ベッツィング司教は、司教会議の全メンバーに宛てた書簡の中で、「私は再選に臨むことができないことをお知らせいたします。協議と慎重な検討の結果、この決定に至りました。司教会議が、開かれた対話、建設的な議論、そして互いに手を差し伸べる意欲を持ち続け、わが国の信徒、そして多くの人々にとっての信仰の喜びを共に証しすることを願っています」と述べている。
ベッツィング司教が2020年にラインハルト・マルクス枢機卿の後任となった当時、ドイツ教会は既に深刻な信頼の危機に瀕していた。性的虐待への対応、急速な信者減少、そして改革への大きな期待が疼いていた。特に、盛んに議論されたシノドス(教会会議)の道が大きな影響力を与えていた。バチカンからの激しい抵抗と懸念にもかかわらず、同議長は改革プロセスを推進していった。
論争はローマにまで波及し、ローマ教皇庁との合同会議や協議までに発展していった。ただし、ベッツィング議長にはローマ教皇庁内における支援と強力なネットワークが欠けていた。一方、改革案に反対するルドルフ・フォーデルホルツァー司教、シュテファン・オスター司教、ライナー・マリア・ヴェルキ枢機卿といった高位聖職者たちは議長よりもローマで強力な人脈を持っていた。
前教皇フランシスコは2022年6月14日、インタビューの中で、「ドイツには立派な福音教会(プロテスタント派教会=新教)が存在する。第2の福音教会はドイツでは要らないだろう」と述べ、ドイツ教会司教会議の教会刷新運動に異議を唱えている。
ドイツ教会の改革案は、教会の権力分立(非中央集権体制)、指導部と平信徒の関係改善を核とした内容だ。具体的な提案としては、①司教の任命について信者に発言権を与える、②同性カップルのための祝福を正当化する、③女性聖職者の任命、等が含まれている。
ドイツ教会の改革案を見る限りでは、フランシスコ教皇(当時)でなくても、カトリック教会の“福音教会化”と揶揄されても可笑しくはない内容だ。バチカンで「それでは何のためにカトリック教会か」という疑問の声が聞かれたほどだ。
ベッツィング議長は昨年12月、ドイツ放送局「ドイチュラントフンク」に対し、「ドイツの司教たちがあらゆる問題について、一致した意見を述べていないことが自分の重荷になっている」と、ドイツ教会内で意見の対立があることを認めている。
例えば、シュテファン・オスター司教(パッサウ)、ルドルフ・フォーデルホルツァー司教(レーゲンスブルク)、ライナー・マリア・ヴェルキ枢機卿(ケルン)らが、教会改革に関して進歩的な多数派の主張を繰り返し妨害してきたことは、誰の目にも明らかだった。
特にシノドス改革プロセスに関して、意見は大きく分かれた。ベッツィング議長は、改革への意欲を示し、ローマからの反対をものともせず、実際に先頭に立った。2019年に開始された改革対話がローマからの分離につながると批判された際、ベッツィング議長は「われわれドイツの司教はそのような行動を少しでも考えたことはない」と強く反論した、といった具合だ。
なお、ドイツのカトリック通信(DKA)のマリオ・トリフノヴィッチ記者は20日、「べッツィング議長の退任でドイツ教会とバチカンとの間の対立が解消するわけではない。教皇大使ニコラ・エテロヴィッチ氏が間もなく退任する中、新たな勢力図が生まれ、ローマからのより強力な支援を得るための新たな道が開かれる可能性がある」と解説している。
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編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年1月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。