消費税減税は「フリーランチ」ではない

日本の長期国債の金利が急上昇しています。グラフはネット上で見つけた40年の超長期国債の価格と金利の動きです。金利が急上昇することで、国債の価格が急落していることがわかります。

2月8日には衆議院の解散総選挙が予想されていますが、各党の政策を見るとすべての政党が消費税の引き下げを公約に掲げようとしています。財源なき安易な減税が財政赤字拡大の懸念につながり、需給の悪化から国債が売られ金利が上昇する構図です。

債券マーケットの急落は日本の財政赤字の拡大に対するマーケットの懸念の反映なのです。

40年物国債の利回りは一時4.215%と4%を超え、1日で0.275%上昇しました。これは債券急落と言ってよい大幅な変動です。

多くの日本人にとっては長期国債の金利が上がっても下がってもあまり自分には関係がないと思っているかもしれません。

しかし、長期金利の上昇は企業の資金調達コストのアップにつながり企業収益を悪化させます。国や自治体の利払いコストも増えます。

また、債券売りとともに日本円も売られ円安がさらに進めば輸入物価の上昇によって国内のインフレが加速します。

さらに金融機関が保有する国内債券の評価損が拡大すれば、金融システムの不安定化をもたらします。

市場金利の上昇は他人事では無いのです。

消費税の引き下げは毎日の生活の支払い金額を目に見える形で減らし、目先の支出を抑えることになります。誰でも支払うお金は少ないに越した事はありません。わかりやすく口当たりの良い政策です。

しかし、そのコストはゼロではありません。消費税が節約できたとしてもそれを上回る景気の悪化による収入の減少や物価の上昇による実質的な収入や資産の減少が発生すれば、トータルではマイナスです。

経済学においては「フリーランチ(ただ飯)はない」とよく言われます。何かメリットを得ることがあれば、それは別のもののデメリットとの交換になると言うことです。

口当たりの良い減税政策が実行されれば最終的にプラスよりマイナスが大きくなってしまう可能性が高いのです。

すべての政党が程度の差はあれ消費税減税を打ち出しているということは選挙の結果に関わらず日本の財政状態の好転の可能性が低いということです。

とすれば政治家を頼るのではなく自分で自分の生活を守るしかありません。債券市場の混乱が他のマーケットに波及しないことを祈りながら、最悪の事態に早めに備えておくべきです。

高市首相 首相官邸HPより


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2026年1月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。