佐倉ふるさと広場拡張整備計画を問う⑧:観光最上位計画との致命的乖離

(前回:佐倉ふるさと広場拡張整備計画を問う⑦:市民参加と合意形成は「手続き」で終わっている

「やると書いて、やっていない」

「佐倉市観光グランドデザイン」は、佐倉市の観光政策における最上位計画である。

令和3年度から令和12年度までの10年間を対象とし、市の観光振興の基本方針、重点戦略、具体施策を体系的に示す、市の観光行政の「憲法」とも言える計画だ。

このグランドデザインの策定時点で、印旛沼周辺、とりわけ佐倉ふるさと広場の拡張は、すでに中核施策として明確に位置づけられていた。

つまり、現在進められている拡張整備事業は、後付けの思いつきではなく、最上位計画に組み込まれた「計画された政策」である。また、そのために組まれた「佐倉ふるさと広場拡張整備事業計画」は、佐倉市観光事業の憲法である「佐倉市観光グランドデザイン」の下位計画という位置づけだ。

したがって、ふるさと広場拡張計画の妥当性は、観光グランドデザインとの整合性という観点から厳密に検証されなければならない。

グランドデザインが示した“本来の姿”

観光グランドデザインでは、印旛沼周辺の重点施策として、

  • ふるさと広場の拡張検討
  • 消費につながる施設の検討
  • 年間を通じて集客可能な施設の検討
  • 水辺活用の検討

が明記されている。

さらに、市は次のように宣言している。

「検討にあたっては、公民連携事業の導入検討や、市場ニーズを把握するためのマーケティング等を実施します。」

そして観光の基本方針として、

  • 明確なターゲット戦略
  • 「市内・近隣市町」「都心」「インバウンド」の3層を想定
  • 各ターゲットの特性に合わせた施策の実施

を掲げている。

つまり、 拡張・マーケティング・ターゲット設定は、構想段階で“すべて想定済み”だった。

しかし、実際の事業はどうか

これまでの章で明らかにしてきたとおり、議会答弁を精査すると、実施段階のふるさと広場拡張整備事業は、最上位計画と根本的に矛盾している。

  • 来場者47万人のターゲット別内訳は算定していない
  • 市場分析の成果物は存在しない
  • マーケティング調査の結果も提示されていない
  • 想定客別の集客戦略も構築されていない

これは単なる「運用の不十分さ」ではない。 最上位計画で「実施する」と明言した中核工程そのものが、事業段階でほぼ放棄されている。

計画で約束したことを、実施段階でやっていない。行政計画として、最も重い種類の乖離である。

私の先の連載で、自治体の政策形成過程における三つの論理について整理した。

佐倉市観光事業になぜマーケティングは組み込まれなかったのか⑤
(前回:佐倉市観光事業になぜマーケティングは組み込まれなかったのか④) なぜ行政の計画からマーケティングは消えていくのか 前稿では、佐倉市の計画段階において、三つの問い——①プロセス、②効果、③成立条件——が同じ重さで扱われてい...

いわく、制度の論理、説明の論理、調整の論理である。その中でも、本来彼らが最も重視するはずの「制度の論理」を、「最上位計画で約束した最重要工程を無視する」という形で逸脱しているのだ。

なぜこのような乖離が生じたのか

最上位計画と実施段階の政策がここまで乖離する理由を、制度的・行政的に説明することは極めて困難である。

マーケティングも、ターゲット設定も、需要予測の根拠も、すべて「やる」と書かれていた。 にもかかわらず、実施段階ではほぼすべてが省略されている。

この乖離を説明しうる合理的理由は、もはや一つしかない。

現市長の任期という“政治的時間軸”に合わせて、事業を「一定の形にすること」が優先されたのではないか。

政策の質よりも、スケジュールの達成が優先された。そう考えなければ、この乖離は説明できない。

【次回予告】政治的時間軸に合わせた計画の危険性

次回の原稿では、 佐倉ふるさと広場拡張整備計画が、政治的時間軸に合わせて設計されている可能性 について検証する。

最上位計画との乖離は、単なる技術的問題ではない。 政治と行政の関係、そして市民の信頼に直結する問題である。