年末、蓮舫さんが「おひとり様」向けの支援策を充実させるぞ!みたいなことを突然ぶち上げて、案の定「これ以上負担が増えるのは勘弁してくれ」だの「なんで女性限定なんだ」だのといったツッコミが殺到していました。
実際、男性の方が女性より2倍孤独死しているというデータもあるので、筆者も女性限定の支援策には懐疑的です。
【参考リンク】男性は女性よりも2倍も孤独死している
ただし。じゃあ就職氷河期世代あたりの女性で困窮しているのはただの甘えで流してしまってもいいかというと、筆者はそれも違うのかなという気はしますね。
筆者自身も同世代ですが、採用業務を通じて氷河期世代の女性がどういう扱いをされていたのかはよく知ってますから。
もっと言えばその上のバブル世代ですら、女性の扱いはさすがにちょっと……という感じですね。
というわけで、今回は氷河期世代の男女間格差について取り上げたいと思います。なぜそれは生まれてしまったのか。そして、社会はそれにどう向き合うべきなのか。
老若男女問わず重要なテーマでしょう。
それ以前の世代の男性>氷河期世代男性>氷河期世代女性
過去にも取り上げてきましたが、終身雇用制度というのはきわめて男社会というか、男性を前提として機能するように設計されたものなんですね。
というのも、企業は終身雇用を維持するために、従業員を無制限に働かせる必要があります。
平時の雇用調整は「新規採用・解雇」ではなく「残業の増減」を通じて行われるため、月100時間くらいは残業できるだけの体力が必要です。
それから、田舎で欠員が出た時にいつでも辞令一本で転勤してくれるフットワークの軽さも重要です。転勤で人員をならすことで雇用を維持するのも終身雇用の基本ですから。
要するに日本のメンバーシップ型雇用というのは、職務を限定するジョブ型と違い、ひたすら組織のために滅私奉公する身分制度みたいなものなんですね。
そういう働き方が出来る人材としては、日本企業は長いこと「若い男性」が適役だと考えてきました。
そして、女性は採用はするがあくまでもサポート的な業務にとどめ、昇給も昇格も限定的、結婚や妊娠を機に退職して家庭に入り、滅私奉公する夫を支える側に回るものだとみなしてきました。
ちなみに、専業主婦という概念は、終身雇用と同時期に高度成長期に生まれたものです。昭和のモーレツ会社員の夫を支えるために生み出された割と最近の流行りものなんですね。
たまに自称保守の中に「専業主婦は日本の伝統だ」みたいなことを言う人がいますが、ただのアホなので無視していいです。
さて、そこで平時の残業調整などでは対応できない非常時の不況が来たとします。
今度は企業は新卒採用カットという手法で雇用調整をするわけですが、当然ながら真っ先にカットするのはサポート的な役割の女性ということになります。
もっと就職氷河期世代の女性の就活が知りたい人はこちらもオススメです。
【参考リンク】女子就活、激動の平成 いまや内定率は男子をリード
男子には就職先から資料が送られてきても、女子には届かない」「面接で『女子はいらない』と言われた」「就職セミナーの受け付け開始が男子より2カ月遅かった。女性を採用すると言っていても男女格差は日常茶飯事だ
新卒カードを切らされた挙句に、非正規雇用ルート入りが確定した氷河期女性は多かったでしょうね。
要するに、氷河期世代は確かにそれ以前の世代よりしわ寄せを喰らってるのは事実ですが、同じ氷河期の中でも男>女という厳然たる格差が生じていたわけです。
だから、おひとりさまを支援しようみたいな発言に対して「いや俺たち氷河期世代の男だってひどかったんだぞ」というのは上の世代の男性と比べれば事実ですし、「氷河期世代の女はもっとひどかったわ」というのもまた事実でしょう。
さらに言うなら、筆者は結婚の意味合いも男女でかなり変わってくると感じています。
男性の場合は独身でも、仕事で頑張ればそれなりの居場所や処遇が与えられるわけです。
ところが女性の場合はハナからサポート役しか期待されていないため、バリキャリでやっていく機会が(すくなくとも氷河期世代やそれ以前の世代には)今よりずっと少なかったはず。
同じ「結婚しなかった(出来なかった)」という選択肢でも、それで得られる生活水準が全然異なるわけです。
実際、筆者の同世代の独身者にはそれなりに人生充実していたり、中には独身貴族と言えなくもないような人もいますけど、そういうのは100%男性ですね。
やはり「男が総合職として滅私奉公し、女性がサポート役に回る」という日本型雇用の暗黙の役回りが諸悪の根源なんですよ。
結局、終身雇用制度の抱える歪みを、みんなで見て見ぬふりをし続けた結果が今なんでしょうね。
「なんで総合職と一般職に分かれていて、女性は一般職中心なのか」とか
「なんで男性は無制限で過労死するほど働かされるのか」とか
「なんで氷河期世代だけこんなに採用搾られるのか」
みたいな素朴な疑問を無視し続け、うやむやのまま流そうとした格差が、結果としてどろどろに濃縮して形になったのが“おひとり様問題”なんじゃないでしょうか。
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以降、
格差はなぜ固定化されたか
氷河期世代がなすべきこと
Q:「採用責任者ですが40歳以上の独身者はやっぱりちょっと変わってませんか」
→A:「そうかもしれませんが変わっていること自体は悪いことではないかも」
Q:「上昇志向の強い新人と、温室で大事に育てろという人事の板挟みで困ってます」
→A:「本人にやる気があるなら多少負荷を高めても問題ないでしょう」
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