今回の選挙の目玉が食品にかかる消費税をゼロにするという政策案です。ではこの消費税の一部減税に効果があるのかというアンケートを見ると日経が行った調査では効果があるが38%、効果がないが56%でした。一般の方の肌感覚の調査でも効果がないと答えた人が過半数を超えたという意味を考えてみたいと思います。
中道・野田佳彦代表 高市早苗首相 国民民主・玉木雄一郎代表 各党HP・首相官邸HPより
そもそもなぜ消費税は不人気だったのでしょうか?諸外国ではもっと消費税が高い国はたくさんありますが、それらの国で高税率に対して表立った不満の声は聞こえてきません。時として税に対する理解を示す発言すらあります。むしろ私が住むカナダあたりでは国民が着目するのはその税がどう使われるかであり、いくら集めるかは使う側から換算するという発想かと思います。
日本の場合はこの税に対する思想と思考、アプローチに歴史的背景を見ています。その昔、農民に課せられた年貢を巡り日本の歴史では何度も農民一揆が起こり、役人と農民のすれ違いが無数に起きています。人々は年貢により搾取されていると考えるわけです。もちろん欧州にも農奴といった別の形の搾取はありましたが、日本の場合は士農工商の枠組みの中で「士」と「農工商」の間で乗り越えられないギャップが相互関係の不信としていまでも心理的に引きずっているのではないでしょうか?
次に税体系ですが、日本の消費税導入は他国を参照にしたとされますが、可能性として他国の消費税だけを参照にした、あるいは過大にそれを評価した公算があります。国により多額の税を課すならそれに対する国民への見返りがある北欧とか、経済が潤うので消費税がないメリハリ型税体系のカナダのアルバータ州やアメリカのオレゴン州など法人税、所得税、消費税、相続税など税体系全体で強弱感をつけトータルバランスで考えていると思います。
しかし日本はもともと足りない税収を補うだけではなく、安定した財源確保のため、税体系というより税収入のバランスを第一義に考えている節があるのです。よって歳入ベースで見ると法人税(17%)、所得税(19%)、消費税(21%)と似たような税収比率でそれを補うように相続税(3%)などが続きます。歳入ベースでは国債が25%ぐらいありますので純粋な税収だけをみればほとんどがその3つの税で成り立っていると言ってよいのです。
財務省はその税収のバランスは崩したくない、これが本音でしょう。
では国民側の目線で見てみましょう。もしもある家庭で月に5万円の食材費がかかっているとします。消費税は5000円払っています。これがもしもゼロになればその5000円をどうするか、これが質問なのです。それこそ街角アンケートしたら面白いと思います。「あなたは浮いた5000円を何に使いますか?」と聞くでしょう。「使いますか?」と聞かれれば〇〇を買うと答えるはずで、浮いたお金を貯金します、という返事は少ないはずです。
これは経済学と心理学を合わせた行動心理学で考えると分かりやすいと思いますが、人は得をすると得をした分でなにかを消費、浪費する傾向があるのです。私が顕著に起きるだろうと思うのは消費のアップグレードです。今までより1割程度安く買えるという心理が「ちょっと高級な刺身や肉を買おう」になるのです。つまりお財布の紐の節約効果はほぼないはずです。
もちろん、低所得者のご家庭では「助かる」という真の意味での効果を感じる方はいらっしゃいます。ですが日本全体で見た場合、手元に統計分析するデータがないのですが、その比率はかなり低いとみています。ちなみにカナダでは一定年収より低い人に対して消費税を確定申告に基づき年4回にわたり一定額の補助(実質的な消費税の還付)が行われています。日本でなぜこの仕組みを取り入れないのか不思議なのです。
極端な話をすれば一般家庭では食品の消費税が無くなれば高級な肉と魚が売れる、こう考えています。では各政党がそれでも「打倒!食品消費税」を掲げるのか、と言えば上記に申し上げた「士」と「農工商」の関係上、なんで俺のお金を勝手に吸い上げるのだ!という不満であり、政治家の食品消費税ゼロ運動は「スッとする」以外の何物でもないとも言えるのです。
先日の党首討論会の際、ずらり並んだ党首の中で一人、異論を唱えたのがチームみらいの安野貴博党首でした。安野氏は「食品減税、今じゃないでしょ」という考え方です。私もそう思います。物価は上がっていますが、景気は悪くはないのです。実質所得が物価上昇に負けてるというのですが、それは数字だけを見た話。一定水準の消費が出来る世帯では物価上昇に対して一定の対策を打てる余裕がある点が抜け落ちているのです。経済学では代替材という表現をするのですが、生活水準が上がり、消費選択が増えると代替手段はいくらでも増えるので、一般生活に壊滅的な打撃は起きない、というのが結論です。
よって食品の減税効果は極めて少ないことになるはずです。同様の調査は経済研究所でも検討されており、大和総研では効果は1/10しかないと公表しています。そういう意味では私はこのイシューについてはポピュリズムの何物でもなく、冷めた見方をしております。
但し、食品は消費税の対象外とする国は多く、日本の消費税の制度設計がそもそも間違っていたというならそれを恒久的に修正するという観点では賛成ですがそう説明する政党はなかったように思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年1月27日の記事より転載させていただきました。