米国のトランプ大統領が、日本の衆議院選挙の投開票日直前に自身のSNSに投稿したメッセージが波紋を広げている。投稿は、日本を「偉大な国」と称賛しつつ、高市早苗首相を「強く、賢明で、真に国を愛する指導者」と高く評価し、その率いる自維連立政権に対して「完全かつ全面的な支持(Complete and Total Endorsement)」を表明する内容であった。
注目すべきは、この発言が単なる外交辞令や首脳間の友好表現にとどまらず、明確に日本国内の選挙結果に言及し、有権者に対して投票行動を促す形を取っている点である。「日曜日の非常に重要な投票の幸運を祈る」という表現は、事実上、特定の政権・連立を支持する政治的メッセージとして機能している。現職の米国大統領が、同盟国の国政選挙を名指しで評価し、特定の首相とその連立政権への支持を明言するのは極めて異例である。
投稿の中でトランプは、高市政権の「国家安全保障」への姿勢や、「米国と日本が緊密に協力して成立させた非常に大規模な貿易協定」を評価している。ここから読み取れるのは、この支持表明が価値観外交や民主主義擁護というよりも、トランプ流の取引主義的外交、すなわち「自国に利益をもたらす相手を支持する」という姿勢に基づいている点である。高市首相は、トランプにとって、安全保障と通商の両面で「取引可能」かつ「信頼できる相手」と映っていると考えられる。
しかし、このような発信は、日本側から見れば微妙な問題を孕む。第一に、外国首脳による選挙直前の露骨な支持表明は、国際的には「選挙への介入」と受け取られかねない。たとえ軍事的・サイバー的介入ではなくとも、影響力の大きい同盟国指導者の発言は、有権者の判断環境に一定の影響を与える可能性がある。第二に、こうした支持が、結果次第では日本の政権の正統性に対する疑念や、対米従属的イメージを強めるリスクもある。
他方で、この投稿は、トランプ外交の一貫した特徴も浮き彫りにしている。すなわち、同盟国であっても中立性や内政不干渉を重視するより、「自分に好意的な指導者を公然と持ち上げ、圧力と称賛を使い分ける」という姿勢である。これは、トランプがしばしば示してきた「個人的関係重視」の延長線上に位置づけることができよう。
今回の投稿が、日本の有権者にどの程度影響を与えるかは不透明である。しかし少なくとも、日米関係が単なる制度的同盟を超え、個人的・取引的な関係性に大きく左右されつつある現実を象徴する出来事であることは間違いない。トランプの言葉は、日本の選挙を祝福するメッセージであると同時に、同盟国の内政に踏み込む危うさをも内包していると言えるだろう。
日米首脳会談でのトランプ大統領と高市首相 首相官邸HPより