
組織票が日本政治でどれくらい効くのか。
全国でも大人気の高市早苗総理。現段階では自民党の圧勝予測が出ていますが、創価学会が猛烈な活動を展開しています。最強の組織、利益団体による組織票が高市人気に一泡吹かせるか。投票日を迎えて、にわかに注目を浴びる組織が持つ問題について考えます。
組織票とは何か。組織かある特定の候補に投票するよう命令もしくは指示が下り、上意下達で命令が末端まで徹底され、カウントされる票数のことです。場合によっては、しっかり投票したかの確認まで行われることもあります。
日本の国政選挙で「組織票」が多い(動員力が大きい)とされる主な団体は以下の通りです。
- 創価学会(公明党支持基盤)
- 立正佼成会
- 天理教
- 連合(日本労働組合総連合会):傘下には、UAゼンセン、自動車総連、電機連合、電力総連、私鉄総連、JP労組など
- 全労連・全労協
- 全国郵便局長会
- 日本医師連盟、日本薬剤師連盟、日本歯科医師連盟などの医療系団体
- JAグループ(農協系)、全国農業者農政運動組織連盟など
- 建設業協会、全国商工政治連盟など
- 日教組(日本教職員組合)
- 自治労
- 全国保育推進連盟、全国介護事業者連盟など福祉・ケア分野の団体
こうした組織の中には自由闊達な組織もあれば、そうでないところもあります。そう、自由な雰囲気がなく、民主主義な、個を圧する権威主義的組織です。権威主義的組織の定義ですが役職や上位者の意向が絶対視され、部下が反論しにくいトップダウンの階層型組織のことを言います。
組織のメンバーがなぜ、ある幹部が決めた特定の候補に投票しないといけないのでしょうか、この民主主義社会で個々人の選択の自由はどこにあるのでしょうか。そして、権威主義的組織の組織票が選挙を左右してしまうことが本当に民主主義社会においてよいのでしょうか。
日本病の1つ「権威主義社会」
「社会の医者」こと筆者西村健は、「日本病」として9つの問題を提案します。経済の「日本病」と言われる、「低所得」「低成長」「低金利」の問題だけでなく、
政治面では、
- 機能しない行政経営:(例)政策の見直し・マネジメントも不十分、定着しないEBPM、スリム化しない・DX化が進まない肥大する行政機関など
- 既得権益過剰配慮:(例)政治に近い業界団体・利益団体の過剰な政策への影響力、旧態依然な産業構造、進まない規制改革など
- 説明責任不足:(例)過去に「失敗した」政策・施策・事業の検証不足、事業の見直しが進まず財政悪化、予算の使い道の詳細が未公開など
社会面では、
- 権威主義社会:(例)低い幸福度、仕事やりがいの低さ、低いモチベーション・エンゲージメント、高ストレス、組織の病理など
- 戦後の社会モデルのまま:(例)少子高齢化に対応できない硬直した制度と拡大志向、新卒採用・長期雇用・年功序列、パートナーシップ型企業経営など
- 説明責任不足:(例)不明確な政策の目的達成度、説得不十分の為政者の説明、追及が甘いメディア・ジャーナリズム、緩い公益通報保護など

日本病、9つの特徴
筆者作成
これらの問題解決度合いを考えていきますが、今回は権威主義社会・組織に焦点を当てます。
ひどい症状
組織票を生み出す組織行動、こうした組織の中には権威主義的な組織も見られます。診断すると
【裏付けとなる事実】
- 各企業での労働関係(やる気、モチベーション、学習意欲など)の指標の低さ
- ストレスやメンタル不調件数の高さ
- 公益通報制度が機能できない。
- 多発する県知事のハラスメント不祥事
- 上意下達が色濃く、組織が一体となって行動する(組織票)
となります。
今回は企業社会の話ではないので、話を組織に限定したいと思いますが、日本の国政選挙で「組織票」が多い(動員力が大きい)とされる団体では、上意下達が色濃いのが問題なのです。
普通、組織メンバーは組織の決定に従わなくてもいいものなのですが、裏取りまでさせられます。不服従なんていうのは非常に難しく、無言の圧力と空気で命令をほぼ強制します。命令には絶対服従、反論は厳禁、中央集権で末端は虐げられる・反抗するなら制裁、有無を言わせずルールに従わせるというのはあまりに個人の尊厳を踏みにじる行為にも思えます。
ただし、組織は、個人の忠誠心や承認欲求を刺激し、上位の立場・地位・肩書への期待をうまく利用し、人間関係や所属意識と楽しめる居場所を提供し、組織に所属するは人をうまく扱って行動をさせていきます。
組織の中でのポジションで上に行くにはそれなりに貢献をしなくてはいけないのです。熱心に選挙活動をすることが所属組織での自分の地位やプレゼンスを高めることにつながり、結果として自己満足と承認欲求を満たせるようになるのです。自己実現のため、自己表現のために、選挙活動の駒として活動する「マシーン」の誕生です。
たくさんの深刻な問題
分析すると以下の図のようになります。

筆者作成
権威主義社会と組織の問題は3つです。
第一に、上意下達命令は個人の尊厳と自分が深く思考する力を奪います。勇気を出して異論を言ってみても、周りから「空気が読めない」などという反応があるかもしれません。「偉い人には従え」的な同調圧力が常に存在します。そのため、異論や勇気ある発言を控えるインセンティブが働きます。そうすると、考えない方がいい、周りに流されたほうが楽だとなってしまいます。
第二に、権威主義的組織がもたらす「空気」「同調圧力」が真面目で我慢する人を追い詰め、迫害することです。権威主義的組織は、個人を糾弾し、自己反省を強要します。
第三に、力の強い組織・人の前で面従腹背、心は醒め、モヤモヤが増え、本音と建て前、強いものと全体の利害の合間で心を痛めるのです。権威主義的組織のおかしさ、明白に間違っていても、「もしかしたら自分が間違っているのかもしれない?」と自分自身を問い詰めてしまいます。
しかし、権威主義的組織は脱退するのも難しいのです。
3つの処方箋
さて、どうやってこの病気を治療していくかです。処方箋を3つ提示しましょう。
【処方箋①】教育
「偉い人には従え」「長いものに撒かれろ」という権威主義的な「村社会」にがんじがらめにされています。
子どものころから、「整列!」「前へならえ!」「距離を保って、歩け!」「体育座り!」といった訓練を受けます(アゴラ記事参考)。また、生徒・児童は、朝礼で校長先生の(退屈な)話を直立不動で聞かされたりします。
過剰な規律の徹底はこの社会の伝統でもあり、一定の意味もありますが、他方「規律」と言う名の権威主義ともいえます。こうした「枠にはめる活動」、その背景にある無意識の常識を教育現場から変えていく必要があるでしょう。
【処方箋②】イノベーション
高度成長時代を終えてから日本のビジネスシーンでのイノベーションが相対的に遅れています。新規事業で新たなサービスを開発できず、ずるずる右肩下がりで衰退していっています。
ここ数年のうちに、雇用の流動化(解雇規制緩和)と人的資本経営のセットによって日本経済の新たな方向性が出てくると思っています。セーフティーネットを整備したうえで、共創・競争・イノベーションを促進していく必要があるでしょう。自由な発想と創造性は権威主義的組織からは生まれてきません。
【処方箋③】複数集団所属と多様な「場」づくり
所属組織が1つだけだと、そこでの人間関係がすべてになってしまいます。所属メンバーは権威主義組織に我慢してでも所属しようとしてしまいます。ですので、様々な複数集団・団体にゆるーく繋がれる、いつでも退出可能な関係性の構築が求められます。
権威主義的な組織から自己解放と自主投票を
風通しが悪く、上が絶対という組織は、対外的にも牙をむきます。競争において競争相手を「敵」とみなし、徹底的に批判します。組織にとって批判的な発表があった場合は、メディアにFAX攻勢をして、黙らせることも過去にはしています。裁判や法的処置はもちろんです。
そこまでいかなくても、他組織にクレームを入れてくる幹部もいます。本来、意見を異にするなら、まず事実を確認し、事情を聴くことが先なのが普通の社会人としてのマナーです。しかし、いきなり命令口調のクレームをいれるのです。こうした行為は、自分たちの組織は権威主義的組織だと証明しているようなものです。
総選挙、権威主義的組織に支えられた候補者、支援を受けている候補者かどうかを見極めてもらうことが重要になります。私の示す処方箋に考え方の近い政党・候補者に投票してもらいたいと心から願っています。主権者は皆さんです。






