日本で8日、衆議院選挙の投開票が行われ、与党自由民主党が議会(定数465)の3分の2を超える316議席を獲得し、「地滑り的勝利」(Erdrutschsieg)を遂げた。欧州でも日本の早期解散選挙の行方に対する関心が高く、東京発で次々と速報した。

選挙戦初日の高市首相と森下千里候補 自民党HPより
当方が住むオーストリアでも8日午後19時半(現地時間)のプライムタイムのニュース番組で高市首相の地滑り的勝利を大きく報道、現地からの有権者の声を紹介し、「日本の政治の行方は64歳の高市首相の手にある」と総括していた。
地理的に遠いこともあって、日本関連の報道はこれまで短信が多かったが、8日の日本の総選挙関連の扱いは例外だろう。高市首相が訪日した韓国の李在明大統領とK-POPに合わせてドラムを演奏する姿を紹介し、日本のこれまでの政治家とは異なる政治家のイメージを伝えた。「日本では大雪に見舞われ、国民が投票場に行くのも大変と懸念されていたが、政治の変革を願う国民の足を止めることはできなかった」と、”高市人気”を報じた。
オーストリア国営放送(ORF)のウェブサイトでは、「高市氏は、日本で初めての女性内閣総理大臣(首相)に選出された。党内では右派に属し、特に若い有権者の間で人気が高い」と報じ、「政治学者のアクセル・クライン氏がドイツ通信社(DPA)に対し、『高市氏はソーシャルメディアやテレビを通じて強力な指導者のイメージを戦略的に打ち出す方法を理解していた』と語ったコメントを紹介した。
以下、高市首相の「地滑り的勝利」を報じたORFの記事の概要を紹介する。
「早期総選挙のリスクは、高市早苗首相にとって報われた。高市氏は、前任の石破茂氏の辞任を受け、昨年10月末に就任したばかりだった。自民党は数々のスキャンダルにより、2012年以来初めて両院で過半数を失った。昨年、公明党が連立政権から離脱した後も、自民党は日本維新の会と連合して、かろうじて政権を運営してきた。高市氏は今回、衆議院で過半数を獲得するために必要な233議席を大幅に上回った」
高市首相が早期解散、選挙へと打って出た背景について、「改革案をより広範な議会基盤で実現するために、今回の総選挙を決定した。多くの問題で参議院の議席を覆すには、3分の2以上の議員数が必要だ。高市氏の早期議会解散は報われた。高市首相は選挙後のテレビインタビューで『今回の選挙は、経済・金融政策の抜本的な転換、そして安全保障政策の強化といった、主要な政策決定を問う選挙だった』と説明している」
また、「高市氏は2017年に当時の安倍晋三首相の下で党が達成した成果を基盤にしている。その安倍首相は2022年に暗殺された。高市氏は『アベノミクス』の支持者とみなされている。安倍首相が推進する経済政策は、超低金利と多額の政府支出によって景気を刺激するものだ」
そして「彼女は長年英首相を務めたマーガレット・サッチャー氏をロールモデルに挙げている。しかし、サッチャー主義とは対照的に、日本政府は巨額の政府支出を開始した。これらの支出の財源が不透明であることから、金融市場に不安が生じているが、アナリストたちは高市氏の圧勝を明るい兆しと捉えている。アナリストによると、この圧勝は株式市場の上昇にとって良い兆候だ。自民党が過半数を占めれば金融市場は安定する可能性がある」と予測。
「高市首相は就任からわずかしか経っていないから、成果はこれからだろう。4月から始まる会計年度の予算はまだ承認されておらず、円安によるインフレにも苦しんでいる。約1170億ユーロの景気刺激策は、日本経済の活性化を目的としている。高市政権はまた、食料品に対する付加価値税の引き下げを約束した。国際通貨基金(IMF)によると、日本の債務比率はすでに年間GDPの2倍をはるかに上回っている」
外交・安全保障政策において、「高市首相は日本の守護者として米国と緊密な関係を築きつつ、中国とは断固たる距離を置く強硬派とみなされている。トランプ米大統領は先週、高市首相への支持を表明した。高市首相は就任直後、民主的な台湾への中国の攻撃を日本にとって存亡の危機となる可能性があると述べ、中国から激しい反発を受けた」
最後に、総選挙での野党の敗北にも言及、「急遽召集された国会選挙は、野党に準備時間をほとんど与えなかった。1月に結成されたばかりの野党連合、中道改革連合(CRA)は、選挙で大きな敗北を喫した。CRAはかつて172議席を有し、野党勢力の中で最有力だった。この連合は、昨年自民党との連立政権を離脱した公明党と、左派リベラルの立憲民主党(CDP)で構成されている。ジャパンタイムズは、CRA連合は「ファンタジーと絶望」から生まれたと評している。連合を構成する2つの政党は『不可逆的な衰退傾向』にある」と辛らつに指摘している。
いずれにしても、オーストリアのメディアが日本の総選挙結果について、上記のように包括的な解説記事を配信したのは当方が知る限りでは初めてだ。高市人気はアルプスの小国オーストリアでも関心を呼んでいるわけだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。






