
- 「日本は賃金が安いけど物価も安いから、生活は楽」とは言えない。15か国で、同じ商品の値段をその国の平均手取りで割って比べた結果。
- 新型iPhone Duoは、日本では月の手取りの99.2%。アメリカは売上税込みで46.2%。日本人にとってはアメリカ人の約2.1倍重い。
- カップヌードル、ニベア、レッドブルも、日本は手取りに対して下から数えた方が早い。5品目中4品目で、比べた国の真ん中より下。
- 例外はビッグマック。日本は15か国中4位で、手取りに対して買いやすい側だった。
- ただし家賃や野菜・肉・魚といった生鮮食料品は、国ごとに中身も品質も違って比べられない。そこまで含めた生活のしやすさは、正直わからない。
こんにちは。永江です。
日本の賃金が先進国の中で安い、という話をすると、必ずこう返ってきます。
「でも日本は物価も安いじゃん。欧米は給料が高いぶん物価も高いから、暮らしの実感は変わらないよ」
ほんとにそうか? 円をドルに換算して「日本は安い」と言ってるだけじゃないのか。日本で働いて日本円で給料をもらっているあなたにとって大事なのは、為替じゃなくて手取りに対する重さのはず。
というわけで、わたしは実際に調べてみました。これが思った以上に大変だったんですけどね。
比べたのは15か国。G7(日本・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・カナダ)に、韓国・台湾・オーストラリア・スイス、北欧4か国(スウェーデン・ノルウェー・デンマーク・フィンランド)を足しました。AIがいなかったらできなかったよ。チャッピーとClaudeは2時間くらい働きました。
手取りは、OECDが毎年出している「Taxing Wages 2026」(2025年の数字)を使っています。独身・子どもなしで平均賃金をもらっている人の手取りです。日本は月367,846円。台湾はOECDに入っていないので、平均賃金から税金と保険料を差し引いて自分で計算しました。
値段は、2026年10月19日に各国のApple公式ストア、マクドナルド、大手スーパーやドラッグストアの通販サイトで調べたもの。まとめ買いではなく1個あたりの値段です。アメリカとカナダは値札が税抜きなので、人口が一番多い州の税金を足しました。アメリカはカリフォルニア州の基本税率7.25%、カナダはオンタリオ州の13%です。
で、値段をその国の月の手取りで割る。現地通貨どうしで割るので、為替レートは一切関係ありません。円安だろうが円高だろうが、この比率は変わらない。ここがポイント。
ぶっちゃけ、一番苦労したのはここです。世界中で売ってるはずの有名ブランドなのに、国ごとに中身も売り方もバラバラ。比べられるものが全然揃わない。
- 世界で一番売れているP&Gのh&sシャンプーは比較をあきらめた。日本の標準ポンプは330g(前の370mLは販売終了)。海外は200mL、250mL、400mL、850mLとバラバラで、日本と同じボトルを売ってる国が1つも見つからなかった。
- デュラセルの単3電池も外した。海外は普通のグレードの4本パックが主流なのに、日本で見つかった4本パックは上位版「オプティマム」の798円だけ。上位版と普通のを比べたら日本が損するに決まってる。
- カップヌードルは、日本の「しょうゆ味」が海外にない。しかたなくチキン味やシーフード味で代用。日本は味が違っても値段は同じなので、これで比べることにしました。
- ニベアの青缶は、日本がグラム表記で海外はmL表記。日本の大缶は169g、海外は150mL缶が主流。ドイツの通販サイトに「150mL・重さ170g」と書いてあったので、同じ缶とみなしました。イギリスは400mLしかなく、アメリカは瓶。なので外してます。
- レッドブルは、1本売りしてない国がある。イギリス・カナダ・スイス・台湾は4〜8本パックの値段を本数で割りました。
さらに通販サイトの壁。Amazonや各国の大手スーパーの多くは、外からの自動アクセスを受け付けてくれない。韓国にいたっては大手通販がどこも開けず、カップヌードルとレッドブルの値段が取れませんでした。予定していた7品目のうち、最後まで比べられたのは5品目です。
まずは一番わかりやすいiPhone。9月に発表された折りたたみの新型「iPhone Duo」の256GBモデルです。


日本は364,800円で、月の手取りの99.2%。ほぼ1か月分です。アメリカは1,999ドルにカリフォルニアの税金を足しても46.2%。半月分もいかない。スイスにいたっては29.1%で、3分の1以下。
iPhoneは世界中ほぼ同じドル価格で売られてるので、手取りの差がそのまま出る。アメリカ人が半月分の手取りで買えるものを、日本人は1か月分払って買ってるわけです。「物価が安いから大丈夫」って、どこの話よ。
「iPhoneは輸入品だからでしょ」と言われそうなので、日用品も見ます。

日本の商品なのに、カップヌードルは8か国中7位

日清の、日本生まれの商品ですよ。それなのに日本は8か国中7位。アメリカでは手取りに対する重さが日本のおよそ5分の1です。笑うしかないww

ニベアの青缶は9か国中6位


レッドブルは12か国中11位
コカコーラはサイズと店舗によって価格が違いすぎて比較不能

円に換算すれば日本は安く見える。でも、日本人の財布から見ると全然安くない。これが「日本は物価が安い」の正体です。
都合の悪いデータも出しておきます。ビッグマックだけは、日本は15か国中4位。手取りに対して買いやすい側でした。


国内で作って国内で売る食べ物は、日本でも手頃。ここは素直に認めます。
で、ここで「ビッグマック指数と全然違うじゃん」と思った人もいるはず。たとえば世界経済のネタ帳(ecodb)のランキングだと、スイスは1,440円で54か国中一番高く、日本は480円で48位の「激安」です(2026年1月時点、1ドル=158.55円で換算)。
違って当然。目的がまったく違うからです。
- ビッグマック指数:値段を為替でドルや円に換算して、通貨が割安か割高かを見る指標。旅行者から見て、その国のビッグマックが高いか安いかがわかる。
- 今回の比較:現地の値段を、その国の手取りで割ったもの。現地で働く人にとって、どれだけ買いやすいかを見ている。
今回はThe Economistが指数を作るために集めた各国の値段を、データとして借りているだけ。指数そのものではありません。スイスのビッグマックはドルで見れば世界一高いけど、手取りで割ると15か国で一番買いやすい。値段が高くても、それ以上に手取りが高いからです。
ちなみに日本の値段がecodbは480円、今回は500円なのは、日本マクドナルドが2026年2月25日にビッグマック単品を480円から500円に値上げしたからです。
5品目の結果をまとめるとこうなります。
| 品目 | 日本(手取り比) | 日本の順位 | 1位の国 |
|---|---|---|---|
| iPhone Duo | 99.2% | 13位/15か国 | スイス(29.1%) |
| ビッグマック | 0.136% | 4位/15か国 | スイス(0.106%) |
| カップヌードル | 0.065% | 7位/8か国 | アメリカ(0.014%) |
| ニベア青缶 | 0.170% | 6位/9か国 | スイス(0.051%) |
| レッドブル250mL | 0.064% | 11位/12か国 | スイス(0.022%) |
結論。「日本は賃金が安いけど物価も安いから、生活は楽」とは言えません。世界共通の値段で売られる商品は、日本人にとって明らかに重い。ビッグマックみたいに国内で作る食べ物は買いやすい側だったけど、それだけで生活が楽とは言えない。
ただし、ここは正直に書いておきます。家賃や野菜・肉・魚といった生鮮食料品は、国ごとに中身も品質も違って同じものを比べられないので、今回はわかりませんでした。これらが手取りに対して日本で安いなら、話は変わる可能性があります。そこは「わからない」としておくのがフェアでしょ。
「日本は物価が安い」と聞いたら、あなたも一度「それ、ドルで見た話? 手取りで見た話?」と聞き返してみてください。答えがまるで変わりますから。
この1ヶ月半で体重5キロ弱落としました。筋肉を落とせないので必死に摂ってるプロテインとタンパク質。そんなわたしの強い味方でヘビロテしています。腹にも溜まるよ
グラフに使った価格59件と、15か国の手取りの元になる平均賃金を、集めた担当とは別にもう一度すべて原典に当てて照合しています。価格59件の内訳は、原典確認済み39件、報道・二次情報ベース20件です。
- OECD「Taxing Wages 2026」の14か国の平均賃金と、本人負担の税・社会保険料率(手取りはこの2つからの計算値)
- 15か国のApple公式ストアのiPhone Duo価格(例:日本、米国)
- 日本マクドナルドのビッグマック500円と2026年2月25日の値上げ
- カップヌードル・ニベア・レッドブルの価格のうち、各国の小売店の商品ページで確認したもの
- カリフォルニア州の基本税率7.25%と、オンタリオ州のHST 13%
- ニベアクリーム大缶169g(花王)と、ドイツKauflandの「150mL・重さ170g」表記
- 日本以外のビッグマック価格14か国(12か国はThe Economistの価格データ2026年7月版、韓国・台湾は報道)
- 台湾の平均賃金(経済日報 2026年2月11日)
- 価格比較サイトやチラシから取った価格6件(英国・オーストラリアのカップヌードル、英国・フランス・ドイツ・オーストラリアのレッドブル)
- 世界経済のネタ帳のビッグマック価格(スイス1,440円、日本480円など)
- 日本のカップヌードルが味によらず同じ値段であること(日清の公式資料で未確認)
- The Economistの米国・カナダのビッグマック価格が税抜きかどうか(税抜きとみなして州税を加算)
- 海外の150mL缶と日本の169g缶が同じ大きさの缶であること(容器の寸法は海外で未確認)
- カップ麺が米国・カナダで非課税であること(食品一般を非課税とする規定を当てはめた)
- 台湾の平均賃金の、行政院主計総処の原表
編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2026年10月19日の記事より転載させていただきました。








コメント