障がいを乗り越えて前向きに生きる姿をSNSで発信し、多くの人々から支持されていた女性が、生後3カ月の娘を殺害しました。東京都世田谷区で2025年11月に起きた事件の初公判が東京地裁で開かれ、車椅子インフルエンサーとして活動していた内藤沙月被告(29)が起訴内容を認めました。
検察側によると、娘の優愛ちゃんの遺体には、刃物による傷が67カ所もあったといいます。

内藤沙月が所属していた株式会社ココダイバーシティ・エンターテイメントHPより
障がいを乗り越えた母親に何が起きたのか
内藤被告は、生まれつき骨が弱く骨折しやすい「骨形成不全症」を患い、車椅子で生活していました。
それでも積極的に社会に出て、YouTubeなどで日常生活や恋愛について発信していました。障がいがあっても自分らしく生きる姿が注目され、メディアにも取り上げられていました。
出産後は母親としての生活も発信していましたが、その数カ月後、事件は起きました。
検察側は、内藤被告が自宅マンションの浴槽内で優愛ちゃんを包丁で何度も切りつけて殺害したと指摘しました。被告は裁判長から起訴内容に間違いがないか尋ねられ、「ないです」と答えました。
「娘と一緒にいるためには死ぬしかなかった」
事件の背景には、夫婦関係の破綻と親権をめぐる問題があったとされています。
弁護側は、夫との離婚協議が進むなかで、内藤被告が娘の親権を得られないと思い込み、精神的に追い詰められていたと主張しました。
被告人質問では、娘と一緒にいるためには一緒に死ぬしかないと考えたことを説明し、娘を殺害したことへの謝罪を口にしました。
弁護側は行政による適切な支援を受けられなかったとも主張しています。ただし、どのような支援が必要で、実際に何が行われたのかについては、今後の審理で検証する必要があります。
子どもは親の所有物ではない
この事件で考えなければならないのは、親権を失うことへの絶望が、なぜ幼い娘の命を奪う行為につながったのかという問題です。親の事情によって、子どもの生死が決められてよいはずがありません。
親権は子どもを所有する権利ではなく、子どもの利益のために養育し、保護する責任を伴う制度です。離婚によって親権を得られなくても、それが子どもの命を奪う理由にはなりません。
一方、障がいのある親が育児や離婚の過程でどのような困難に直面し、行政や周囲から十分な支援を受けられたのかという問題も、切り離してはなりません。
ただし、障がいそのものと犯罪を結びつけるべきではありません。今回問われているのは、あくまで被告個人の行為と、その背景にある具体的な事情です。
SNSで発信した「命の大切さ」と現実
内藤被告は、障がいがあっても人生を楽しみ、自分らしく生きられることを発信してきました。そうした姿に励まされた人もいたことでしょう。
しかし、SNSに映る前向きな姿と、家庭内で抱える問題が必ずしも一致するとは限りません。インフルエンサーとしての評価や人気が、家庭生活の安定を保証するわけでもありません。
今回の事件は、SNSで語られる理想の人生と、その裏側にある現実との隔たりを浮き彫りにしました。
何より忘れてはならないのは、優愛ちゃんが生後わずか3カ月で命を奪われたという事実です。
被告がどれほど精神的に追い詰められていたとしても、67カ所もの傷を負った娘の苦痛が消えるわけではありません。







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