10年後の世界:資本主義が貧富の差を生み出すという単純な図式化への違和感

この1週間で立て続けに2冊ほど書籍を読み切りました。1つが斎藤幸平氏の『人新世の黙示録』、もう1つが五木寛之氏の『大河の一滴 最終章』です。まるで相関関係がなさそうな2冊の本ですが、共に共通して見えたのは10年後の世界観であります。

まず、五木寛之氏ですが、「まだご存命か」と思った方もいらっしゃるのではないかと思います。私も五木氏の最新刊?とちょっと驚きをもって手にしたのですが、現在94歳でこの本を出したのが93歳の時。日刊ゲンダイに連載の「流されゆく日々」は連載回数1万回を超えるギネス記録を更新し続けているとのこと。その五木氏がその書籍の中でこう述べています。

「90歳を過ぎて、まだ生きていたいのか、と呆れられそうですが、ぼくはできることならもう少し生きて、この国と世界の成り行きを見てみたいと願っています。…ただ、いま、この世界が最終章を迎えつつあるらしいことだけは感じないではいられません。… たとえば自由主義社会、民主主義国家、人間中心の思想、それらのもろもろが大変動するのではないかと感じているのです」と。

戦前から生きていて、北朝鮮の平壌から命からがら帰国し、戦後の喧騒を生き延び、現代社会の便利さを享受する順応さを体得しているのに、読み方によっては最終章的な社会を予感するのはなぜなのでしょうか?氏の人生の想像力を超える何か大きなエネルギーがマグマの塊となっているのでしょうか。

一方の斎藤幸平氏。知る人ぞ知るマルクス研究家ですが、以前からなぜ、サンデージャポンの準レギュラーなのか不思議であります。その氏を著名にしたのが『人新世の資本論』で50万部越えのベストセラーですが、私は読んでいません。たまたまその続編が出たので相当、色眼鏡で読んでみました。(このブログのコメ欄で私の思想の推測をされているケースが見受けられますが残念ながら外しているのが多いようです。人の思想はそんな単純ではありません。よって私がこの書籍を読むからには極左思想だろうと思うのはお門違い。嫌な思想こそ相手の懐に入ってその真意を知ることが大事なのです)

ご記憶にある方もいるかもしれませんが、私が大学の時に勉強した一つのテーマが「計画経済」でそれがなぜ失敗したのかは私なりに答えを出しています。 それに対して斎藤氏も計画経済の失敗は認めるも基本的に現代資本主義の終焉の向こうには新たな形の計画経済を主張しています。

斎藤幸平氏 Wikipediaより

資本主義の終わりを説く人は富裕層と一般民との格差が広がることを前提としています。しかし、この辺の論理構成は私にはひどく違和感があり、資本主義が貧困の差を生み出すという単純な図式化の先入観こそがおかしいと思っています。ただ、今日は書籍の批評をしたいのではなく、氏も次の社会を氏の専門分野から自らの考えを披露している点がポイントです。

五木氏も斎藤氏も懸念の根幹は似ているように思えます。それは社会の変化が人間の変化吸収力を超えている点です。故に歪みがある社会が形成されているのです。その先行きは自我的で急進的な技術の進歩に対して、歩を止めたかあるいは後退すら感じる人間社会とのギャップの拡大です。そのギャップを埋める算段が我々の想像力を超えてきたということだろうと思います。

では我々は無抵抗の中、権力と組織社会の歯車に乗せられ、不満があればフランスのようにデモをして声をあげればよくなるのでしょうか?

私はふと社会のトレンドという歯車に乗らなければどうだろうか、と思うのです。キャッシュレス社会だけどあえてキャッシュオンリーにするとか、ポイ活の代わりに「いつもありがとう、今日はおまけしておくね」という懐かしい人間臭さの社会の再生をめざすとか。デジタル デトックスをしてスマホから解放されるとか。SNS止めて必要な時に電話で話すとか。

私は10年後の世界観、社会観は誰も想像できないと思っています。今はその過渡期であることは事実で、右派的思想やら左派的思想が入り混じり、極端な意見をぶつけ合う0と1しか選択肢がないところにいます。この社会がこなれるのに時間がかかるとすれば、この喧騒から自分をstay awayさせる選択肢を自ら築くことも必要だと思うのです。

デジタルに囚われの身にならず、30年前の生活スタイルを現代風に改善して自らが最も心地よいライフを誰にも教わらず、誰の真似もせず、自分で自分を決めることが大事になってくるのではないでしょうか?別にそれを日常ずっとすることはなく、まるで別荘に行く感じとかretreatするように第二の自分をもつことで救われるような気がします。

この2冊の本を対比させながら読んでみて社会の奥行について改めて考えさせられたと言えそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年10月25日の記事より転載させていただきました。

アバター画像
会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント