「自分が主役」を降りてからが人生の本番

黒坂岳央です。

「人生は一生自分が主人公で、周囲は自分を引き立てる脇役だ!」こういう感覚は誰しも持っているものである。人間は自分の話を聞いてほしいし、自分を評価してほしい。そして自分を特別扱いしてほしいのだ。

若いうちはそれでいい。その承認欲求がエネルギーとなって、自分の可能性を試し、周囲に認められようと必死になるからである。

しかし、中高年になってもその欲求を周囲にぶつけ続けると、人間関係は次第に苦しくなる。そのため、筆者は中高年は、いつまでも人生の主役でいようとしない方がいいと考える。持論を述べたい。

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若い頃は「世界の中心は自分」でもいい

中高年は、「自分が主役!」という発想から卒業した方がいいのか?これは単なる道徳論でいっているわけではない。人的資本の使い方が年齢とともに変化するからだ。

若い頃は、自分自身の能力を伸ばすことに大きな価値がある。勉強や仕事で結果を出すことで、次のチャンスが開かれていく。若さの最大の強みは、自己投資によって得られた能力を長期間にわたって活用できることだ。つまり、若い頃は自分自身の能力を伸ばすことの投資対効果が極めて高いのである。

人的資本力があれば仕事でも学問でもチャンスが与えられ、人との出会いに困ることはない。自分を常に中心人物になるように努力し続けることは報われる。

自分ではなく相手を成功させる

もちろん、中高年でも第一線で活躍している人は素晴らしいと思う。長年にわたって結果を出し続けている人は、まさしく本物と言っていい。

ただし、年齢とともに周囲から期待される役割は変化する。若い頃は自分自身が成果を出すことで評価されるが、中高年になると、周囲の人間に成果を出させる能力がより重要になるのだ。「自分が自分が」と前に出る人より、周囲に花を持たせるプロデューサーになれる人が評価されやすい。

それがもっともわかりやすく出るのが会社の経営者だ。優秀な経営者の仕事は、自分一人が誰よりも優れた営業マンや技術者になることではない。顧客に価値を提供し、社員が活躍できる環境を整え、株主にも利益をもたらすことである。経営者とは、他人を成功させることで自分も成功する仕事なのだ。

社長だけが潤っている会社は「あそこはワンマンで自己中だ」と敬遠されるし、逆に社長が目立たなくても社員を大事にする会社は「あそこは素晴らしい」と評価されることからも分かるだろう。

これは「理想の親」を考えても同じことが言える。素晴らしい親とは、何かの分野で表彰されるとか、仕事で結果を出すという以上に「子供に愛情を注ぎ、本人の人生を花開かせる努力をしている」という点が評価される。

若い頃は自分がどれだけ良い学校に入り、良い仕事に就き、成功できるかを考えていた人も、いざ親になると子供がどれだけ可能性を広げられるかを考えるように変化する。自分自身がそうだ。

子供が勉強で成果を出したり、スポーツで成長したり、本人の夢に向かって努力する。その姿を見ることが自分自身の成功以上に嬉しくなるのだ。

つまり、人生の主役が自分から子供へと移っていくのである。

「主役を降りる」は人生を諦めることではない

ここで誤解してほしくないことがある。主役を降りることは、自分の夢や挑戦を諦めることではない。

中高年になってから新しい事業を始めてもいい。勉強を続けてもいい。趣味に没頭してもいい。何歳になっても自分の人生を楽しむべきである。

ただ、中高年になったら「自分がどれだけ成功したか」という物差しだけで人生を測るのはもったいない。「自分が関わったことで、どれだけ周囲の人が成功できたか」という新しい物差しを持つべきだと思うのだ。そして周囲もそれを評価するように変わる。

顧客や愛する人を成功へと導くことが自分の幸せになることは、自己犠牲ではない。むしろ、自分の喜びと他人の喜びが一致する、非常に合理的な生き方ではないだろうか。

ある程度自分が満たされると、それ以上自分を幸せにする生き方には限界が来る。筆者はすでにそうなっていて、自分がいい思いをするより、「おかげで助かりました」「ありがとう」と言われる方が圧倒的に嬉しいし、そこを目指している。

人生の前半戦は、自分が主役となってどこまで遠くへ行けるかという勝負である。しかし、後半戦は少し違う。自分が関わった人たちを、どこまで遠くへ連れていけるかという勝負に変わるのだ。

いつまでも自分がスポットライトを浴びることに執着する必要はない。自分が育てた人、自分が支えた人が舞台の中央で輝く。その姿を見て、自分自身も幸せを感じられる。

◇

人生の主役を降りることは、人生の敗北ではない。むしろ、それは人生の新しいステージに進むことなのだ。

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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