松本さん、どうも。
私のブログで「派遣村」に言及したところ、驚くほど大きな反響がありました。おもしろいことに、最初は「かわいそうなワーキングプアをいじめる悪い奴」といった反応が多かったのですが、私が説明すると「問題は正社員と派遣の身分差別だ」というコメントが増えてきました。
朝日新聞が世論調査で、「かえって雇用が減るという意見もある」と紹介したうえで派遣禁止への意見を聞いたところ、禁止に「反対」が46%で「賛成」の30%を上回ったそうです。社民党と一緒に製造業の派遣を禁止する法案を出そうとしていた民主党も、最近はいわなくなりました。世の中は、少しずつ変化しているようです。
政治家が愚かなのは今に始まったことではありませんが、深刻なのは派遣村のリーダー湯浅誠氏のような良心的な人々が、いまだに連合と一緒になって厚労省に派遣労働者の住居を求めていることです。派遣労働者を生み出しているのが労組の既得権を守る行政だというメカニズムが見えていなくて、依然として「資本家×労働者」という古い図式で問題をとらえて、「内部留保を労働者に分配しろ」という。
稼ぎを増やさないで、縮んでゆくパイを平等にわけあっても、人々は平等に貧しくなるだけです。おまけに日本は、でたらめな年金制度を放置してきたために、世代間の不公平がOECD諸国でも飛びぬけて大きい。いま生まれる子の税・年金の負担は、われわれの18倍に達すると推定されています。もちろん18倍に増税することは不可能なので、いずれ「徳政令」が発動されることは避けられない。それはおそらくハイパーインフレという方法しかないでしょう。
分配の公平は重要な問題ですが、最大の不公平は資本家と労働者ではなく、終身雇用で高度成長の配当を稼いだ以上に受け取る老人と、不安定雇用のなかで受け取るよりはるかに重い負担を強いられる若者の間にあるのです。これは日比谷公園で500人に炊き出しをしても、何の解決にもならない。派遣村の若者が問題の本質に気づいていないことは、「食い逃げ」できるわれわれにとっては幸いですが、このままでは日本は、あと20年ももたないかもしれません。