悠久の視点で期限付きの数値目標を。 - 菅野敦也

菅野 敦也

先のエントリー“ 経済学者はもっとウェブで発言を ”にて、国内ジャーナリズムの昇華を意図して呼びかける池田先生。 願わくば建設的な、Web上の言論プラットフォームへの専門家の臆することなきご登壇を、私も待ち望むばかりです。

また、耳を傾けてくださる為政家の方がいらっしゃれば、至極幸いに。 未来の市民社会が豊穣でありますよう、記そうと思います。

「 大盤振る舞いの政策の目的は 」


紙面で勢い良く咲き乱れた日本版グリーン・ニューディールの花は散り、今はエコポイントの蕾が妖しい香りを放ち、膨らみつつあるような。 そんな感じを受ける、この頃です。

さて、未曾有の財政支出の先に残るもの。 先の未来像の提示なき大盤振る舞いが繰り返されるなら、巨額の政府債務とマイナスの年金給付が残るのみ、という専門家の論説に頷くほかにありません。 とはいえ、太陽光発電がエネルギーインフラとして機能している社会をイメージできれば、そこに暮らす遠い子孫は、評価してくれるのではないか。 “その判断、選択は、正しかった”と。

民業だけでは気の遠くなる時間を要する太陽光発電インフラ構築事業も、国策としての財政出動が正しく作用すれば比較的短期に、しかも着実に達成できる。 超長期視点における経済上の国益も、明確に数値化できている。 そのように開示された政策ならば、迷わず賛同するところです。

しかしながら、省エネ家電製品や電気自動車の早期購入に対する財政支出はどうなのか。 目先の瞬間的な利を得て、そのツケを後の世代に払わせる行為にならないよう、考えなくてはなりません。 百年に一度の経済危機を免罪符にした目的なき大盤振る舞いは許されず、むしろ、百年に一度のチェンジの好機にできないか、考えてみたいと思います。

「 少子化の原因のひとつは、食糧自給率かも 」

4割に達しない日本の国内食料自給率。 してはいけないと思いつつ、ピークをつけた2006年の日本の人口、約1億2700万人に0.4を掛けた人は、少なくないと思います。 もし仮に、親になろうとする人がそれをした時、無意識に本能的に、出産意欲を減退させているのではないでしょうか。

ワークライフバランスの改善、育児手当のドラスティックな増額で少子化を解決できるという提案や、婚外子の問題を解決する戸籍制度で少子化を克服できるとする提言も具体的で効果的に映るのですが、少子化問題の深層には、案外、食糧自給率が横たわっているのかも知れない、そんなふうにも考えてしまいます。

その推論がある程度正しければ、少子化が顕著になった社会における出生率低下の改善策として、また、言うまでもなく将来の食に対する不安を払拭するためにも、国内食糧自給率を他の先進国並みに向上させるべく、ダイナミックな財政出動を急いでも良いと思います。 食糧ニューディールとでも呼ぶのでしょうか。

折しも日経新聞“日本gene U-29”の論説に従えば、20代の若者は、車は所有ではなく利用に価値がある、と考える質実剛健な賢い世代という内容が記されており、同感するところ。 そう捉えると、太陽光発電や食料自給率など、超長期視点での問題に対する意識が高いはず。 従い、今後の政策の姿は、目先の消費を喚起する大盤振る舞いではなく、問題の本質をきちんと探し当て、悠久の視点で課題解決すべく数値目標を示すものであり、大義名分にかなった政策ならば、老若男女を問わずに集票できると思います。

翻って、しっかり得票できる政策は、期限付きの数値目標が添えられた、超長期視点で社会の価値を生む内容が明示されたもの。 ということになり、少子化問題解決のためにも、そう願うばかりです。

「 棚田という公共事業 」

山間の傾斜地に造成された稲作地、棚田(たなだ)

美しい風景を心に浮かべつつ、構築起源が江戸時代の藩政策であったとすれば、食糧、雇用、環境問題まで見事に解決した当時の公共事業と呼ぶべきか。 電気も重機もない時代の環境下、自然(位置)エネルギーを活かした社会インフラ整備は、まさに芸術的であり、逞しく生き抜いた先賢の叡智と敬服するばかり。

そこに存在したリソースは、豊かな想像力と絶妙なる創造性。 悠久の時間を経て今なお機能しているばかりか、環境観点において調和している点も素晴らしく。 太陽光発電事業の未来視点での評価を考える中、棚田を想起した次第です。

今はウェブを介して思考を繋ぐインフラを手にした私達。 賢いライフスタイルを身につけた若い世代の柔軟な発想が叡智として作用すれば、新たな時代の創出は、十分可能なのだと信じています。

どうしても妙策が生まれなければ、棚田の造成を国策に。 広くはない日本の国土ゆえ、自然と調和する棚田は、食糧自給率の改善に、雇用、環境問題の解決においても期待されるもの。 知的に体力的に優れた若い世代の活躍する、輝く姿も浮かんで参ります。 

外貨を頼もしく稼ぐもの、それまた案外、電気自動車ではなく、棚田で収穫されたブランド米かも知れません。 日本の歴史の文脈を見方に付ける棚田ブランド米など、先人の叡智にあらためて学べる気が致します。

巨額の財政出動が必要であるならば、超長期の視点に立ち、期待する効果に明確な数値目標を掲げることで、責任を伴った新たな時代の政策になるのだと考えました。 今後の政策には是非、悠久の視点で期限付きの数値目標を。 宜しくお願い申し上げます

( ここまでお読みくださり 有難うございます )