日本はEV事業に全力で取り組むべきだ - 小川浩

最近沈思黙考中で、やや情報発信力において、例年になく弱まっている小川です(笑)。

3月は公私ともにばたばた状態で、アウトプットどころかインプットさえままならない状態だったのです。
しかし、それもそろそろ終わりで、来週は月曜からセミナー参加もするし、3月末で年度予算を使い果たした企業達も新たな動きを見せ始めるし、そろそろ心機一転動き始めようとおもいます。

さて、僕がテスラモーターズという電気自動車(EV)ベンチャーに注目し、ことあるごとに触れてきたことをご存じの読者もおられると思います。このテスラがいよいよIPO(新規株式公開)に動き出しています。


テスラは、日本的な強力かつ安全な一個の電池による電力の蓄積ではなく、小型で汎用的な電池を大量に並列配置するという、IT業界出身者である創業チームならではの、ユニークな設計を採用したうえで、超クールなスポーツカーの外観を与えることで商品性を高めてきました。

テスラは当然まだ赤字ですが、それでも今回の彼らのIPOは成功すると見られています。集めた資金は高級セダン開発の投資に充てられるとのことで、今後彼らはポルシェのようなスポーティでありながらラグジュアリーな車メーカーを目指すものと思われます。

ポルシェも完成品を売るだけでなく、スポーツカー開発やレースによって培われた最新技術を他社に供与することで大きな売上をあげており、テスラも同様のビジネスモデルをもって、今後黒字化を目指していくでしょう。

僕はクルマやバイクが大好きです。
彼らは単なる移動手段ではなく、強力なパワーや速度によってエモーショナルな刺激を与えてくれる、ライフパートナーであると僕は思っています。僕がテスラを応援しているのは、エコ的な機能と性能一点張りの他の自動車メーカーの姿勢が、かえってクルマへの魅力を減じており、運転する喜びや所有する愉悦を無視しがちであるからであり、テスラのように、新しい技術、イノベーションはクールでカッコいい、そうあるべきだと考えることこそ、クリエイティブな世界にいる者に必要だと思うからです。

ホンダのハイブリッドCR-Zは予想の10倍の売れ行きだそうです。
たしかにあれはカッコいい。アレが売れるということは、クルマ離れが叫ばれる若者世代も実はいいクルマは売れる、という証明でしょう。いいことです。

しかし、ここでも繰り返していますが、マーケティング的観点ではCR-Zの”なんちゃってハイブリッド”(ホンダファンの方、ごめんなさい)は正しい選択ですが、技術目線&イノベーター目線では、あれはやっぱり単なる妥協と商業主義の産物だと思います。トヨタのプリウスと比べるのは、僕は少々失礼だと思っています。

テスラは10年先を見据えたクルマを作っています。トヨタのハイブリッドならEVへの移行もあっという間でしょう。あとはデザインやコンセプト次第です。海外メーカーがテスラに触発されて、クルマ好きの心を震わせるような刺激的なEVを作り出す前に、今の逆境を超えて、僕はトヨタ(そして他の日本のクルマメーカー)に、世界をあっと言わせるスゴいEVを商用化してほしいと思っています。

クルマは、いまだに世界に通用する日本の基幹産業です。
国家を挙げて、トヨタを応援するべきだと思うし、トヨタ(そしてもちろん他の全メーカー)は、顔のないクルマを作り続けるのではなく、クールなイノベーションに取り組んでほしいと思っています。

コメント

  1. imat3309 より:

    取り組むのはいいのですが、これを輸出産業と捉えるのは、トヨタの今回の事件もあって、危険と考えます。鎖国論者のつもりはありませんが。クリマを基幹産業とする時代を終えるべきです。

  2. advanced_future より:

    ここでは触れられていないだけで議論の前提になっていると思いますが、コメントさせてください。
    トヨタが今、直面しているのは「イノベーションのジレンマ」なのではないでしょうか。
    EVへの移行は、市場全体としてみれば結構なことですが、トヨタにとっては死活問題です。過去の遺産を大量に持っているため、EVしか持っていないベンチャー企業のように身軽にはなれません。アナログ資産(人、モノ)を思うように整理できない電機産業と同じ問題に取り組まねばなりませんし、EVでは競争が激しくなることが予想され、これまで以上に利益を上げることは難しいのが実情です。なので、真っ当に考えれば、HVなどで過去の資産を有効に使いながら(むしろいかにEVに移行させないかで)時間稼ぎをして、その間にどうやってガソリンから電気へのクロスフェードを果たすかを考える、だと思います。
    覇者が燃料電池車になるのかEVになるのか私にはわかりませんが、トヨタにその着地点が見えているのか関心のあるところではありますが、急激なリストラも、急激なEVへのシフトも、トヨタにとっては自己否定のようなものなので、むしろ他の新興企業の成長の芽を潰さぬようにすることの方が、大事な気がします。
    一般論で申し訳ありませんが、電機産業の二の舞にならないといいなと思います。

  3. nonndakureemonn より:

    日本の基幹産業と言ってもピラミッドの底辺は極限のコストダウンで疲弊しきっている。

    守られるのは組立メーカのホンチャン社員だけ。

    今後は「安い部品」を求めて益々海外調達が増える。生き残れるのは組立メーカと資本関係にあるサプライヤーだけだろう。

  4. naru1988 より:

    日本が生き残れる道は、技術革新を絶えず求める事と、その技術を平準化し、他国を取り込みながら、世界と日本の両方について、如何に発展を促していくかではないでしょうか?自動車と言うのは、生活で使用される物の中で、非常に部品点数が多いので、それに伴い基幹産業も幅が広い。メーカーと下請けの両方が、しっかりと利益の享受するように互いに努力しあうことが大切だと思います。電気自動車ベンチャーは、とても良いカンフル剤でもあると思います。外国で認められてから、日本で認められると言うパターンが多いので、テスラモーターズは、その様になってしまうかもしれません。