小林紀子
なぜ食糧をめぐる政策を、経済学だけから論じなければならないのかわかりません。選挙対策と断定するのも疑問です。
私の考える 食料自給率を上げたほうがいい理由は2つです。
1つは、現在の中国を含む世界の食糧輸出国での食糧増産は、地下水の過剰揚水によるものです。ここ数年、米国や中国では帯水層の水位低下が目だっており、中国では、工業用水の利用増加もあいまって、黄河や揚子江の下流では河が干上がることも多いようです。現在のペースでの取水が続けば、石油より先に枯渇するのは水かもしれません。点滴灌漑などの対策を進めても、今後の世界人口増加と、中国とインドの経済力向上に伴う需要増加を考えれば、いずれ食糧価格が上昇するのは間違いないでしょう。耕作放棄地を生産可能な状態にするのには時間が必要です。外国が穀物禁輸措置をしてからでは遅いのです。
(参考サイト)
http://blog.sizen-kankyo.net/blog/2008/06/000329.html
http://www.excite.co.jp/News/china/20090212/Searchina_20090212050.html
2つめは、雇用の受け皿としての国内農業復興の必要性です。現在の自給率では、国内の農地の2.5倍の農地を海外に借りている計算になるようですが、その何割かでも国内に戻せば、若年層や高齢者の雇用が確保できるのではないでしょうか。少子高齢化と市場飽和で国内の成長は望めず、海外市場に頼っても、国内の雇用はうまれません。極端な話、いずれ年金が破綻し、高齢者に自分たちで食べ物を作って食べてもらわなければならない時代がやってくる・・・というのは悲観的すぎるでしょうか?
コメント
年金が破綻すれば、当然生活が苦しくなるので、割高の食品を買っている余裕はなくなると思いますが・・・。
経済的に非効率な政策は、全て生活費に跳ね返ります。
将来に備えて必要なのは保護ではなく、競争による効率化ではないかと思います。
もし、本当に日本が貧しい国になって、自給自足した方が安上がりになれば、政府が何もしなくても勝手に農業を始めますよ。
「食料自給率の向上」自体は手段を選ばなければ実現可能でしょう。農地を全て国が買い上げ、オークション形式で民間企業に払い下げし、農業を企業化すればいいのです。このように農業を産業化すれば、現在の農家による農業の個別経営よりはるかに効率的な農業が実現出来、価格面などでもある程度国際競争力を取り戻すことが出来るでしょう。
しかし、このような政策は政治的には不可能でしょう。現在の日本の農業政策は「農業保護」ではなく「農家保護」になっています。この「農家保護」的な農業政策を破棄しない限り、農業の産業化は出来ませんし、食料自給率の向上も望めないでしょう。
現在の「農家保護」的な農業政策のまま食料自給率を向上させようとすると効率が悪い分野に資金をつぎ込むことになり、日本のGDPを圧迫します。余裕のない現在の日本ではこれは不可能です。「国内農業復興」と書いておられますが、これは「現在の農家の壊滅」なしには実現出来ないのです。
現在の農家を壊滅させ、日本に「産業としての農業」を作り出すというのであれば、それはそれで検討の価値ある意見だと思います。
地域的には農業用水が枯渇しつつある事は事実です。然し英エコノミスト誌で何度も特集し解説されていますが、世界中どの国でも例外なく、農業用の取水量は農民の既得権となっており、しかも無料と言って良い程安いので、使い放題、節水するインセンティブが働かないのです。
日本でも、私の記憶では用水の8割が農業用で、その殆どが水田用です。米の消費量はピーク時の半分位に減ってるのに、農業用水の取水権は全く変わってません。それなのに水道用のダムを造る無駄をやってるのです。料金をコストに見合ったものにすれば、それこそ水を湯水の様に無駄使いする日本の農業も節水に努めるので、少なくとも日本に関しては水不足の心配は無くなります。
>小林紀子
>なぜ食糧をめぐる政策を、経済学だけから論じなければならないのかわかりません。
あなたは「経済学」の認識が間違っている。「経済学」はあなたの言う「資源」や「雇用」の問題も対象にしていますし、消費者の「安心」とか「安全」も同じです。