上海で起業する日本人たち ― 小谷まなぶ

小谷 まなぶ

 最近、特に30代を中心とした日本人起業家が、上海で起業するケースが増えてきた。NHKのテレビドラマで『上海タイフーン』が昨年放映されたことも影響しているのであろうか。このテレビドラマは、30代の日本人女性が、日本の生活に疲れて、金もコネもない状態で、単身上海に来て、起業するストーリーである。


 ドラマのストーリーは、上海に来て苦労を重ねるが、最終的には、大成功を収めるというサクセスストーリーだが、実際に、上海に来て、本当にサクセスストーリーを実現した人は、ほんの一部である。

 ある統計によると、日本企業が、上海で起業して撤退するまでの年数は、平均3.5年であるという話しを聞いたことがある。この数字は、何を根拠にして言っているか分からないが、私は、上海に14年間住んで、周囲の企業を見ていて分かる撤退までの年数も、2~3年が多い。
 
 しかし、今年になって特に上海万博特需を狙った進出なのか、日本からの進出案件が増えている。その中に、90年代にベンチャーブームで沸いた『渋谷ビットバレー』で活躍していたメンバーも上海を目指して起業するケースが出てきた。
 
 私は、仕事柄、上海市政府から企業登記代理という資格を頂いて、現地法人の設立代理業務を行なっている。
 相談者の中には、90年代にIT起業したメンバーの方からも問い合わせもある。

 先日、4月1日にYAHOO ジャパンと中国最大のインターネット会社『アリババグループ』が運営するタオバオとの提携がニュースで流れた。

 私は、今年の1月からアリババジャパンからの委託事業で、アリババ中国貿易講座の講師として日本のアリババユーザーに対して中国貿易についての講座を開いているので、この提携に関するニュースに関しては、特に注目している。

 日本のIT業界における今年最大のニュースは、YAHOO ジャパンと中国のECサイト タオバオとの提携。そして、楽天グループと中国の百度(バイドゥ)との提携による日中間におけるECサイトの連結であると思う。
 

 この提携は、歴史的に考えても大きな出来事で、日中間の流通革命を起こすことになる。2010年の上海万博、IT企業による日中間の流通革命、この大きなファクターが、上海で起業したい日本人に大きな影響を与えていることは、言うまでもない。
 
 上海は、日本から飛行機で2,3時間で来ることができる。また、天候も、日本とほとんど変わらず、上海に住んでいる日本人も10万人近くいると言われ、日本人居住区の古北エリアなどに住めば、日本語だけで生活ができ、日本の物は何でも手に入れることができる。日本人にとって非常に便利な場所である。

 上海の魅力は、もう一つある。それは、金融都市として発展を考えている上海は、上海市内の銀行でオフショア法人口座の開設を認めている。オフショアという制度は、海外から送金された資金に関しては、課税しないという制度である。
 アジア地区では、シンガポールと香港が金融都市として、オフショア法人口座を開設できることは、有名であるが、実は、上海の銀行でもオフショア法人口座の開設可能な銀行がある。

 そう考えれば、上海は、日本から一番近いオフショア法人口座を開設できるエリアであることが言える。

 海外ビジネスを行なう上で、金融上のメリットが出せることが非常に重要になる。このような条件を考えても、益々、日本からの上海で起業をしてみたいというチャレンジャーが増えるのであろう。

 そして、上海の日本人居住区である古北エリアを中心にして、90年代に沸いた渋谷ビットバレーを思い起こし、日本人の起業家達が古北ベンチャービレッジを作ろうとする動きもある。

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