公衆Wi-Fiの「二度目の正直」 - 池田信夫

池田 信夫

ITには「二度目の正直」があります。かつてオラクルがやった「ネットワーク・コンピュータ」はネットワークや端末の性能に限界があってだめだったが、いま「クラウド・コンピューティング」として成功しています。同じように、ソフトバンク・マイクロソフトの「スピードネット」や真野さんがかつてやった公衆Wi-Fiも、海外ではBoingoFONなどがまだやっています。


特に総務省の「原口ビジョン2」で「ホワイトスペース等新たな電波の有効利用により、2020年時点で新たに50兆円規模の電波関連市場を創出」と明記されたことは画期的です。ホワイトスペースは全国平均で200MHz以上あり、これをテレビとの干渉に配慮した802.11afに使えば、数十Mbpsの公衆Wi-Fiが可能になるでしょう。

LTEやWiMAXは、しょせん携帯電話の延長上のネットワークです。WiMAXも本来はWi-Fiの公衆網むけ規格として開発されたのですが、いつのまにかpropriatryな規格に化けてしまいました。キャリアが品質を保証するという点ではそれもしょうがないのでしょうが、「品質は適当でいいからどこでも安くつながるWi-Fiがほしい」というユーザーの要望にこたえる通信業者が日本にはない。ライブドアがまだやっていますが、これもあの事件で首都圏に限定されてしまいました。

これから日本でもホワイトスペースが開放されれば、公衆Wi-Fiは有望なビジネスです。それは無線の世界にもインターネット革命をもたらし、バカ高い携帯料金を打破する「破壊的イノベーション」となり、低コストの通信の必要なアジアにも輸出できる可能性があります。真野さんは、もう一度チャレンジする気はありませんか?

コメント

  1. MIC より:

    池田さん ご指名なのでコメントします。
    (アゴラを私信書簡の交換場にする訳では有りませんが….皆さんご容赦を)
     Wi-Fiによる通信事業は、ビジネスモデルが、私のなかでは描けません。 私がIEEE802.11で始めた,Fast Initial Authentication の標準化は、新しいWi-Fiの成長分野だと思っているので、当面は技術面でWi-Fiの利用促進などに寄与していくつもりです。
     Wi-Fiの最大のイノベーションは、ISM(Industry Science Medical)バンドという本来通信に使わない(特に、2.45GHzは、水分子の固有振動数のため、電子レンジが使っている)周波数を使った事です。この結果、世界のほとんどの地域で、同じ周波数が使えました。
    また、電子レンジなどの機器との共存ですから、占有できるものではなく、免許局とならず、いわゆるコモンズとなりました。
     一方、LTEにしてもWiMAXにしても、基本は周波数帯域を占有することが前提で、他の雑多の電波利用からの干渉に対する耐性は、そもそも考慮されていませんし、このため免許局となります。
     このように、元々電波の性質も使い方も違うので、Wi-FiはLTEやWiMAXと対抗するものではなく、補完共存するものでしょう。
     また、Wi-Fiは、所詮超マイクロセルですから、エリアを埋め尽くすのは、とても大変です。(MISの時の試算では、日本でPHS相当のエリアを確保するには、20~30万局が必要でした。) そして、MIS、Live doorやボストン、ベイエリアなどいろいろなところで、都市全部をWi-Fi化という挑戦はあっても、結局はだれも十分な投資が出来ませんでした。
     一方、ローミングサービスによりカバーエリアの確保は、トリプレットゲートウェイやWi2という若い企業が、頑張っていて堅調に加入者を増やしています。