ソフトバンクは「坂本龍馬」ではない - 池田信夫

2010年05月12日 15:27

いろいろな噂や憶測の乱れ飛んだiPadのSIMロック問題ですが、結局、日本では3GモデルはソフトバンクのSIMロックつきだけが発売され、アップルからはWi-Fiモデルだけが発売されることになったようです。日本だけが「全世界でSIMロックなしで発売する」というアップルの方針の例外になったわけです。

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これ自体はアップルのビジネス上の判断だから、どうこういう筋合いはない。おそらくソフトバンクがかなり大量の販売コミットメントをしたのでしょう。SIMロックを製品が出るまで知らなかったらしいNTTドコモも、おそまつです。しかし最大の被害者は、ユーザーです。松本徹三さんは「アゴラ」でこう主張しています:

今回のSIMロック議論のベースは、「海外での高いローミングコストを回避したい」という人と、「ドコモのネットワークでiPhoneを使いたい」という人の不満が出発点になっているということです。こういう人達は、数としては比較的少なく、日本の全顧客の2-3%程度と思われます

しかしiPadをドコモで使いたいという顧客は「2-3%程度」ではないでしょう。ソフトバンクはドコモよりカバーエリアが狭くつながりにくいので、同じ端末価格と通信料金でドコモからもiPadが出たら、ドコモを選ぶユーザーのほうが多いと思われます(少なくとも私はドコモを選びます)。

「SIMロックをなくしても他の機能は互換性がない」というソフトバンクの主張は、iPadには当てはまらない。他の国ではSIMロックなしで動く設計になっており、アプリケーションはすべてソフトウェアなので、ハードウェアを替えても使えるからです。

もちろんソフトバンクの料金のほうが安ければ、競争が起こるでしょう。このように同じ土俵の上で価格やサービスを競うのが公正競争というものです。NTTについては「構造分離」や「アンバンドリング」を主張し、インフラの開放を求めるソフトバンクが、SIMロックについては強硬に垂直統合を擁護するのは変だなと思っていたら、こういうことだったわけですね。

ソフトバンクが、自社の唯一の看板商品であるiPhone/iPadを守りたいのは当然だし、私企業が既得権を主張するのも自由です。しかし、それを「天下国家のため」と称して政策論に持ち込むのは混乱のもとです。この調子では「アクセス回線会社」も、「自前でアクセス系を引く金がないからNTTのインフラにただ乗りしたいのだろう」といわれてもしょうがない。ましてそういう話を坂本龍馬にたとえるのは、龍馬に失礼です。

池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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