英語の早期教育を進めるべきだ - 小田切尚登

2010年05月25日 11:01

良く知られたジョークにこういうのがあります。

「いくつもの言葉を話せる人を何と呼びますか?」
「ポリグロット(多言語使用者)です」
「では一ヶ国語しかしゃべれない人を何と言いますか?」
「??????」
「アメリカン(笑)」

母国語が英語でかつ世界最強の国家に住んでいるアメリカ人。彼らが外国語を習得しようというインセンティブを持ちにくいのも当然です。しかし、もうひとつの「アメリカン」である日本人にはそんな言い訳は通用しません。英語がますます「世界語」としての地位を確立しつつある今、何とかしないと取り残される恐れがあります。そこで早期教育によって日本人の英語力を向上させるべき、というのが私の意見です。


しかし、日本ではそれに反対する意見が意外に根強いのです。以下、英語の早期教育に否定的な代表的な三つの意見と、それに対する私の反論を書いてみます。

1)外国語を早い時期、例えば小学生時代から学ぶと、言語能力に悪影響が出る。

早期の外国語の習得が言語能力に悪影響を与えるかどうか。これについては、実際の例をみて判断すべきだと思います。例えばシンガポール。シンガポールでは共通語としての英語と母国語(中国語、マレー語、タミール語)の二ヶ国語の習得が義務付けられています。それを達成するために二カ国教育は幼稚園からスタートします。典型的には、自宅では母国語、学校では英語、ということになりますが、実際には三ヶ国語以上習得する人も多いです。

シンガポール人の英語力の素晴らしさは多くの人が実感していると思います。IEA Progress in International Reading Literacy Studyというテストは各国の十歳児の英語の読解力を比較・検討したものですが、ここでもシンガポールの子供は英語を母国語にする国々の子供におとらぬ素晴らしい成績をあげています。

問題は、国民全員をバイリンガルに育て上げようとするこのような教育が、同国民の言語力に悪影響を与えているかどうか、ということです。私に彼らの中国語等の能力は判断できませんが、母国語として家庭で常にしゃべり、学校でもバッチリ勉強するのですから、十分な力があるとみて良いのではないでしょうか。むしろ、全く出自の異なる複数の言語に幼少期からふれることで、言語のみならず他の学習にもプラスになっている、と考えるのが普通でしょう。

2)外国語が下手でも日本人は立派にやってきたし、やっていける。

日本は「ものづくり大国」と呼ばれてきました。日本のメーカーには「匠の技」があり、良いものを作っていれば黙っていても海外から製品を買いに来る、と言えるような状況にありました。それはそれで素晴らしいことであり、「外国語なんていらない」という発想が生まれるのも無理がない面があります。しかし「黙って良いものを作ってさえいればよい」という時代は、残念ながら終わりました。昨今、海外市場でビジネスを展開して成功するには、それぞれの市場で法律、会計、税金、政治・・・など様々な点に関して確実に対応する必要があります。そういうことがモノづくり自体にも劣らず重要なことになっています。そして、それに必要なインフラは「英語」です。「日本企業」でも外人をトップに迎えた日産やソニーはもちろん、楽天やユニクロなどでも英語を社内共通語にする動きが進んでいますが、それも当然と言えます。

3)英語が必要なのは日本国民の一部だけなので、それ以外の一般人は英語を習う必要がない。

日本はいわゆる「愚民思想」とは無縁の国でした。江戸時代には全国に15,000もの寺子屋があり、身分や男女の別なく「読み書きそろばん」をならっていました。寺子屋の中心科目は論語をはじめとする漢文(中国語)の読解でした。おかげで江戸時代から明治時代にかけて書店には当たり前のように中国語の書籍が並んでいましたし、ちょっと心得がある人でしたら興が乗れば漢詩の一つや二つをさらっと書いたものです。これがヨーロッパ人でしたら「鎖国時代に、庶民に中国語で朱子学を教えても意味がない、武士などのエリートだけが勉強すれば良い」と考えるところでしょう。しかし我が国では「ヤクザの親分や農民までもが漢文を学んだ」のです(「漢文の素養」加藤徹著より)。このことが日本の経済・文化の発展に大いに寄与したことは疑いないところです。

我々にとっての英語習得の有効性は江戸時代の漢文とは比べ物にならないほど高いです。インターネットの情報の九割が英語で書かれているため、英語が読めれば、仕事や学業をはじめ、およそありとあらゆる事柄について世界の最先端の情報を得ることができます。こんな便利な道具をエリートだけのものにするのは間違っていると思います。

ともあれ、今の英語教育で問題ないと思っている人はほとんどいないと思います。早期教育がダメ、という方々、ではどういう英語教育が良いのか。ぜひそこを教えて頂きたい。

(小田切尚登)

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