AAPL > MSFT なう、そしてそれが示す教訓 - 小飼 弾

2010年05月27日 06:30

ついにその日が来た。

New King of Technology – Apple Overtakes Microsoft – NYTimes.com

Apple, the maker of iPods, iPhones and iPads, overtook Microsoft, the computer software giant, on Wednesday to become the world’s most valuable technology company.

NYTの記事は市場が開いている間のものだが、終値でも時価総額はAAPLが$222.07B、MSFTが$219.18Bで、アップルがマイクロソフトを抜いて世界一価値のあるテクノロジー企業となった。全企業を通しても、上にいるのはエクソン・モービルだけだ。

明日にはiPadが日本を含む米国外でも販売開始され、そして時期iPhoneがすぐ後に控えているのに対し、マイクロソフトにはこれに匹敵する材料がないことから見ても、これは「瞬間風速」ではなく今後しばらく続く状態だと思われる。

1997年に1億5000ドルの出資をマイクロソフトに仰いだ左前の状態から、アップルはどうやって左うちわの状態に持って来たのだろう。それを知るには、同社が本当に売って来たのは何だったのかを考えてみる必要がある。

製品としては、同社は Mac、iPod、iPhone、そしてiPadを売っている。

しかし我々が買っているのは、これらの製品そのものでは実はない。

自由という名の苦痛の軽減なのだ。

iPod と iTunes Store は、「どこから音楽を買うというか」という悩みを減らした。

iPhone と App Store は、「どうやったらウイルス感染なしにアプリケーションをインストールできるか」という悩みをなくした。

そしてiPadは、キーボードとマウスという、これまで「どうやってコンピューターに自分にやりたいことを伝えるか」において「必要悪」とされていたものからユーザーを解放した。

これらの製品が提供しているのは、「なんでもできてしまう自由(free)」という苦痛の低減(pain-free)なのである。

自由というのは実はガードレールのない山道を車で走っているようなものである。ドライバーはどの方向にハンドルを切ってもいい自由は確かにあるのだけれども、「自由なハンドル操作」のほとんどは、崖の下に車ごと転落するという結果を招く。可能な選択肢に比べ、受け入れ可能な選択肢というのはずっと狭いのだ。

もちろん狭いとはいえ、受け入れ可能な選択肢も一つというわけではない。Appleが提示する選択肢というのは、「理想」と比べたら狭すぎるのは確かだ。私はApp Storeには「アダルト」コーナーがあって然るべきだと考えているし、マウスに付けるボタンは一つでは少なすぎるとも感じている。

とはいえマウスに付けるボタンに見られるように、Appleが「フェアウェイ」を必要以上に狭く設定するのは今に始まった事ではないし、そして昨今ではMagic MouseやMacBookのトラックパッドに見られるように、Macでも「右クリック」できるようになっている。

同社が賢明なのは、”iProducts”においてフェアウェイを厳しく設定する一方、Macにおけるフェアウェイはむしろ拡張していること。自由というのは試行錯誤段階においてこそ価値があるので、”iProducts”の開発機でもあるMacは、Appleが想定していないような用途(これも英語では application だ)も受け付けるようにしておかなければならない。Intel化された今ではWindowsやUbuntuをインストールすることすら可能であり、その意味においては他のPCよりも自由であるとすら言えなくもない。Macは「インターネットが死ぬ日」に登場する「生み出す力」を充分にもっているのは、昨今の開発者集会はMacBookだらけなことからも伺える。

しかし、一旦「なにがいいか」はっきりしてしまえば残りの選択肢はばっさり切った方が苦痛も減り、それが価値となる。

「自由至上主義者」は、もう少し自由に伴う苦痛というものを自覚すべきだ。

これは私の意見というより市場の声でもある。AppleがMicrosoftを時価総額で抜く前に、Googleを抜いているのだから。

Dan the Man with too Many Apple Products

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