セレンディピティは起業家にとって、最も重要なセンス - 小川浩( @ogawakazuhiro )

米国時間の5月26日、AppleがついにMicrosoftの株価を抜きました。
OSとOfficeスイートに依存し続けるMicrosoftに比べて、AppleはMac、iPod、iPhone、iPadと、次々世界を変えるような商品を生み続け、自らを変革させ続けています。

話はちょっと変わりますが、皆さんはセレンディピティという言葉を知っていますよね?

セレンディピティとは、簡単にいうと、偶然の出来事から何かを発見をする「能力」のことで、ひらめきやアイデアを幸運をつかみ取る力のことです。通常の洞察力、というものとは若干ニュアンスが違うのは、セレンディピティは、例えば金を探しているときにダイヤモンドを見つけてしまったり、石油を掘っていたら温泉が出た、というように、もともと欲しかったものとは異なる新たな可能性を見つけ、かつそれをモノにする力のことです。

例えば、米国Twitter社は、もともとTwitterとは全く違うサービスを事業にしていましたが、社内で誰かが遊びで作ったショートメッセージの交換ツールが意外なほど中毒性を持っていることに気づき(=ひらめき、アイデア)、そのツールを事業の中心にすることを決意しました(=セレンディピティ)。それがいまのTwitterです。

また、薬でいえば、ファイザーのバイアグラはもともと心臓疾患に対する処方薬として研究開発されていたものですが、実証実験中に回春効果があることが分かってきたため、方向性を変えて売り出したところ大ブレイクしました。


AppleのiPhoneやiPadも、セレンディピティの成果では、と思います。
iPodの売れ行きが鈍化していくことについての対策を考えていく中で、通話やネット利用機能の組込みを思いつき、それがiPhoneという画期的なスマートフォンへと続いたのだろうし、iPadもまた、Macの高級機としてのイメージを落とさずに、ネットブックが席巻する低価格パソコン市場に進出するにはどうしたらよいか、と考えていくうちに生まれたアイデアなのかもしれません。

つまり、我々はみな、それぞれいろんなことにチャレンジしながら、夢を追っています。しかし、その夢にだけこだわるのではなく、その努力の過程でみつけた、もともとの夢とは異なるチャンスに可能性を見いだすことも成功の道なのかもしれません。
僕たちも、一つの夢に向かって事業を行っているわけですが、それにこだわらない柔軟な姿勢を失わず、セレンディピティを発揮して、より大きな可能性を掴んでみたいと思っています。

起業家は、もともとの起業アイデアに固執しがちですが、やはり柔軟な姿勢と新しいアイデアへの乗換を良しとする、アタマの柔らかさは必要です。

友人のネットサービスベンチャーの社長は、こういいます。
「自分は会社の株を25%ほどしかもっていないマイナーシェアホルダーに過ぎないが、株式を抑えることで会社を所有するという考え方自体が20世紀的だと思う。スティーブ・ジョブズだってAppleの株式保有率ではたいしたことはないが、彼はアイデアと器量でAppleを”所有”しているじゃないか」と。

僕もこの意見に賛成です。
僕自身も自分が経営する会社の株をほとんど持っていません。自分が起業した会社であるのに、です。
しかし、上述の友人と同じく、起業家は株式ではなく、情熱と努力と、セレンディピティを含む自らの能力をもって会社にとって欠かせない存在になればいいのです。