NTT完全民営化の提案 - 池田信夫

2010年06月11日 15:05

ソフトバンクの提案に私が「反対しているだけ」といわれるのも心外なので、6年前に山田肇氏と一緒に提案したNTTの「構造分離」案を紹介しておきましょう。これは簡単にいうと、図のようにNTT東西の電話交換機と余剰人員を国営の「ユニバーサルサービス会社」に移し、銅線を民営のループ会社に移すものです。

ntt


この目的はNTT法を廃止するとともに、ローカルループの公正接続を担保し、もう寿命のきた交換機と要員を「清算会社」に移し、IPへの移行を促進しようというものです。NTTの電話網の資産はすべて国営のユニバーサル会社に譲渡し、同時にNTT株式のうち政府保有分(33.7%)を減資して、NTTは100%民間の企業になります。

この案のメリットは、高コストの電話網と余剰人員を整理し、NTTの経営を効率化するとともに、特殊会社による裁量的な規制を廃止して、グローバル展開などの迅速な経営を可能にすることです。インフラが銅線か光かはどうでもよく、ユーザーが光を望めば光が普及するだろうし、銅線でいいと思うユーザーはそれでかまわない。電力線をみてもわかるように、銅線の寿命は半永久的です。

ただし交換機はもう部品がなくなって修理もままならず、早急に廃止する必要があります。ここにぶら下がる余剰人員をドコモなどからの赤字補填で延命していると、いつまでも合理化が進まないので、「清算会社」に移すのです。この会社は最初、国鉄にならって「電話清算事業団」と名づけたのですが、NTTの人々の抵抗が強いので、ユニバーサルサービス会社としました。

この案はNTTの経営陣にも労組にも検討されたのですが、「時期尚早」ということで見送られました。しかしNTTも最近、「今年秋にIPへの全面移行の計画を発表する」と表明しました。これを徐々に赤字補填しながら進めるのではなく、電話網を切り離して迅速にIP化を進めてはどうでしょうか。アメリカでは、Verizonが電話網を地方の電話会社に売却しました。

通信業界で大事なのは、インフラ整備ではなくサービス競争です。特に成熟した国内市場の競争よりも、アジアの新興国でのグローバル展開が重要です。政府がNTTのサービスをいちいち認可し、競合他社がその料金をめぐってロビー活動を展開するような状態では、日本の通信キャリアもメーカーも中国に負けます(すでにファーウェイに大きく遅れています)。グローバル競争に勝ち抜くために、通信業界を規制から解放し、競争を促進することが重要です。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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