ハイブリッドだからガラパゴス化するのか - 大西宏

2010年06月14日 13:09

世界は電気自動車の開発をめざしており、ハイブリッド車を主軸に置く日本の自動車メーカーは、やがて携帯電話のようにガラパゴス化するということをまことしやかに言う人がいますが、ほんとうでしょうか。日曜日のテレビでもそう解説していた人がいました。


しかし携帯と自動車とは根本的に違うという気がします。一番の違いは、マーケティングの主導権をどこが握ってきたかです。第二は、海外でのローカル化にどれだけ取り組んできたかです。

携帯は、日本ではNTTドコモの寡占市場であり、携帯メーカーはキャリアのマーケティングの傘の元に、機能開発を行ってきたというのが現実でしょう。
しかも、国内市場が急成長したために、競争が激しく、自らリスクを負わなければならない海外での競争については積極的ではなかったというのがあったと思います。だから海外のローカル市場にあわせた製品開発やマーケティングを展開することも、インフラを握るキャリアも海外にでませんでした。

だから国内市場に向け、開発に時間もかかり、コストも高くつく製品開発を行い、ワンセグが典型でしょうが、海外ではニーズのない機能開発競争でやってきたために、海外では売れそうにない携帯になってしまいました。だから、競争に敗れ、海外シェアがどんどん落ち、ガラパゴスだといわれるようになりました。

一方の自動車は、各社が自らマーケティングを行ってきました。海外でも各社が独自に販売網をつくり、海外の自動車メーカーと競い合いながら売ってきました。貿易摩擦が発生した時期もありました。それで日本車の締め出しを狙った規制もくわえられたこともありましたが、それらもクリアし、現地化を進めてきたという歴史があります。

製造コストだけを考えれば、米国に工場を置くことはからなずしも有利ではなくとも、現地工場を配置してきたために、トヨタのリコール問題が起こったときも、現地でトヨタ擁護の動きが出て、全米のトヨタバッシングの大合唱に歯止めがかかりました。

しかも、ハイブリッド車は現実に売れているけれど、電気自動車はまだ実験的な段階でしかなく、2010年のエコカーの世界の販売台数予測では、ハイブリッド車が64万台、電気自動車が2万台でしかありません。

電気自動車が市場性を持つためのハードルは、自動車そのものよりも、二次電池の性能と価格であり、また電源を供給するインフラがどれだけ整うかです。それがクリアされない限り、電気自動車は、特殊でニッチな需要に支えられた状態から脱することはできません。

それもやがてクリアされるでしょうが、携帯市場が変化したほどの速度では進まないと考えられます。そこにはジレンマがあるからです。

電気自動車を普及させるためには、電気充電のインフラを整えなければなりません。しかし、電気充電のインフラ、つまり充電スタンドを拡充するためには、その投資が回収できる電気自動車の普及が前提となってきます。このジレンマを解消するのは、市場に任せている限り、そう簡単ではなく、一挙には進みません。
法的な強制、あるいは法的にインセンティグをつくれば、加速できるかもしれませんが現実的ではありません。
充電時間は、すでに、電池容量の50%充電が3分で可能な技術が発表されていましたが、めったに利用されない充電スタンドを誰が投資してつくるかです。

電池のほうもそう簡単ではありません。なぜなら、電池の場合、半導体のような集積回路におけるトランジスタの集積密度は、18~24か月ごとに倍になるというムーアの法則は存在しないからです。

それでも、電池性能の発展や、充電のインフラでどのようなイノベーションが起こってくるかは誰にも予測できないことです。
リーダー企業は、現実の市場でさらに売れるために技術改良を加えて行きますが、突然のイノベーションで足元が救われるということもあります。いわゆるイノベーションのジレンマです。

それから考えると、電気自動車で注目されている米国のテスラ社に約45億円の出資を行い、電気自動車のイノベーションを取り込むという戦略をとったトヨタはなかなか巧みです。ステラ社との共同開発を進めるとともに、そのステラ社の車の製造を、GMの撤退で閉鎖した旧合弁工場「NUMMI(ヌーミー)」の跡地を使うというのも、カリフォルニア州との関係改善になりますから一石二鳥ということでしょうか。

携帯が海外対応できなかった原因を、すべてにあてはめて考えるのは、あまりにも乱暴な議論だと感じます。それは日本の独自技術は、すべてガラパゴス化の危険があり、海外の開発と横並び競争をしろと言っているに等しいのではないでしょうか。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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