なぜ増税は消費税でなければいけないのか? - 藤沢数希

2010年06月17日 01:16

ようやく民主党政権も財政再建の重要性を認識し、消費税の増税を議論しはじめた。筆者も日本は消費税率を上げるべきであると考えており、その点に関しては民主党政権と一致する。日本の深刻な財政赤字は、確かに政府部門のムダもあるが、大きな要因は単純に社会保障費に対して税収が少なすぎることである。とりわけ日本の消費税率は5%で、これは諸外国に比較して極端に低い。しかし、税金は消費税の他にも所得税もあれば法人税もあるし相続税もある。そこで今回はなぜ数ある税金の中で消費税を上げなければいけないのか、その理由を整理してみたい。


消費税は景気に左右されずに安定している

2008年の金融危機では日本の多くの大企業が大幅な減益を余儀なくされた。その結果、法人税収は大きく下ブレした。下のリンクを見てもらえばわかるが、法人税や所得税は景気に大きく依存する一方で、消費税は非常に安定している。

主要税目の税収(一般会計分)の推移、財務省
主要税目の税収(一般会計分)の推移、財務省

医療費や年金、失業保険などの社会保障費は景気が悪くなったからといって減額するわけにはいかないのだから、当然だが安定している税源が好ましい。この点からも国の税収の中心を消費税にするべきなのである。

消費税は相互チェックが働くので脱税しにくい

消費税とは付加価値税である。そのことをまず説明しよう。GDPの説明でもよく使われるパン屋の場合を考えてみよう。農家が土地と太陽から小麦を作りそれを100万円で製粉会社に売った。消費税率が5%なら、この場合、製粉会社が農家に払う消費税は5万円である。次に製粉会社はこの小麦から小麦粉を作りそれを150万円でパン屋に売ったとする。この場合、パン屋が払う消費税は150万円x5%で7万5千円だが、製粉会社は小麦を農家から仕入れるときにすでに5万円の消費税を払っているので2万5千円しか消費税を納めなくていいのである。これはちょうど製粉会社が産み出した付加価値に消費税率を掛けたものと同じになる。パン屋は150万円で仕入れた小麦粉から200万円分のパンを作り、それを売れば、消費者は合計で200万円x5%で10万円の消費税を払うことになる。しかし、パン屋はすでに7万5千円の消費税を製粉会社に払っているので、結局2万5千円しか消費税を納めなくていいことになる。

小麦農家が納める消費税は5万円、製粉会社が納める消費税は2万5千円、そして、パン屋が納める消費税は2万5千円。合計で10万円。これはパンが産み出したGDPに消費税率を掛けたものに等しい。しかし、ここにどういう利点があるのだろか。もう一度よく考えてみよう。製粉会社は納める消費税を減らすためには小麦農家からいくらで原材料を仕入れたのか記録しないといけない。同様に、パン屋は製粉会社から小麦粉をいくらで仕入れたか記録しないといけない。税金をごまかすのは基本的にはふたつの方法しかなくて、それは売上を減らすか、経費を増やすかである。しかし、この場合、小麦農家が売上をちょっと抜いて申告すると、製粉会社の仕入値が減ることになり、製粉会社が余分に消費税を払うことになる。それでは製粉会社が怒ってしまう。小麦農家が単独で売上をごまかせば、製粉会社の帳簿と矛盾が生じる。あらゆる事業がさまざまな取引先を必要としており、世の中の経済活動が相互につながっているので、消費税の場合、誰かが税金をごまかしても税務署が業者間の帳簿を調べれば簡単にわかってしまうのだ。このように自然と強力な納税の相互監視が働くのが消費税のいいところなのである。

消費税は地下経済からもある程度徴税できる

世の中には売春や麻薬など、法律上は禁止されていてもかなり大きな経済活動が行われている市場もある。このような違法行為は当然だが税務署に申告されることはなく、また、暴力団の資金源になっているといわれている。違法でなくても、パチンコ屋や風俗店のように不特定多数の客が利用する現金商売の業種では、税金の捕捉が難しい。筆者のように100%収入が捕捉され、ごっそりと税金をとられているサラリーマンからすると、このような状況は非常に不公平感が強い。

しかし、消費税ならこういった地下経済からもある程度徴税することが可能である。理由は単純で、違法なビジネスで稼いだお金も、それらが使われる時には消費税がかかるからである。売春婦や麻薬の売人もアパートを借りるし、レストランで食事もすれば、ブランド物のバッグを買ったりする。その時に消費税を取れるのである。

消費税は個人のプライバシーを守る

所得税や相続税は、課税の際に国家権力が個人の収入や財産を調べる必要がある。その点、消費税なら業者がきっちりと帳簿をつけて納税すればいいだけなので、個人は収入や財産という非常に重要なプライバシーを国家から守ることができる。この点を強調するなら、究極的には所得税も相続税も法人税も廃止して、消費税だけにすることが好ましい。

筆者は、日本の大きな財政赤字と、日本の金融資産の多くが高齢者に偏在していることを考えると、相続税をしっかり取ることは財政規律が確立するまでの間は避けられないだろうと考えているが、やはり、国家権力が個人の財産を調べるという行為にはかなり抵抗があるのも事実である。現在は、やや過激な意見のように聞こえるが、将来的には税金は消費税に一本化することも考えていいのではないか。

以上の考察から明らかなように、増税するなら消費税しかありえないというのは多くの財政学者のコンセンサスになっているのである。

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