変じゃないか。なぜ、消費税だけ議論されるのだろう - 大西宏

2010年07月05日 14:06

消費税を上げる、そのための議論を始めるという話がずいぶん盛んです。日本の財政赤字どころか、財政不足を補うためには、消費税をあげないとやっていけないということが言われています。
しかし、私のような素人から見ても、消費税だけを議論するというのは果たして正しい議論なのかと疑問に思えてなりません。不自然さを感じるのです。


このままでは財政が破綻するために何かの手を打たないといけないということは理解できるにしても、ただ、日本が諸諸国と比較して消費税率が低いから消費税率をあげようというのは、あまりにも乱暴な議論であり、しかもそれは正しくありません。

消費税率だけがクローズアップされ、日本は消費税が低いと、マスコミでもよく紹介されていますが、ほんとうでしょうか。

図は、財務省が発表している2007年度の国税と地方税を合わせた先進6ヵ国の税収の国際比較です。これを見ると、日本よりも、消費税による税収の比率の低い国があります。それはアメリカです。まさか、アメリカが特殊だということにはならないでしょう。そのことはほとんど、伝えられていないのではないかという疑問がまず浮かんできます。
おそらくアメリカは、消費税が州や市で徴収し、税率も異なっているので、伝えられていないのかも知れません。

所得・消費・資産等の税収構成比の国際比較(国税+地方税)【財務省】
016

このグラフを比較して誰もが分かるのは、日本は法人税が、これらの国と比較してもっとも高く、個人所得課税が、フランスについで低いことです。しかしフランスの場合は、個人所得課税は低いものの、資産課税が高くなっています。日本の税収構造は、このグラフを見る限り、かなり特殊だといえます。

もうすこし詳しく見ると、国民所得に占める個人所得税を比較すると、日本は地方税を合わせ、7.2%です。しかし、アメリカは13.1%、イギリス13.9%、ドイツ12.1%、フランス10.0%と日本は、格別に安いことがわかります。
個人所得課税の国際比較(未定稿)-財務省

税収は、国や地方に個人や企業が支払う直接税と、消費税や、たばこ税、酒税、ガソリン税、自動車重量税などを含めた間接税に分類されます。その直間比率で比べても、日本は、国税と地方税をあわせて、間接税の比率は28%であり、これはイギリスの40%、ドイツの48%、フランスの47%よりは低いことは間違いありません。しかしアメリカは22%と日本よりも低くなっています。しかも、直接税が経済の悪化で減少したことも関係して、間接税の比率が再び上昇してきており、直近では32%を超えようとしています。

問題にしなければならない重要なことは、消費税率をあげるということは、さらに間接税の比率があがるということですが、それは税金を簡単に取りやすいということであって、本当にいいカタチで税収増になるのかということです。
どの政党であっても、成長戦略が必要だというのは一致していると思うのですが、では、確かに消費税をあげると、一時的には税収は増えますが、GDPが伸びたときに、それで税収が増えるのかという疑問が湧いてきます。

おそらく成長戦略が必要だというのは誰でも、またどの政党でもコンセンサスが得られていると思うのですが、間接税の場合は、モノやサービスが購入された分だけ得られるので、GDPが伸び率を超えて増えることは想定できません。経済が伸びても、税収として増加する効果はあまり期待できないのです。
この点も議論しておかないと、経済はよくなった、しかし税収はさほど増えなかったということだってありえるのです。

さらに、視点を変えましょう。なぜ消費税をあげるのかということですが、とくに高齢化の進行で、医療費の増加が問題にされています。しかし、これも変な話で、そもそも、ほんとうに国の経済規模に見合った医療費を負担しているのかということも議論されなければなりません。
医療費のGDPに占める社会負担の比率を見ると、トップはなんとアメリカで、GDP比で16%にもなっています。それと比べると、日本は22位で、8.1%に過ぎず、米国のほぼ半分です。
公的支出のGDP比でも、アメリカは7.4%、日本は6.6%%で、国の医療保障が少ないと言われているアメリカよりも負担率は低いのです。
日本は、先進国ではかなり低く、医療費をさらに抑えてしまったために、医療崩壊が起こってきたのも頷ける状況ではないでしょうか。
医療費の負担が経済規模の割に少なく、それで医療費が問題にされるのは、ちょっと国民の合意を得るのには無理を感じます。
OECD諸国の医療費対GDP比率(2008年)-社会実情データ図録

やはり戻ってくるのは、この国をどうしたいのかという国家ビジョンです。そのもとに財政のあり方、また税収をどうするのかという議論が必要であり、財政がもたないから、医療費や社会福祉費が増えるから、消費税だというのは、あまりにも稚拙な話ではないでしょうか。

菅総理が消費税アップを唐突に持ち出したとたんに、支持率が急下降したようですが、今のままでは、あがっても仕方ないと思っている人が多くとも、しかたないというのと、それが納得できるというのとは大いに違います。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑