閉塞感を打ち破る政策を実行できない限り政治混乱は続く - 大西 宏

2010年07月12日 12:57

民主党が参院選で過半数を割り、民主党政権に政権が誕生して、わずか10ヶ月でイエローカードがでたことになります。野党の民主党が参院の第一党になった安倍内閣当時と比較すると、参院の第一党の立場までは失わなかったという点ではまだイエローカードだと思います。しかし、与党は過半数を割り、政権運営がさらに苦しくなりました。


考えれば不思議な選挙でした。マスコミの誘導もあったのかもしれないとしても、菅総理が唐突に消費税問題を語り始め、なぜか消費税問題に話題が集中してしまいました。
焦点が違うと感じる選挙でした。しかも、与党と野党第一党の自民党が同じことを言っているから、ほんとうになにで選べばいいのかがわからないと感じた人が多かったのではないでしょうか。

自民党によると、違いは自民党は社会保障費に使うことだということですが、いずれにしても社会保障費が増えていくわけで、どの政権になろうと、消費税で増えた歳入は、ほおっておいても社会保障費の支出増にまわります。本質的な問題ではありません。

今国民が望んでいるのは、明るい希望が見える思い切った政策だと思います。

経済が停滞し、先行きが見えず、閉塞感に満ちている限り、将来への不安は消えません。菅総理が、「強い経済」「強い財政」「強い福祉」とおっしゃっても、経済が停滞していれば、強い財政も、強い福祉も実現できません。
谷垣総裁が、いちばんを取り戻そうと言っても、時代は変化してきており、過去の延長線に、未来があるかのような主張ではないかと感じてしまいます。

国民が望んでいるのは、そんな状況をブレークスルーする新しい発想であり、思い切った政策、思い切った政策を実行する決断力です。強い経済、少ない財源でも、より豊かな行政サービスを受けることができる、さらに行政の効率性の飛躍的な向上でしょう。そうでなければ、リアリティが感じられません。

国民の常識感覚が見えたと思うのは、消費税増に反対して、議席を伸ばしたのは、唯一「みんなの党」でした。消費税反対と小さな政府を掲げたのは、「みんなの党」だけでした。消費税アップに反対していた、共産党も、社民党、国民新党も議席を減らしました。いずれも「大きな政府」を目指そうとしていたからでしょう。

自民党が議席を伸ばせたのは、主張に共感があったというよりは、民主党の敵失が大きかったのと、候補者が大きく若返り、これまでの古参議員が影響力を発揮する、負のイメージを払拭できたからではないでしょうか。
実際、当選した議員の平均年齢は、「自民党53.4歳、民主党53.5歳、みんなの党50.0歳、公明党45.7歳、共産党55.3歳、社民党54.0歳、新党改革52.0歳、たちあがれ日本は74.0歳だった」(MSN産経ニュース)といいます。
【参院選】地方政界、官僚出身が多数

焦点は、どうやって日本の活力を再構築するかです。非効率な行政を残し、効果がこれまででなかった財政を膨らませても、なんら解決にならないことを国民は見抜いています。
それよりは、しがらみのない若い世代に、思い切ったことをやって欲しいという気持ちのほうが大きいのではないでしょうか。

それで感じるのは行政から無駄を排除し、効率化し、財政を改善するために監視メカニズムとして、事業仕分けは続けるべきだと思いますが、そこからは、日本の成長エンジンは生まれてきません。

小泉元総理が「官から民」という流れをしめされましたが、確かに「官」よりは「民」のほうが相対的に活力があり、生産性は高いでしょうが、上場企業の平均営業利益率が、海外では二桁が当然という時代に、一桁でしかなく、「民」のほうも、生産性をもっと上げないと強い日本を再生できるとはいえません。

むしろ本当に必要なのは、日本の活力を削いている「規制の仕分け」ではないでしょうか。どのような法律や行政のありかたを変えれば、人びとや企業に活力が生まれてくるか、新しいビジネスが生まれ、また今のビジネスの変革を促せるかの「規制の仕分け」です。

そういった「規制の仕分け」の議論を、しっかりやらなかったから、小泉政権が着手した規制緩和が、派遣問題に矮小化されてしまい、以降の政権で、停滞してしまったように感じられます。

さまざまな法律や行政のありかたで、手枷足枷になっていることを精査し、規制緩和で「成長エンジン」となるものがあれば、大胆に規制を撤廃することです。

規制緩和というと、すぐに派遣問題に短絡してしまいがちですが、いかに日本の人件費を安くしても、途上国には勝てません。それは仕分けで議論すれば、もっと重要なことがあることはわかるはずです。

どうすればより高い利益のでるビジネスが生まれてくるか、あるいは現在の産業界がより高い利益のでるビジネスへの転換を促せるかです。また、人びとをより活かせる人材の流動化の政策も効果が高いと思います。あの強いサムスンが生まれた背景には、日本の人材を取り込み、生かしたということも大きいのです。

行政では、中央集権から地域主権への転換がその鍵になりますが、全国一律でやろうとすれば、調整の努力が大きすぎ、成果が見えてくるまでに時間がかかり、中途半端になりかねません。選択と集中で、実験地域をつくるというのが早道だと感じます。

効率的な政府や行政づくりであれば、行政に徹底的に情報通信革命を取り入れることでしょう。それで生まれた余剰人員は、介護など、社会ニーズの高いところで活躍してもらえば、一石二鳥です。

これらのことはすでに、さまざまなところで議論されつくしていることだと思います。やるかやらないか、それを実行するリーダーシップが発揮できるかどうかでしょう。
 
株式会社コア・コンセプト研究所
大西宏

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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