ここにきて注目度が増してきた菅・白川会談! ―前田拓生

2010年08月21日 16:35

現在、為替レートは85円/ドル台の水準で高止まりしています。この水準に至るスピードが速すぎたため、輸出企業を中心に対応が難しくなっているようです。それを反映して、株式相場も低迷したままの状態が続いています。

そもそも先週の日銀の金融政策会合における「何もなし」の発表が原因であり、その後の政府、特に菅首相の対応の不味さが、このような円高を招いたと思われます(*)

前田拓生のTwitterブログ

*これについては、先週、投稿したコラムを参照!

その後、円は高いものの大きな変動がなく高値水準に留まっているのは、来週(23日)の菅・白川会談を市場が注目しているからであり、決して、円のボラティリティが低くなったわけではありません。つまり、この会談の内容如何によっては、大きく「円安」にも「円高」にも振れる可能性があるということです。

とはいえ市場としても、この会談で「大きな何かが出る」とは考えていないので、予想通り「大したことがない」という場合には、急速な円高になると思われます。しかも、会談が終わってしまった後の円高に対しては、日本政府による単独円売り介入も効果がないでしょう。

ここで「単独円売り介入」ですが・・・

そもそもこの政策には意味がありません。為替レートは市場が決めるものであり、日本政府が介入をしたからと言って、市場が、そこに何らかの“権威”を感じて、その意向に従うようなものではないからです。つまり、介入と言っても、政府が一投資家として市場に参加するだけのことですから、経済ファンダメンタルズから「円高が正しい」と市場が判断すれば、政府の意向は無視されます。

したがって、「円高だから為替介入」という単純な話ではなく、如何にタイミング良く手掛けるかがポイントなわけで、それは一種の“相場観”に係ってくるのです。「政府が相場観」というのもおかしなものですが、要はタイミングを見計らって、うまく立ち回ることにより、政府が伝えたいことを市場に示すことも、政府の大きな仕事であり、大切なことなのです。その道具の一つが「為替介入」なのですから、うまく使いこなせれば、効果はあると言えます。

とはいえ、欧米は「介入」という手段で自国通貨安に導いたのではなく、あくまでも金融政策の違いが市場によって受け止められ、それによって今の「円高」があるわけですから、日本だけが自国の都合による「為替介入」、特に自国通貨安に導くような介入を行えば、他国からの批判は免れないでしょうね。

しかも、日本政府だけで介入を行ったとしても、今、市場では「日銀の金融政策が上手くない」とみているわけであり、この部分が変わらないのであれば、介入をしてもまた円高に戻ることになるでしょう。

その辺りの「本気度」が問われているので、来週の菅・白川会談は重要ですし、白川総裁が「どこまで譲歩できるか」がポイントになってきます。

ところがここで日銀としては、量的緩和を打ち出しても、経済効果はあまりない上に、経済に対する悪影響も考えられるため、本当の意味での「量的緩和」を行うつもりはサラサラないでしょうね。そのつもりが少しでもあれば、先週、何らかの対策を打ち出していたはずです。ここが日銀の“真面目”なところであり、逆に言えば、「市場を知らない」ということなのでしょう。原理的に行って「意味がない」のに「やっても仕方ないでしょう」と考えていると思われます。

しかし、もうそのようなことを言っている状態ではありません。この会合前後に何らかの追加的緩和政策、というよりも、少なくとも定義を広くした場合に「量的緩和と考えても差し支えない」というくらいの政策を打ち出さない限り、失望感からの円買いが増加することになるでしょう。

これだけ高いハードルになってしまったのは、先週に「何もなし」という決定を打ち出してしまった日銀の責任であり、ある程度、致し方ない。いずれにしても、意味が「ある」/「ない」に関係なく、(この際、マネーストックに波及しないハイパワードマネー・ベースでも良く、時限でも結構だけれども)円通貨の量が増加し、世界的にみて「円通貨が減価する」と市場が感じるような「何か」を打ち出さないと、市場は為替相場、および、株式相場をおもちゃにする可能性が高いと思われます。

なお、菅・白川会談で政策が出たにもかかわらず、それでも「円高が続く」という場合、それは当該政策が「甘い」と市場が感じたわけなので、そこで政府は実弾による為替介入をしても、上述の通り、それは一切効かないでしょう。根本の問題が「欧米と日本の金融政策のスタンスの違い」と市場はみているわけですから、その政策が「まだ甘い」と判断させれば、政府がいくら介入をしても無駄になります。

今、市場は政府・日銀の「本気度」を見極めようとしているのですから、かなり大胆な政策を打ち出さない限り、この円高を乗り切ることはできないでしょうね。

逆に・・・

市場が本気度を認めれば、すんなりと90円/ドルくらいまでは戻すでしょうから、チャンスはチャンスとみることも可能です。

何事も同じですが、タイミング良く政策を打ち出すことこそが「市場との対話」であり、それをうまくやるのも政治の仕事です。マスコミとの対話や支持率ばかりを考えるのではなく、市場をみて、政権運営をして欲しいものです。

なお、オバマ政権としては輸出振興策を打ち出していますし、米国、および、日本の対外資産負債状況より中長期的にみた場合、円は対ドルでは強い状態が続くと思われます(資源国や途上国通貨に対しては安くなる可能性はあると思います)。なので、ここで円高を食い止めても、今後も円高対策には苦しめられるでしょう。しかし、レベルとしての為替レートは「安定」が重要であり、急激な変動に対しては、今後もイチイチ対応をしていかざるを得ないと考えています。

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