ノーベル賞の季節にあらためて思ったけど学問って本当に世界を変える

2010年10月07日 01:02

米パデュー大の根岸英一教授、北海道大学の鈴木章教授が、リチャード・ヘック教授と共に今年のノーベル化学賞を受賞した。筆者は人が人を評価するこのような賞よりも、人の集合である市場が経済的な利益というかたちで与える客観的な評価の方を尊重したいと思っている。やはり人が人を評価することは大変難しいことであるし、常に政治的な思惑が入り込む。その点、金という単一の尺度で評価する市場というのはある意味とてもよくできたものだと思う。とはいえ、やはりノーベル賞である。その歴史と権威は別格であり、なかでも物理学賞、化学賞、生理学・医学賞は科学分野における最大の栄誉であると考えられている。筆者も同じ日本人が今年はふたりも受賞できて大変よろこんでいる。今回は液晶パネルや医薬品の材料となる有機化合物の画期的な合成方法の開発に対して賞が与えられた。


改めてノーベル賞の過去の受賞者やその受賞分野を見てみると、学問というのは良くも悪くも本当に人間社会を大きく変えるのだということがわかる。物理学でいえば、今日我々が使っている全てのインフォメーション・テクノロジーは量子力学に基づいた電子工学に支えられている。しかし量子力学から生まれた核物理学は原子爆弾も生み出し、それが広島と長崎に落とされ、おびただしい数の人が殺されてしまった。原子爆弾の開発には多くのノーベル物理学賞の受賞者が関わった。また核物理学は原子力発電も可能にし、温暖化ガスを出さないエネルギーとして人類に多大な貢献もしている。

液晶パネルやリチウム・イオン電池やタッチパネルなど、化学の力なくしてはどれも作れない。ノーベル化学賞の多くがこういった身近なハイテク製品に関わっている。生理学、医学によるワクチンや抗生物質の開発は、ウィルスや病原菌との戦いだった人類の歴史に革命的な変化をもたらした。遺伝子の研究は人間とは何なのかという問いに少しずつ答えようとしている。

過去100年ぐらいの間に起こった科学技術の爆発的な発展に、筆者は畏怖の念を感じざるをえない。そしてそれは今でもものすごいスピードで日々進歩しているのだ。科学技術は我々にいったいどんな未来を見せてくれるのだろうか。

経済学も社会に大きな影響を与えた。ノーベル経済学賞を受賞した分野はどれも市場経済の研究に関わるものだが、現在の先進国の統治システムというのは多かれ少なかれこういった市場経済の理論に基づいている。幸か不幸か、その対極の共産思想に基づく計画経済も多くの国で実施された。それはどれも権力が集中した政府の暴走を招き悲惨な結末を向かえてしまった。ロシアのスターリンやカンボジアのポル・ポト、中国の毛沢東など、共産国家の指導者は何百万人、何千万人という自国民を処刑した。物資が常に不足する計画経済による食糧不足の餓死者も含めれば、共産国家が殺した人間は億単位になるといわれる。これは原子爆弾で死んだ人間の数よりゼロの数がみっつほど多い。ある意味、思想というのは極めて危険な代物なのかもしれない。

学問というと大学の退屈な授業を思い浮かべる人も多いかもしれないが、学問というのは実に強烈な変化を人間社会に引き起こしているのだ。むろん全ての分野を深く学ぶことは不可能なのだけれど、大学、あるいは大学院でひとつの分野を深く学び、その分野の人類の知識のフロンティアを見てくるということはとても大切なことなのかもしれない。もちろん本を買って独学するのもすばらしいことだ。

参考資料
ノーベル化学賞、根岸英一氏・鈴木章氏ら3人に、朝日
ノーベル賞、Wikipedia

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