NTTのオールIP化:2025年では遅すぎる

2010年11月03日 00:32

NTTはきのう、PSTN(加入電話網)からIP網への移行計画を発表した。それによると、2020年からPSTNの交換機を廃止し、2025年までにオールIP化を完了するとのことだ。私はアゴラの記事でも書いたように、NTTはFTTHよりもIP化を優先すべきだと考えるので、この計画には賛成だが、移行期間が15年というのは長すぎる。


その根拠が、交換機の「寿命」が2020年に来るためというのも不可解だ。90年代から配備されたATM交換機はほとんど償却が終わっており、物理的な寿命までもたせる必要はない。問題は交換機より余剰人員だと思われるが、これもあと5年ぐらいで半数以上が退職する。廃止するサービスも短縮ダイヤルやキャッチホンなどマイナーなものばかりで、生活に支障をきたすわけではない。放送を全面的に止めてしまう地デジの周知期間が10年なのに、PSTNに15年もかける必要はない。

時間がかかる本当の原因は、IP化と光化を同時に進め、最終的にNGNにしようとしているためと思われる。NTTは80年代にPSTN→ISDN→FTTHというロードマップを描いて設備投資計画を行なった結果、失敗を繰り返してきた。ISDNは1兆円以上の設備の浪費となり、B-ISDNのために配備された高価なATM交換機は、単なるIPルータとして使われている。そしてIP化とFTTHを「抱き合わせ」にしたNGNはユーザーに拒否され、計画の縮小を余儀なくされた。今度はそれを15年かけて全国に配備しようというわけだ。

NGNは欧州でも進んでいるが、多くはPSTNをDSLで置き換えてコストダウンするもので、NTTのようにFTTHと一緒に進めているコモンキャリアはない。ほとんど唯一FTTHを進めていた主要キャリアであるベライゾンは先月、光ファイバーの設備投資を停止すると発表した。DSLやケーブルや高速無線で数十Mbpsのサービスが可能になった今、FTTHでないとできないサービスがないからだ。

こういう中で、何に使うのかわからない「光の道」を整備させる総務省の計画はナンセンスであり、それに迎合して過剰な設備投資を行なうNTTの計画も、ユーザーや株主を無視したものだ。すでにIPルータは全電話局にあるので、IP化に必要な作業は交換機を撤去する局内工事だけである。PSTNのサービスを代替するソフトウェア開発の期間を考えても、5年あれば十分だ。アクセス系のFTTH化は、そのあと需要に応じてやればよい。

64kbpsのPSTNを50MbpsのADSLで代替するだけで通信速度は800倍になり、VDSLなら2000倍以上になる。これならHDTVも十分な画質でオンデマンド配信でき、これ以上の広帯域は当面必要ない。FTTHよりもブロードバンド無線の帯域確保のほうがはるかに重要である。NTTは「技術至上主義」を改め、効率的かつ迅速な設備投資を行なってほしいものだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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