NTTのオールIP化:2025年では遅すぎる

池田 信夫

NTTはきのう、PSTN(加入電話網)からIP網への移行計画を発表した。それによると、2020年からPSTNの交換機を廃止し、2025年までにオールIP化を完了するとのことだ。私はアゴラの記事でも書いたように、NTTはFTTHよりもIP化を優先すべきだと考えるので、この計画には賛成だが、移行期間が15年というのは長すぎる。


その根拠が、交換機の「寿命」が2020年に来るためというのも不可解だ。90年代から配備されたATM交換機はほとんど償却が終わっており、物理的な寿命までもたせる必要はない。問題は交換機より余剰人員だと思われるが、これもあと5年ぐらいで半数以上が退職する。廃止するサービスも短縮ダイヤルやキャッチホンなどマイナーなものばかりで、生活に支障をきたすわけではない。放送を全面的に止めてしまう地デジの周知期間が10年なのに、PSTNに15年もかける必要はない。

時間がかかる本当の原因は、IP化と光化を同時に進め、最終的にNGNにしようとしているためと思われる。NTTは80年代にPSTN→ISDN→FTTHというロードマップを描いて設備投資計画を行なった結果、失敗を繰り返してきた。ISDNは1兆円以上の設備の浪費となり、B-ISDNのために配備された高価なATM交換機は、単なるIPルータとして使われている。そしてIP化とFTTHを「抱き合わせ」にしたNGNはユーザーに拒否され、計画の縮小を余儀なくされた。今度はそれを15年かけて全国に配備しようというわけだ。

NGNは欧州でも進んでいるが、多くはPSTNをDSLで置き換えてコストダウンするもので、NTTのようにFTTHと一緒に進めているコモンキャリアはない。ほとんど唯一FTTHを進めていた主要キャリアであるベライゾンは先月、光ファイバーの設備投資を停止すると発表した。DSLやケーブルや高速無線で数十Mbpsのサービスが可能になった今、FTTHでないとできないサービスがないからだ。

こういう中で、何に使うのかわからない「光の道」を整備させる総務省の計画はナンセンスであり、それに迎合して過剰な設備投資を行なうNTTの計画も、ユーザーや株主を無視したものだ。すでにIPルータは全電話局にあるので、IP化に必要な作業は交換機を撤去する局内工事だけである。PSTNのサービスを代替するソフトウェア開発の期間を考えても、5年あれば十分だ。アクセス系のFTTH化は、そのあと需要に応じてやればよい。

64kbpsのPSTNを50MbpsのADSLで代替するだけで通信速度は800倍になり、VDSLなら2000倍以上になる。これならHDTVも十分な画質でオンデマンド配信でき、これ以上の広帯域は当面必要ない。FTTHよりもブロードバンド無線の帯域確保のほうがはるかに重要である。NTTは「技術至上主義」を改め、効率的かつ迅速な設備投資を行なってほしいものだ。

コメント

  1. worldcomw より:

    もう少し危機感のある計画が出てくると思っていましたが・・・
    これだと、「10年間何もしない(惰性に任せる)」と言っているに等しいでしょう。
    NTT案の過剰品質・過保護による高コストと、SB案のムダなFTTH網を較べると、
    結構いい勝負なんじゃないでしょうか。

    相当のリスクがあっても、SBにやらせる方がマシのような気がしてきました(笑

  2. cocktailnoshin より:

    競争環境が無いということが理由の気がします。
    悠長に構え金のかかることはゆっくりとしかやらない。
    ここらでひとつ分割してはどうか。

    上下分離という話もありますが、個人的にはそうは思いません。
    国鉄だって地域に分割ししたら色々な面が改善されました。
    やはり人間(というか経営者)、比べられるというのは嫌なことです。
    ちなみにNTT東西は同じ親会社の子会社ですから分割とは言い難いですね。

  3. 池田信夫 より:

    全面IP化はBTなどでも難航しており、PSTNのサービスをすべてソフトウェアで代替することはむずかしい。それならユーザーに「このサービスは打ち切る代わりに基本料金は安くします」などと説明すればいい。それをしないのは、今の独占と余剰人員をあと10年、温存しようということでしょう。

    まじめな話、孫さんが「政府の持株を全部買ってやる!」とTOBをかけるのが一番いいと思いますよ。

  4. スリーピング より:

    All光(局→家庭のアクセスラインを光に張り替える)ではなく、現在のDSL系(既存のメタルアクセスラインを活かす)を主軸にブロードバンド環境を整備して、PSTNをVoIPで巻き取り、の方が効率的とおっしゃっているように見受けました。
    日本全国でDSLでカバーできる人口率は高いと思うのですが、エリア的にカバー率は低いような気がしました。
    都会はDSL、田舎は光としか思いつかず・・・。

    「今の独占と余剰人員をあと10年、温存しようということでしょう。」
    などに同感をしておりますし、異議申し立てや議論を吹っかけているつもりはありません。
    技術的知識が足りないばかりに違和感を感じたので、一言頂けるとハラに落ちるかなぁ、と思いコメント投稿させていただきました。
    よろしくお願いいたします。