民主党デフレ脱却議連の日銀法改正案について-金子洋一

2010年11月08日 11:50

民主党参議院議員(神奈川県選出)

まず、このような機会をくださった言論プラットフォーム「アゴラ」事務局の方々、また、株式会社アゴラブックスの代表、池田信夫氏に感謝申し上げます。ご自身とことなる意見を持つ人間に主張を述べるチャンスを与えてくださることほどその方が真摯に議論を展開しようとしていること、また、フェアであることを雄弁にものがたる行為はありません。

さて、私は民主党の「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(略称デフレ脱却議連)の事務局長をつとめています。


この「デフレ脱却議連」は衆参あわせて約140名の国会議員からなっており、規模としては、往年の社会党より若干小さく、現在の党内のグループと比較するならば小沢一郎氏のグループに匹敵するサイズです。もちろん特定のグループとは完全に無関係に、党内の政局とは関わらずに活動をしております。一例を挙げるならば、9月の民主党代表選では菅直人、小沢一郎両氏に対して政策提言を行いました。

現在、われわれデフレ脱却議連は、現在のデフレを脱却する手段として金融政策をもっとも重要な政策手段であると考えています。

今年の参議院選挙でも、脱官僚依存、脱霞が関を訴えて戦ったわけですが、なにも官僚は霞が関だけに存在するわけではありません。日本銀行の官僚ももちろん日銀法という根拠法に基づく強固な官僚組織です。彼らは、霞が関と比較してもそれ以上に大きな権力と自由を享受しています。人事院などのコントロールを受けておらず、実質的な天下りを各種金融機関に対して行っています。また、霞が関では審議会、私的諮問委員会などの透明化などを通じて、官僚システムのガバナンスの向上が図られていますが、日本銀行の場合にはそれも不十分だという声が大変に強く上がっております。

中央銀行の独立性の確保は重要ですが、5月に行われた日銀主催のコンファレンスでFRBバーナンキ議長による発言があったように、それは手段の独立性にとどめられるべきであって、目的設定の独立性は認められません。加えて、高給+終身雇用+天下りという海外に例をみない中央銀行に無制限な独立性を与えることは到底受け入れることができません。

日銀の現状を踏まえ、円高デフレ状況を改善するために、われわれは以下の政策提言 「デフレ脱却・経済成長プログラム」を7月30日に行い、野田佳彦財務大臣、後日、菅直人総理に手交しました。

1.政府内に経済政策の司令塔を設置
・経済成長と景気対策を担当する省庁がなく、各省庁の縦割りになっていることへの対応が急務。

・政府は毎年、年末の予算編成にあわせて次年度の物価上昇目標(消費者物価指数プラス2%からプラス3%の間)を決定・公表

2.金融政策:インフレターゲット政策の実施
・長期国債の買い切りオペを中心におこなう必要がある。場合によっては、株式、REIT(不動産投資信託証券)、中小企業を含む低格付けのCP・社債をも対象とすべきである。また、市中の金融機関の企業向けローン債権購入も検討すべきである。

3.日銀法改正など日銀のガバナンス向上の方策を実施
・改正日銀法が施行された1998年以降のデフレ・円高不況の原因は日銀による金融失政であるため、日銀法の改正にすみやかに着手する。

4.10年間で7割強の経済成長実現:経済成長の数値目標
・われわれのプログラムは、当面の不況から脱却するために経済を活性化することにより今後の成長戦略の成果を一層確実にするものである。

 ⇒10年後の平成32(2020)年度終了時には名目で約70%強、実質で約1/3強わが国経済が成長。

5.経済が中長期的に潜在成長率に復帰した後に、強力に財政再建をおこなう。
「FRBのリーマンショックへの対応」への評価としては
・未曾有の金融危機である2008年9月のリーマンショックに対応するために、大恐慌時代以来封印されてきた連邦準備法第13条3項に基づき、本来FRBの管轄下にない証券会社への貸し出しをはじめとする非伝統的な金融政策を大胆に実施した。 

・これらの非伝統的な金融政策の発動は、納税者負担を発生させる可能性があるため当初、議会からの強硬な反対を招いたが、急激な米国経済の落ち込みを防ぐことができた。

以上のような問題意識を踏まえ、日銀法改正をできるだけ速やかに可決成立させていきます。この日本銀行法改正については、既に民主党内の正式な審査手続きに入っており、今後、党内の政策調査会財金部門会議で検討していきます。
われわれの提案する日銀法改正案は、以下の内容です。

1.FRB(連邦準備制度理事会)を見習い、日銀による金融政策の目的に「雇用の最大化」を盛り込む

2.物価安定目標(インフレターゲット)政策を導入する

3.総裁、副総裁、政策審議委員等の選定のあり方を再検討(透明化など)する

物価安定目標(インフレターゲット)政策については、日銀法を改正しなくても実施することは可能ですが、日本銀行の現状を踏まえ、日銀官僚に明確にマンデートを与え、確実に実施するためには日銀法に明記することが望ましいだろうと判断しました。

前回の参議院選挙での「民主党2010マニフェスト」においても、その骨格を形作った成長・地域戦略研究会(大畠章宏会長)の報告書に、インフレターゲットの導入が盛り込まれていましたし、また、自民党、公明党、みんなの党の3党もそれぞれ参院選マニフェストでほぼ同様の政策の導入を唱えておりました。菅直人総理もデフレからの脱却を重要な政策目的に掲げております。政局に関わりなくこの日銀法改正を実現して、一刻も早い円高・デフレからの脱却を実現します。

今後のデフレ脱却議連の活動や提言については、金子洋一のブログで逐次公表してまいります。また、ツイッターにおいても、日銀法改正をはじめとする経済政策に関する発信をしておりますのでご関心があればご覧ください。

最後になりましたが、言論プラットフォーム「アゴラ」のますますのご発展、心から祈念しております。
(金子洋一)

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