TPPと農業活性化について- 佐久間裕幸

2010年11月11日 22:30

おそらくこの提言は、極めて多くの反対を受け、まったく議論の俎上にすら乗らないものと考える。それは、次の2点をセットで行うことを提案するからである。
 (1) TPPに加盟し、その結果として農産物の輸出入自由化を図る。
 (2) 株式会社が農地を保有、賃借して、農業を行うことを認める。
 これらは、一般的な農業関係者からは反対される意見であり、これをセットにすれば、反論は余計に強まるであろう。しかし、日本の将来を考えるならば、提言しないわけにはいかないと思い、主張するものである。


1.TPP加盟への対応
貿易自由化を目指すTPPに参加して、関税を例外なく撤廃すれば、日本の農産物は、アジア地域の農産物市場に参入することになり、他国の農産物との競争にさらされることになる。しかし、私にはこれは避けようのない現実であり、TPPに参加しない途を探るよりは、TPPに加盟した結果、起こるであるわが国農業への対応策を考える方が合理的であると考える。TPP加盟に関する反対論として、農業が壊滅し、食料自給率が下がるという意見が主要なものである。それに対する対応策があれば、すなわち農業が壊滅せず、その結果、食料自給率が下がらなければ、TPPに参加しても良いという結論になるとはずである。そのための提案が、株式会社の農業参入ということになる。

株式会社が農業に参入して、大規模な農地を確保し、また、大規模農地に適した設備を投下し、また、高齢化が見られる農家に代わって若い従業員を雇用して、農業を行えば、面積当たりの収穫量の増大、収益の増大、生産物価格の下落を期待することができよう。高齢化した既存の農家には貿易自由化が耐えられない以上、別の担い手を導入するしかないという発想である。

2.農業参入への規制緩和
平成21年の農地法の改正により、一応は、株式会社が農地の賃借を行うことができるようになっている。農地等が適正に利用されていないと認められる場合の契約解除要件、他の農業者との適切な役割分担及び継続的かつ安定的な農業経営の見込み要件、常時従事する役員要件を満たせばよいことになっている。しかしながら、これですら、近隣の農家が反対すれば、要件を満たさないということで、農業委員会が決定を下さない可能性がある。

農業は特別であるという条件で考えるから、複雑になるのである。一般の商工業と比較すれば、上記の特殊性が浮かび上がる。商店街に全国チェーンの飲食店が出店するために店舗を賃借するにあたり、近隣との役割分担や安定的な経営の要件を審査して、商工会が出店を許可するといった話がありえるだろうか。もちろん、農地を農地として活用しないことがないように規制を掛けるのだという意見もあろう。しかし、対応策は参入規制だけではない。農地で農業をしていない場合、その土地の固定資産税を宅地並み課税として、かつ、罰則として3倍の税額で農地に戻るまで課税するといった租税による規制も可能なのである。賃貸した農家は、高額の固定資産税が課されてはかなわないので、契約解除要件で農地を取り戻すに違いない。許可といった審査プロセスがあるということ自体、参入させないという意思を裏付けるものなのである。

また、農業生産法人には、従来から農地の賃貸だけでなく取得も認められていたのだから、農業をしたい者は、農業生産法人を設立すればよいという反論もあろうが、農業者や農業関係者の議決権が3/4といった要件なども制約条件が折り込まれているように思える。

3.未来の農業のために
日本の農業は、1区画当たりの面積も狭く、海外と太刀打ちなどできないといった議論があるが、本当に太刀打ちできないなら、農地取得を緩和しても株式会社は参入してこないはずである。規制があるということは参入の余地、すなわち未来が描けることを意味する。なぜ、規制したいのか。ここに何らかの既得権益があるからであって、ここに切り込まない限り、TPP加盟はないため、日本の製造業の未来はない。しかし、それだけでなく、農家の高齢化により、農業の未来もないのだと信じている。農業の担い手を増やす施策が必要なのである。
(佐久間裕幸 公認会計士・税理士 佐久間税務会計事務所 Twitter:@hiro_skm)

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